第25話それはもう熟知しております

そうボストンの存在が身近にいるためいまいちピンと来ないのである。


 未だに現役の冒険者に畏怖されている存在でも妻はゼニス一人である。


「あぁ、あの二人は特殊でな、お互いにお互いを守り守られる存在、パーティーの延長戦上として結婚したようなものでな、逆に妻が一人しかいない事こそが父さんの、また母さんの強さと実力を物語ってるんだ。父さんの実力に見合う女性は母さんしかいないと。まあ、母さんが独占欲が強く嫉妬深いってのも有るのかもしれないのだが」


 なるほど、ボストンに妻が一人しかいない理由は妻ゼニスが原因で間違いない。前半はボストンの建前と妻が一人しかいない言い訳だろう。


「あと金銭面の問題もあるな。妻の数だけお金が掛かる上に妻が多いということは子供はその倍以上になるだろうからそこにも大量にお金が掛かる。だからほとんどクロの国と同じく市民は一夫一妻が一般なんだ。それから一夫多妻といえど妻に内緒で愛人を作った場合は…………わかるよな?」

「あ、ああ。それはもう熟知しております」


 一夫多妻と言っても現状は俺の世界と大差ない事に男の夢はやはり夢なのだと知る。妻か愛人かの違いはあるが異性を囲う一番の近道は財が必要というのはどちらの世界も同じという事なんだろう。


 そして妻に内緒の逢瀬は妻にバレたらどちらの世界も同じなんだろう。メアの目が昔俺が浮気してると勘違いした時の妻と同じ目がその事実を物語っている。


 未だにトラウマの記憶を彷彿とさせる今の状況は精神的に辛いため話の内容を変えてみる。


「ところで、話は変わるんだが……精神安定剤があればいいんだよな?」

「いいかクロ? 一夫多妻だからといえ浮気は…………え?」

「いやだから精神安定剤持ってるんだが?」


 毎日闇金に追われる生活してると睡眠薬と精神安定剤は必需品となるので自殺する日も持っていた。実際にストレージ内を確認するとやはり精神安定剤が一週間分入っていた。


 あれから十分後、涙目になり穴があったら入りたいといった風に顔を真っ赤にし、メアの影に隠れながらクロを見つめてくるミイアと、左頬にくっきりと紅葉型の痕を残し床と一体化しそうなほど見事な土下座をするクロがいた。

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