第107話私の背中に乗って行きませんか

 というのも周りにいる生徒達が来ている制服が、日本でも探せばありそうな制服であるため、異世界の学校という物珍しさよりも懐かしさが先立ってしまう。


「お師匠様ぁぁぁぁぁぁっ!」


 懐かしいのはいいが、登録場所が分からないのでとりあえず校舎を目指し歩いていると物凄い速さでこちらに向かってくるレニアが見えた。


 競馬で荒稼ぎできそうな足である。


「と、遠くの方でお師匠様が見えたので走って来ました!」


 と、嬉しそうに話すレニアは可愛いのだが、もう少し静かに近づく事は出来なかったのか?おかげで周りの視線を独り占めである。


 まあ、その視線の大半がレニアを見下す視線なのだが、当の本人は気付いていないのか気にならないのか「お師匠様お師匠様」と嬉しそうに話を振ってきてくれるのでこちらも意識しないようにレニアと接することにする。


「なあレニア」

「何ですか?お師匠様」


 そう言いこてんと首を傾げるレニアが可愛く見えるのはその表情故か、レニアのケンタウルス補正だからなのか……。


「いやな、ギルドで外部講師登録を済ませて来たから学園でも登録しようと思ってここに来たまではいいのだが、どこで手続きすれば良いのか分からなくてな、知ってたら教えてくれないか?」

「はいっお安い御用です!理事長室で登録出来るので案内をしますね!」


 そう言って案内を買って出るレニアからは、当初感じられたもの静けさは感じられず年相応に明るく立ち振舞っているのだが、これがレニア本来の姿なのだろう。


 その姿が見れただけでも外部講師になって良かったと少なからず思えてくる。


「それでですね、もしお師匠様さえよろしければわ…わ…私の背中に乗って行きませんかっ!」


 その後もレニアと他愛もない事を話ながら(主にレニアが一方的に話す形なのだが)少し歩くと、レニアが俺の事を気遣ってか、俺を背中に乗せて行こうと言ってくる。


「いや、大丈夫だ。気持ちだけ受け取っておく」


 確かにこの世界の現地人と比べて俺の見た目は非力に見えるかもしれないが、というより確かに体力は乏しいのだが流石に生徒に背負わせふんぞり返ってる講師というのもどうかと思うので断ると少し残念そうな顔をするレニアに気付き、頭をポンポンと軽く叩き撫でるとレニアは嬉しそうに目を細めた。


 そんなレニアを見て憧れの先輩上司の部下として配属された時を思い出す。多分あの時の俺もこんな感じに見えただろう。


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