第2話 追放?(2)

 先ほどから壁にもたれ、テコイが座るテーブルの様子をニヤニヤと見つめているこの男。

 彼の名はムツキ。狩人である。

 狩人といっても、弓の腕はさほどうまくはない。

 ならば、モンスター討伐のために弓の技術を鍛錬をすればいいのであるが、女のハートを射貫くことのみに躍起になっている使えない奴である。

 最近では、この店の前にできたキャバクラのホステス、エルフのアキコちゃんのハートを射止めようとしている。

 そのために、週四でキャバクラ通いのアホである。

 だが、キャバクラに通うにも金が要る。

 残念ながら【強欲の猪突軍団】では、金にうるさいテコイから渡される報酬は雀の涙。

 アキコちゃんを指名するには、まとまった金がないのだ。

 そのため、【強欲の猪突軍団】の仲間内の道具をこっそりとリサイクルショップに売っているという噂。

 それどころか、サラ金にまで多額の借金をしているという。

 だが、そこまでしても、ムツキの嫌味な性格が災いして、今だ、ストッキング一枚脱がすことに成功していない……仕方ない……


 そして、小汚い酒場の片隅には、目立たないように黒いフードをかぶった男が座っていた。

 黒いフードの男は先ほどから、ぶつぶつと何かつぶやいている。

 どうやら、黒魔法の詠唱をしているようだ。

 目の前の何も乗っていないさらに手をかざす。

 すると、チキンの骨付きもも肉が煙と共に現れたではないか。

 これは、転移魔法か?

 転移魔法と言えば、この国では高位の魔法である。

 と言うことは、この黒魔導士は、かなりの使い手なのだろう。

 しかし、このチキンはどこから来たのであろうか。

 どうやらそのチキンは、テコイのテーブルの上にあったうちの一本のようである。

 男は、皿に乗ったチキンを両手でおいしそうにほお張り始めた。

【強欲の猪突軍団】から報酬を貰えないこの男は、黒魔法を駆使して、テコイのものを奪い取り、その日その日をなんとか生き抜いているようである。

 この男、名をボヤヤン。黒魔導士である。

 しかし、テコイから物を盗むとは度胸がある。

 いや、きっとばれたら半殺しの目にあうことだろう……仕方ない……


 先ほどからテコイが上目遣いで睨み付けている先には、テーブルの前に立つヒイロと呼ばれた男が立っている。

 年のころは18歳ぐらいか。

 黒い短髪の好青年である。

 その伸長は、男としては高い部類、すらりとした高身長である。

 その証拠に、ここにいるどの男達よりも背が高い。

 そして、先ほど【強欲の猪突軍団】からクビを宣告されたその人である。

 そして、この物語の主人公であり、この国でいま流行りの職業の魔獣使いなのだ。


 なぜ、魔獣使いが流行っているのかって?

 それを話せばながくなるだが……

 まぁいい、端折って話をしてあげよう!

 えっ……そこのあなた……読むのやめちゃうの……

 恩着せがましい話など興味がない……

 えっ! スミマセン! スミマセン!……是非、読んでいってくださいませ!……

 卑屈と言われようが、なんと言われようが、構いません!

 お願いします、是非とも読んでいってくださいませぇぇぇぇ!


 オほん!

 それでは……

 3年前まで、このキサラ王国は、魔王の侵略を受け滅びかけておりました。

 えっ⁉ そんなベタな設定はいらん? って……いいじゃないですか、ファンタジーなんですから!


 魔王がモンスターを放つ。

 モンスターは人間を食べる。

 食べられないよう、人間は物陰に隠れて息をひそめる。

 それは、まるでネズミのような生活。

 この世は、もう、モンスターが食物連鎖の頂点に立ったかのような世界であった。

 人々はモンスターを見るだけで恐怖して逃げ惑う。


 そんな魔王討伐のために立ち上がった【チョコットクルクルクルセイダーズ】。

 キサラ王国のお姫様を中心としたちょっとおバカな4人の女の子たち。

 そして、そのお目付け役として国王から任命された、騎士養成学校で主席の生徒。

 その生徒が、5匹のモンスターを従えていた魔獣使いだったのである。

 その魔獣使いが、従えていた魔獣たちは、

 レッドの朱雀!

 ブルーの青龍!

 ホワイトの白虎!

 グリーンの玄武!

 ヒロイン役! ピンクのスライムドラゴン!

 そして、最後はリーダの男、マジュインジャー!

 5匹と一人、全員そろって【魔獣戦隊! マジュインジャー】

 ドーーーーン!

 背景が5色の爆煙を上げたのは、きっと気のせいだろう。



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