0・廻

理柚

廻蛍やぐら

 謎解きはたのしいかね ―


薄暗いやぐらの中で、遥か昔から賭けをしている

苔は体を寄せ合い

わずかな陽光を逃すまいと息づく

雨水は岩を這って小さな窪みに流れ、淀みとなる

一匹の羽虫が落ちる


 謎解きはたのしいかね ―


いつものように曇天の蚊帳に蛍を放つ

呼気の隙間を埋めながら発光するそれらは

いくつかの点を結びながら四方に散り

そして、いつしか消える 


 謎解きはたのしいかね ―


何度目かの転生によって

苔はさらに青々と繁り湿潤に歓ぶ

雨水は絶え間なく流れ、窪みは一層深まり

羽虫が沈殿する淀みの上澄みが煌めく


 謎解きはたのしいかね ―


いつも誰かと果てなく賭けをしている

後ろ手に密かに握った青磁の破片で、柔らかい部分に印をつけながら

やがて殻と芯は引き離され

どちらか残ったものだけが、靭やかな苔の褥で眠ることができる

あの言葉がやぐらにこだますれば目覚めて

再び終わらない賭けごとがはじまる


 今が一体、何時いつなのかあなたには分かるか?


明滅。

いつものように、また放たれる蛍。

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