第36話恋の灯火
初めはそんな風に思っていたのだが話せば悪い人間じゃない事が見受けられる。むしろこの世界では致命的なほどの警戒心の無さである。
だというのに彼に隙が見受けられない。
彼と戦う姿を想像しても勝てるイメージが浮かばないのである。
そこで彼の服装を注意深く見てみると、マジックアイテムである事が見受けられる。
彼は魔法使いなのだろうか?
だがいくら魔法使いだからと行って体力が無さすぎる。
そう思っていたら彼がいきなり倒れてびっくりした。
はっきりいって不思議な男性だった。初夜は断られるし、この世界の常識もかけている。
そして何より彼は負けはしたもののあのドラニコを相手に大人が子供に手加減するかのように簡単にあしらったのである。
はっきりいって気にならないわけがない。気になりだすと自然と目で彼を追っていた。
多分私は彼にいつの間にか恋したのだと気付き、母が私にいつも言っていた事を思い出した。
「きっかけなんか無くても気が付いた時にはたまらなく好きになっていた」
私は出会ったその日にもう恋の灯火は小さく灯っていたのかもしれないと思うと自然と顔が熱くなった。
そしてやはりミイアに発情期が来た。それはとても嬉しかったのだが、あのミイアがまさかあこまで激しくクロに対して攻めるとは思わなかった。
薬を飲めば発情期からくる性欲などは自分の意思で押さえられるほど軽いものになり少し身体が火照る程度までに落ち着くと聞く。
2日連続クロの寝ている隙にクロの布団に潜り込むミイアは、気持ちを聞かなくても彼女の気持ちが手に取るように分かる。
私もクロの事が気になって仕方がないのだがミイアと違って一歩踏み込む勇気を持てず、ぐずぐずしているうちにミイアに先を越される毎日をこれから過ごすのだろう。
冒険者として得た勇気は何故かこんな時に役にたたないのだから情けない。
そんな事を思いながらミイアの祖母の家につき、ミイアの妹達がいつもようにじゃれついて来てくれる。彼女達は人見知りなためクロを見ると警戒心丸出しだったのだが、すぐに慣れたらしくご飯の時間までクロとも遊んでいた。
その姿を眺めると胸が締め付けられるのだが、嫌な感じはしない。むしろ逆にずっと感じていたいとも思うのだがその締め付けは徐々にきつくなってきている気がする。
その晩ミイアは葡萄酒をまるで水のようにのんでいた。発情期が来ないという不安とそのせいで祖母に心配させてるという後ろめたさなどがなくなり、祖母の家に来た事がきっかけで改めて肩の荷が降りた事を再認識したのだろう。
「ふー…っ」
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