第40話どうせ甘えるならこんな場所じゃなくて

 メアやミイアの会話から不安は見受けられず代わりにノクタスの街の冒険者達を信頼している事がわかる。


 メアやミイア達が大丈夫だと言っているのだから大丈夫なんだろう。


「じゃあ行くか」


 そう言ううとクロはギルド支部をあとにノクタスの森へと向かい出す。



◇◆◆◇



 ノクタスの森に入り三時間、俺はバテにばてていた。


 ここ、異世界に来た初日はまだ林道と言える場所を歩いていたので考えもしなかったのだが、まさか森の中で整備など当然されてない道なき道を歩く事がここまで疲れるとは思いもしなかった。


 今は巨木にもたれて休憩しているのだが、いくら体力が回復しても気力の方が回復しない。


 もう一歩も歩きたくない。


「まったく、だらしないぞクロ!」

「まあまあメア、いいじゃないですか。こうやってクロに甘えれる時間でもあるんだよ?」

「そ、それはそうなんだが、ミイアは甘えすぎだとおもうぞ!」


 そんな俺とは対照的に元気が有り余っている二人、メアは俺の隣りに座り体重を心なしか俺の方にかけてきていて、そしてミイアは俺の前に座りモロ俺にもたれかかっている。


「しかしまさかムヌーだけではなく鎧兜鹿まで一撃とは、クロさんの狙撃技術もその魔銃と言う武器の威力も凄いですね。あ、頭撫でるのやめないでくださいね」


 そして俺の気力が戻らない一番の原因が、もう一日のノルマを達成しているのである。


 歩きたくないというより働きたくないのだ。


 クロがやったことといえば、まずマップを展開し赤い三角形のマークを探し鎧兜鹿と書かれている場所へ向かう。


そしてターゲットを取れるぎりぎりまで近づくと、あとは引き金を引いて終わりである。


 異世界チョレーわ~。一日三時間働くだけでいいのだ………「村へ帰る時間合わせても今日の合計勤務時間は最低五時間はかかるだろ」だって?メアさんちょっと言ってる意味が分からないです。


「いい加減帰るぞバカクロ! ゆっくりするなら村でゆっくりしろ!」



 仕方ない、鬼嫁の風格が出始めたメアをこれ以上怒らせるわけにはいかないので重たい腰を持ち上げるとしますか。


 毎日これじゃあ本気で筋トレしようか迷うなこりゃ。


 チート能力使っても日本で八時間オフィス勤務の方が楽なんじゃ…と思ってしまうのでこの世界の冒険者達は素直に凄いと思う。


 そんなことを考えていると「どうせ甘えるならこんな場所じゃなくて危険が少ない村で……」と後ろから聞こえた気がしたが気のせいだろう。

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