第93話可愛いなちくしょう

ただでさえ静かな場所なのだからこのやり取りがカウンターの女性に聞こえている可能性も高いだろう。せっかく入れたのだが彼女の外部講師にならないのなら出るべきだ。


少しして後を追いかけてくる彼女が見えたのだが、無視して先を急ぐ。


冷たい態度をとっていれば彼女もいずれ諦めるだろう。


とりあえず彼女の事よりも今は自分の事である。


この街のギルドに一度行ってみて学園関係者になれる仕事などが斡旋されてないか確認するべきだ。


そう考え、マップを開きギルドに向かう事にする。



◇◆◆◇



この街のギルドはノクタスのギルドよりも大きく、木造中心のノクタスと違い石造で出来ており、また七階建てとこの世界には珍しく高さもあり、老舗の銀行だと言われたほうがしっくりくる外形である。


銀行はともかく古き建築物なのだろう建物の入り口は日本の硝子と遜色ないほどの純度と硬度であろう硝子で出来ており、さすがに自動ではないものの硝子の扉を開き中に入るという何気ない動作で日本での生活を少し思い出す。


「いらっしゃいませ。本日のご利用は何でしょうか?」

「学園関係者関連の物が有れば回してほしいのだが?」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 若干の懐かしさを感じつつも受付カウンターにて学園関係者関連の仕事がないか聞いてみると受付嬢がパソコンみたいな道具でカタカタと何か調べ始めたので、その間ギルド内部をそれとなく観察してみると、やはりノクタスのギルド同様に冒険者だろう逞しい身体をした人々が多いのだが、それに混じって今の俺みたいに一見弱そうな身体の人も若干ではあるが見受けられる。


多分勉学の方で学園関係者になりにきた、または既になっている人達であろう。


そんな中ギルド内にカッポカッポとやたら響く足音が聞こえてげんなりする。


「お待たせしました。そうですね、今残っている者は…………貴方の後ろにいますホウスレニアさんのグループのみになります」

「…………っ」


 ギルド受付嬢に言われるまでもなくあの独特な足音で気付いていたのだが、あのケンタウルス娘がホウスレニアという名前だとは限らないので後ろを振り返ってみると、件のケンタウルス娘が「着いてきちゃった」とでも言ってそうな表情で上目遣いをし、手をもじもじさせていた。


 可愛いなちくしょう。


「辞めときなそこの兄さん」

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