第56話そんなこと言っちゃう?
そしてクロは単騎でこの世界の魔王がいるであろう城へと向かう。
その城は大きいことは大きいのだが魔王が住む城としては少し小さく感じられる。
その城は二メートル程の城壁に囲われており、飛び越えて行けない事はないのだが飛び越えて行く必要もないので城壁の入口まで行くとそこから入ることにする。
そしてそのまま城門まで行くと、城門はクロが近づくと低く鈍い音と共に開き始めた。
マップで既にわかっている事なのだが城壁そして城の中にも、魔王としての自信の現れなのか魔族軍が一人もおらず、城の広さも相まって不気味に思える。
「さてと、行きますか」
そしてクロは魔王の城へと足を踏み入れた。
城の中は思った以上に広く感じられ、部屋数はどうやら数部屋のようだ。階数は一階いかなく、床から天井まで吹き抜けになっており、天井付近の壁には見事なステンドガラスの装飾が色鮮やかな光を放っていた。
さらに、地上付近の壁には様々な装飾が施され、美しさ中にもその全てがこの城の所有者の力を示し、金持ちと王との差を見せられているかのようでもある。
その光景にクロは思わずため息が漏れる。
城内部の美しさを目で楽しみながらクロは靴を鳴らしながら進む。
「どう? 綺麗でしょ?」
そして歩く事約10分。クロは始めて城の中で話しかけられた。
その相手はもちろん魔王であり、最初に見た豪華な椅子に座っている。そのとなりにはやはり護衛が一人。
城の最深部まで歩いて10分という距離の広さに魔王とその護衛の計二人。マップで見ただけではその理由まではわからなかったのだが今なら理解できる。
この城の広さはノクタスに攻め込んだであろう魔族軍全員が入れる広さなのである。
また、まだ真新しい土も床のあちこちに見えることからして、さっきまでここに大人数がいたことがわかる。
「そうだな。 見事だ」
「でしょ? この城を作るのに100年はかかったんだから」
「そうか。 しかし、少し懲りすぎにも見えるがな。 民の血税で作られたのだとしたらここの民からすれば100年も地獄が続いたわけか」
「あー! そんなこと言っちゃう?」
「よそ者のお前に何が分かる!」
そんな二人の会話をぶった切るように魔王の隣でたっていた褐色の肌をした護衛がクロに恫喝する。
「この城は魔王様自らのお金で建てられ、その間我々は、人間と休戦協定を結び戦が無いこの時代に仕事として多くの若者が城作りに参加することができた! 税金なども全て街と貧しい者の為に使われ、魔王様は自分のために使ったことなど一度もない!」
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