第119話自殺行為

 アーシェに筋肉ダルマと言われ指名された側近、ノーゲスは髪のない頭皮に巨漢を筋肉の鎧で覆っているその姿は確かに筋肉ダルマである。


そのノーゲスはアンナにアイコンタクトで「本当に宜しいのですか」と確認を取った上で、自身の持つ最大威力のスキル【サンダー・スプラッシュ】をアーシェに放つ。


 このスキルは剣若しくはレイピアのスキルでその剣体に電気を帯びさせ、まるで雷のような轟音とスピードで目標物を突く三連撃の技である。


 しかし、その三連撃はアーシェに当たることはなく、代わりにノーゲスの背中に衝撃が走り肺の中の空気が漏れる。


「スキルは威力は高く追加効果は便利だけど、モーションは誰がやっても同じなの。だからこの様に簡単にあしらうことができてしまうの。はっきり言って武術を極めた人にスキルを放つのは自殺行為よ」


 そう言うとアーシェはこの話は終わりとばかりに手を一度叩くと話題を変え、今度はアンナと雑談に花を咲かせ始めるのであった。


◇◆◆◇


「という訳でスキルを使うなとは言わないが対人戦では極力使わない方が良いだろう」


 そう言いながらクロはエリシアが放ったハルバートによると突き技のスキル【刺突】を、相手の動きを利用して一本背負の要領で投げ飛ばすと、すかさず【ヒール】をかけてやる。


「あ、ありがとございます」

「良いよ。軽度のダメージでもダメージはダメージだ。講師が気にするなと言ってるんだから黙って回復魔術を受けろ。それにこれならいくらでも特訓出来るだろ?」


 そう言うとクロはエリシアの頭を撫でてやる。


これでレニア、ユーコ、エリシアと手合わせをしたのだが三人と手合わせして一つ腑に落ちない事があった。


「これで一応個々の能力は把握したのだけど、周りで練習している他の生徒よりもお前達の方が強く見受けられるのだが……お前達は本当に去年の大会で最下位なのか?むしろお前達なら上位を狙うこともできたと思えるんだが?」


 彼女達に講師が半年間つかなかった主な原因は去年の大会でダントツの最下位を叩き出したからと聞いていたクロは彼女達がとんでもなく弱いのだろうと踏んでいたのだが、致命的に弱い事もなく、寧ろ周りで練習している他の生徒達よりも頭一つ強く感じられるだけに余計不思議に思えてくる。


 レニアは自分の背丈よりも長いランスを獣人特有の筋力で軽々と持ち上げ、その身体をいかした突進力を利用しての突き技はそこらへんの魔獣なら一撃で屠れるだけの威力は有るだろう。

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