第151話私の為にみんな死んで頂戴

 何だかんだ言ってサラももういい大人なので子供の様に頭を撫でられるのが嫌なのだと思い聞いてみるのだがそうでもないらしい。


 しかしそうでないのなら何故怒るのか理解に苦しむのだが、本気で怒ってないようなので良しとする。


「まあ良く分からないのだが嫌がってないのなら問題ないか」


 小さな声で「も、問題ないわけないじゃない。もっと撫でて欲しくて抑えられなくなりそうなんだから……」と聞こえたので今度撫でくり回そうと決心する。


「お俺は何時でも撫でて良いからな!」

「で、でも彼女は私ですから優先順位は私の方が上ですからねっ!」

「友達からのお付き合いだろっ!まだ1日しかし経ってないのに彼女になれるわけ無いだろうっ!よって今は奴隷の俺の方が上だっ!」

「付き合ってるのは事実ですから?そのうち結婚とかしちゃうかも?」


 そしてサラとのやり取りを聞いていたのかアルが会話に入って来るのだがさっきまであんなに仲が良かったはずの二人が口喧嘩しだすので頭が痛くなってきそうである。


 しかし、異世界だからこそ口喧嘩で済んでいると思うと全然苦じゃ無くなるので不思議である。


◇◆◆◇




「ここが一週間前アル・ヴァレンタインの消息が絶った学園都市……」


 そう言うと声の主の女性は身震いをする。


 その姿を見て辺りにいた人々は化け物でも出会った様な顔をすると一斉に蜘蛛の子を散らす様に、しかし音も立てず散らばり、商店は軒並み閉まって行くのだがその事に女性は気付かない。


 何故ならその女性は何故か革でできた目隠しで目元を覆っている為辺りの変化に気付かないでいるようだ。


 しかし目元を隠していても分かる美貌、そして艶があるウェーブがかった黒く長い髪に、高級そうな黒のドレスを纏い優雅に歩く姿をは、彼女の正体を知らない者は魅入ってしまいそうな程美しく、まるで一枚の絵画のようである。


「あれ……さっきまで人の気配で満ちてったのに……いつの間にか人の気配を感じなくなったわ……どうしましょう……これじゃ情報を得れないわ」


 そう言うと女性は可愛く小首を傾げるのだがその表情からは困っているようには見えない。


 すると女性はおもむろに手を伸ばすと道端で飛び跳ねる小鳥に向けてスキル【知識の対価】を発動する。


 すると女性と小鳥は一瞬震えたかと思うと小鳥は魂を抜かれたかのように生き絶える。


「ごめんなさい……貴方には耐えられないスキルだと分かっていたの。でも、私も生きたいのよ……だから、私の為にみんな死んで頂戴」


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