第10話好きな人同士

「そもそも俺とお前はまだ出会って日が浅い。まだお互いに名前しかわからないんだぞ? それに……そういうのは好きな人とやるべきだ」


 そう説得してみると「なに言ってるんだろう?」という顔をするメアだが、少し考える仕草をしたあと自分で答えを見付けたのか何かに納得する。


「そ……その……トギをするのはすす、好きな人同士でなければならないというのはクロの国の風習なのか?それなら今日トギをしないのは納得だ」

「どういう事だ?」


 うんうん頷いているメアなのだが今度は逆にクロがメアの言葉を理解できないでいた。


「わ、私の国では親同士が決めた相手と結婚するのが一般的なのだが出会って初日でトギをし子作りするのが普通なんだ。未来を担う子供を作るのは一番大切な事なんだ」


 なるほど…………日本みたいに治安が良くなく医療も発達してないと子供の死亡率が高いはずだ。死亡率を考えると最低でも五人以上産まないと村や町、国をも維持出来ないとすればメアの言わんとする事が分かるような気がする。


 若い男女が一つ屋根のしたならまずは子作りって事なんだろう。


「メアは……出会ってまもない俺なんかでも平気なのか?」

「親が勝手にきめた顔も知らない奴よりましだ。しかも今回の見合い相手は家柄は悪くないみたいなんだが容姿が……その……醜いらしくてな、それで親と喧嘩して飛び出してみればクロに会ったんだ。顔も知らない奴より顔も分かるし会話もしてある程度人となりが分かるクロなら断る理由もない」

「……そうか」


 この世界にはこの世界の価値観があって現代の日本に住む俺とはまた価値観が違って当たり前で、ここで俺がとやかく言う事でもないだろう。


 数十年前までは日本でもお見合いが当たり前で田舎では亭主がいる女性にも夜這いが黙認され父親がだれか分からないなんて事も多々あったらしい。恋愛結婚というのは近代化と情報社会による文化なのだろう。


 それからは互いの事を話し合った。


 メアの年齢は17歳で4人兄妹ひとつ上に兄、10歳下に妹、そして3つ上の兄がいたそうだが魔獣に襲われ亡くなったらしい。


 メアの父と母は昔ギルドのメンバー同士だったらしくお互いに異性としてよりもパートナーとして見ていたのだが、母が18になった時にお互いの親から縁談を持ち込まれそのまま結婚したのだという。


 ギルドという言葉が気になったので聞いてみるとメア自身ギルドに入っていてハンター登録しているらしく明日ギルドに連れていってくれる約束をする。





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