第24話 あの日の裏側
私は11歳の時葬儀屋連盟の本部に呼び出されました。残念ながらこういう時は大体何の用か予想がついてしまうんですよんね。私は何かやらかした記憶はないですしということはいつも通りの先生の無茶ぶりなんでしょう。はぁー先生は弟子の使い方が荒すぎますよ。私は先生みたいな先生にはならないようにしましょう。悪い人ではないんですがね。
夕方、聖戦の国クロニクルにある葬儀屋連盟の本部に到着しました。少し前に移動したみたいですがね。葬儀屋連盟の本部は葬儀屋の中でも一握りしか知りません。支部が各地に多くあるので別に本部にわざわざ来る必要がないので。一見普通の木造の建物だと思うでしょうが葬儀屋連盟の本部はここの地下にあるんですよ。
階段を下りて本部の奥の方を目指して進みます。あらゆるところに紙の山があります。相変わらずここは紙が多いですね。そして一番奥の会長室をノックします。
「エテルナです。入ってよろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
私は会長室に入ります。そこには地面につくほど長い乙女色の髪をした目の赤色の女性がおりました。
「失礼します。お久しぶりですノエラ先生お元気でしたか?」
「久しぶりですね、書類仕事が忙しいのであまり休めてませんけど。」
「手伝いましょうか?」
「大丈夫ですよ。エテルナこそ元気でしたか?」
「まあボチボチですね。」
「何かあったんですか?」
「あのですね、どっかの先生が月に十回も手紙を送ってきたからです。それで何の用ですか?」
「それはあなたが無視するからですよ。まあいいです。今回は真面目な話です。」
勝手に完結させました。いいんですけど十回も手紙が来て私の伝書鳩もかわいそうだとは思いませんかね?
「先生、また髪を切ってませんよね?」
「話をそらさないでくださいよ。まあ面倒で。」
「先生ってファッションに興味がないですよね。」
「ひどいこと言いますね。」
「仕方ないと思います。」
「酷い、、、。もっと先生を敬ってくれてもいいんですよ。」
「はいはいわかりましたよ。それで今回はなんですか?一応忙しいのですが。」
「一応私あなたの先生なんですが、、、。あのですね私の師匠の娘さんが葬儀屋の試験に合格されたみたいなので弟子を探しているのですよ。」
「ほうそれを私がやれってことですか?」
「察しがよくて助かります。本当は私が行きたいんですが仕事が忙しいのとあなたがご指名だったので。」
「ノエラ先生の先生が直接教えればいいんじゃないですか。」
「あなたの成長を思ってでもあるのですが。」
「・・・。わかりました。先生にはお世話になりましたし行きますよ。」
「十二神将のお仕事は大丈夫ですか?」
「まあ何とかなりますよ。」
「頑張ってくださいねエテルナ。」
「話はそれだけですか?それだけなら失礼しますが。」
「あなたの顔を久々に見たくなったというのもあります。もう少しゆっくりしていってもいいんじゃないですか?」
「ではお言葉に甘えて。」
私は手慣れた感じに棚からマグカップを二つ取り出しテーブルの上におきます。お湯を沸かしてティーパックを入れます。
私と先生は優雅なティータイムを過ごしました。お互いの近状報告をします。楽しい時間はすぐに過ぎていきます。
「たまには手紙返してくださいね。手紙を返してくれないと心配になってしまいますから。」
「彼女ですか、、、。わかりましたよたまには返します。」
「おや、そろそろ夜になってしまいますね。エテルナは早朝に出発するつもりですか?」
「そうです。だから今日は先生の家でお世話になろうと。」
「私も仕事が今日の分はもうない様なので一緒に帰りましょう。」
私達は先生の家に泊まります。二階建て一軒家で木造建築でした。中は思ったよりも綺麗ですね。
「ちゃんと自分で掃除しているんですよ。」
「そうなんですか。じゃあキッチン借りますね。」
「エテルナ、今日は私が何か作ってあげましょう。」
「え、先生が料理、、、。」
「なんですか、、、。私だって昔は先生のために作っていた時期がありますよ。なので人並みにはできます。そう言えばあなたと始めて会った日にだって作ったじゃないですか!」
「あっ、そういえばそうでしたね。じゃあ期待してますね。何か手伝うことはありますか?」
「お皿を並べて置いてくださればそれでは充分ですよ。お疲れでしょうから並べ終わったらゆっくり休んでください。」
「それはどうも。」
先生がフライパンを持っているところを見るのは新鮮ですね。ジーと見ていると先生と目が合いますすると先生は笑いながら。
「そんなにまじまじと見られると何だか恥ずかしいですね。私に惚れてしまいましたか?」
「御冗談を。」
「あなたホントに十一歳ですか?」
「そうですけど、、、。何でですか?」
「いや、対応が大人過ぎて。」
「気のせいですよ。」
「そうですか?」
「そうです。よそ見をすると危ないですよ。」
「んー、私の時はもっと慌てたものですがね、、、。」
先生はボソッと何かをいっていますが気のせいでしょね。
「出来ました。特性サンドイッチとパンプキンスープとサラダです。」
「美味しそうですね。食べてもいいですか?」
「もちろん、いただきましょう。」
「いただきます。」
「召し上がれ。」
先生に召し上がれと言われるのも久しぶりですね。
「お、、、いしいですね。」
「なんですかその微妙な反応。」
「いや、あまりにも美味しくて驚いてます。」
「ちょっとショックです。」
「ごめんなさい。なんか懐かしい味ですね。」
「でしょうね。」
私とノエラ先生は美味しい料理を食べ終わったあとお風呂に入り寝室に入ります。
「えーっと、ベット一つしかないですよ。」
「大人一人と子供一人なので足りますよ。」
「いや、でも私十一歳ですよ。」
「エテルナ、もしかして一人で寝たいお年頃ですか?」
「そんなことないですど。」
「じゃあいいじゃないですか。久しぶりに師弟でゆっくり寝ましょうよ。」
「先生は私のこと抱き枕にしたいだけじゃないですか、、、。」
「料理作ったご褒美だと思ってください。」
「・・・。まあいいですよ。」
「それじゃあ電気を消しますよ。」
「どうぞ。」
先生はスイッチを押して電気を消します。部屋は窓からの月光だけになってしまいました。
「エテルナは暖かいですね。」
「・・・。」
「無視しないでくださいよ。」
「先生となら久々にゆっくりと寝れそうです。」
「そうですね。明日早いので休まなきゃいけませんよね。」
「そういうことなのでノエラ先生でおやすみなさい。」
「おやすみなさいエテルナ。」
私はゆっくりと目をつぶります。先生の方が暖かいです。
朝目が覚め私は寝室を抜け出します。先生はお寝坊さんなのでしばらく起きてこないでしょう。出かける支度をします。朝食を先生の分まで作って冷蔵庫に入れておきます。見送りがないのは寂しいですがまた会えますからその時を楽しみにしておきましょう。
私は車のエンジンをかけて先生の家を後にしようとした時です。ベランダから先生が顔を出しています。
「行く時ぐらい何か言ってくれればよかったのに。」
「起こすのは悪いなあと思いまして。」
「教え子のためならそれぐらいしますよ。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
「いってらっしゃい。道中気をつけてくださいね?」
「はい!さようならノエラ先生。」
私は先生に別れを告げて聖戦の国クロニクルを後にします。先生に会えるのは嬉しいですが聖戦の国クロニクルは周りが山に囲まれた国なので遠すぎます。疲れてしまいますね。
私は車を走らせ白雪の国シュネーに向かいます。これまた遠く全速力で飛ばして三日間かかってしまいました。私のアーティファクトは風を操るのでかなり早く行くことができますがまだまだ完全には操れません。それでも結構通常よりも倍近く早いのですが三日間もたってしまいました。普通だったら六日以上かかるということですからかなり遠いですね。
私はノエラ先生の先生の家に着きました。それにしても大きな家ですね、そういえばノエラ先生は葬儀屋連盟の会長を押し付けられたと言ってましたっけ。それほどすごいひどい人なんですかね?
チャイムを押そうとしたら庭から乙女色のきれいな三十代前半くらいの女性が現れました。
あれ?先生が二十代半ばくらいですのでの先生の先生は四、五十代だと思っていたのに意外と若いのですね。
「あなたがエテルナさんですか?」
「はい、エテルナと申します。」
「思ったよりも早かったですね。もう少し遅くなるかと思ってました。」
「すみません早朝から。」
「いやいいんですよ。良かったら入ってください。」
「ありがとうございます。お邪魔します。」
私はノエラ先生の先生の家に入ります。朝食がまだだったのでコーヒーとビスケットを出して貰いました。
「わざわざお越しいただきありがとうございます。十二神将迷企羅のエテルナさん。」
「私が十二神将だということも知ってるのですね。」
「ええ。ノエラさんとはやり取りをしていますからね。あなたのことをよくできた弟子だと自慢していましたよ。」
「ふふ、何だかお恥ずかしいですね。」
「それで私の娘であるラディアのことをお預けしたいのですが。」
「そのことで一つ疑問なのですけど、、、。」
「なんで私が自分で教えないかということですか?」
「え、あ、はいそうです。なんでわかったのですか?」
「葬儀屋だからですよ。」
「・・・。流石ですね。それで何でですか?」
「私、少し前紫のあざという病気に感染してしまったんです。」
「え、、、。」
「あの子は幼い時に父親を失いました。まだ幼いのに私までいなくなってしまえば人と関わることが怖くなってしまうかもしれません。ですのであなたに一度引き取って欲しいのです。願わくばそのまま立派な葬儀屋になって欲しいですがね。」
「・・・。もう二度と娘さんに会えなくなるかもしれませんよ?それでもいいんですか?」
「あの子の為なら仕方ありません。」
「・・・。わかりました。でも私でよろしいのですか?」
「ええ、だってあなたはお強いでしょう?安全な旅が出来ると思いますから。」
「なる、、、ほど。」
「引き取っていただきありがとうございます。ラディアのことをよろしくお願いいたします。」
「・・・。任せてください。立派な葬儀屋にして見せますよ。」
私は一旦家を出て自身の車の点検をします。大事な娘さんを預かるのですから事故に遭うわけにはいきませんので。一通り点検が終わりもう少しラディアのお母様とお話をします。最後にノエラ先生には自分が病気だということを言わないように釘をさされました。
ラディアが家から出てきました。あまり乗り気ではなさそうですね。私もですが。
こうして私とラディアの一年間の旅が始まったのでした。
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