第2話自己紹介

「え? 何………………で」


 いろいろ身体を触るなどして確かめていると解った事がある。

 まず着ている服は自分が15年動かしていたゲームのアバターが着ていた課金衣装である事とと何より、少女の瞳に辛うじて写し出す俺の姿がまさにゲームのアバターそのものなのである。


「あのー…………そんなに見つめられるとだな…………犬も食わないじゃじゃ馬娘と名高い私でも照れるのだが?」

「あ、いやっ…………すまん。つい見いってしまった」


 いきなりモジモジしながら喋る彼女に言われて今自分がしていた行動を思い返し、確かにセクハラと言われても文句言えないかな?と反省し謝る。

 いくら彼女の瞳に映る自分の姿がゲームのアバターそのものだとしても見られてる方はそんなこと知らないのである。


非がこちらにあるなら謝るべきだ。


 そんな事を考えていると先ほどの自分の軽い謝罪を聞いてから顔を赤くし「この私に見いってしまうなんて事があるのか…………いや、彼は確かにそう言ったし嘘をついてるとも思えない…………いやいやしかしだな…………」と、わけがわからない言葉を呟きはじめている。


 先ほどから大丈夫か?と声をかけているのだが、自分の世界にトリップしているのか一向に戻ってくる気配がない。

仕方がないのでもう一度彼女の瞳を覗きこみ自分の姿を確認するのだが見れば見るほど角が生えた自分のアバターそっくりの美青年である。


 悪くない。元のパッとしない顔より断然良い。


 それでもそのパットしない顔で大恋愛の果て結婚し、娘まで授かったのであるからその点は良くやったと褒めてあげたいところだ。


「っ…………ぁぅ…………っ!」


 そんな事を考えていると今度は顔を真っ赤にしながら口を金魚みたいにパクパクし、声にならない声を発している彼女がいた。


「やっと帰って来たか。まだ自己紹介してなかったよな?ここで会ったのも何かの縁だ。自己紹介しないか?俺の名前は…………」


 そこまで言うとこういう場合本名を名乗るべきかゲームのハンドルネームを名乗るべきか迷い、少し間を置く。


「そうだな…………クロ。クロ・フリートだ。クロと呼んでもらって構わない」


 相変わらず恥ずかしいハンドルネームだと少し恥ずかしがりながらも祐介ことクロ・フリートはゲームのハンドルネームのほうを名乗った。


「クロ・フリート…ね、覚えたわ。私はメア、メア・トリステンよ。私の事はメアと呼んでくれて構わない」


 まだ赤い顔を手でパタパタと扇ぎながらメアは自己紹介をする。



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