第14話 思い出と一緒に[後編]
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよー。朝起きたらフクロウのうるらちゃんが葬儀屋連盟から2枚の依頼書を運んできました。依頼は商業国家デオンからで依頼主様はガバナーさんです。ガバナーさんは5年間奥様であるフリージアさんを待ち続けていました。しかし返って来た時は遺体となっていました。私は部屋で疲れを癒していましたがその時エンジンの音がします。部屋を出るとそこには見慣れた少女が立っていました。その姿を見て私は驚きながらこういうのでした「エテルナ先生!」と。
久しぶり先生に会えたのは嬉しかったですがいざ会うと何を話していいかわかりません。ましてや先生ですし。普通はまず挨拶からですよね。
「先生お久しぶりです。」
「・・・。」
先生は少し驚いた顔をしましたがそのまま行ってしまいました。
あれ?無視されてしまいました。今までそんなことを一回もなかったのに。
やはり怒っているのでしょうか?勝手に出て行ったことを。
少し気まずい中メイドさんからの葬儀の日程や詳しい内容を知りました。気まずいのは私だけなんですがね。
そうとは言えど仕事は仕事です。仕事に私情を持ち込むのはだめですからね。私も仕事に取り掛かります。第4話で言いましたが久しぶりなのでもう一度言います。
1,遺体に損傷があった場合写真を見て修復。
2,お通夜の手配
3,葬儀、告別式の手配
以上です。他のものありますがその国や種族の文化違いや価値観などもあるので省略するということで。
ふう、今日一日で大抵の仕事は終わりましたね。あとは遺族方々の悩みを解消するだけですがそれは明日するとしましょう。私は電気を消して眠りにつきました。
朝日が目突き刺さります。ぐうもう朝ですか早いですね。。あれ?目覚ましがならなかった!私は急いで着替えた後1階におります。先生とガバナーさんとメイドさんがおりました。
「すみません。今起こしに行こうと思っていたのですが。」
「いえいえ、自己責任ですので、、、。」
「そんなことより酒はねえのか。」
「ご主人様朝からお酒はよしてください。」
「もう少しで朝ご飯の準備が終わりますので暫しお待ちください。」
「はい。」
「急がなくても大丈夫ですよ。」
お、先生が初めて話しました。依頼主様の前では機嫌悪くできませんからね。
朝ご飯はシュガートースト、卵サラダ、コーンスープ、ハムでした。どれも美味ですね。食後のコーヒーを飲んだ後私はこう切り出します。
「ガバナーさんこの後お話いいですか?」
「ああいいぜ。どうせ暇だしな。」
「その前に先生お話いいですか?」
「・・・。いいですよ。」
「ラディア様とエテルナ様はお知り合いだったんですね。」
「はい!私の師匠です。」
先生は少し驚かれていましたが、、、。なんで?
「お久しぶりです。先生。」
「ええ。久しぶりです。ラディア6年ぶりですね。」
今度は少し尖った口調で返してくださいました。笑顔なのがまた怖いですね。
「やっぱり怒っていますか?」
「当たり前です!あなたのことですから無事だとは思っていましたが、あんな状態でしたからどれだけ心配したことか。怒るのも無理ないです!」
「本当にご心配おかけしました。」
「ふふふ。だいぶ立ち直ったみたいですね。少し安心しました。」
なんだか照れくさいですね。
「私の6年間の成長見ていてください。」
先生は更笑顔で
「楽しみにしていますね。」
と仰ってくださいました。実に嬉しいですね。
私達はガバナーさんたちのいる所に戻りました。
「酒はまだかー?」
「ですからお酒は控えてください!」
まだこんなやり取りをしていらっしゃいました。懲りないですね。私は部屋に戻りもう一枚の依頼書を持ってきます。
「二人とも聞いてください。これはなんだかわかりますか?」
「これ、は?フリージア様の字!」
「なに!なんでお前がそんなものを持っている!」
「それはですね。」
こうして私はここに来る前までに何があったかを語りだします。
時は1ヶ月前に遡ります。
商業国家デオンからかなり遠くで私はいつも通り相棒のジープを走らせ適当にぶらぶらとおりました。山を越えた所に小さな豊かなそうな大きな村がありました。今日はあそこで一晩過ごすことにしましょう。
この村で一番大きなホテルにチェックインして早速観光案内所に行きました。観光案内所はそれはもう大きな所で木のいい香りがします。この村には何があるんでしょう?
「いらっしゃいませ。この村にようこそ。」
「この村の観光名所って何ですか?」
「そうですね。この村は花が有名なのですが時期が時期ですので、、、。」
「・・・。そうなんですか。少し残念です。美味しいお店とかはどうでしょう?」
「この村はキノコが有名でして時期が時期なので、、、。」
「・・・・・・。そうなんですか。」
旬なものが何もないんですね、、、。
何もないのに落胆しながら私は食べ歩きをしていました。紙袋の中にリンゴとパンが入っています。アメリカみたいですね。アメリカには観光名所がいっぱいあるのになんでこの村にはないんでしょうね。行ったことはありませんが。
特に何もないまま部屋に戻りました。ジープに乗り込みました。この村を一周してホテルに帰りますか。
「ジープさん何もなかったです。暇になりそうです。」
ホテルの部屋に戻ると置き手紙がありました。ここに知り合いなんていないのですが、誰からでしょう?何のようなんでしょうね。暇つぶしになればいいんですが。
そう思い私は置き手紙の差出人の元に向かいます。そこはホテルから歩いて5分程の小さな病院でした。
「葬儀屋様いらっしゃい。私が依頼主のフリージアです。」
そこには紫色の髪と目をしたかなりやつれた女性がおりました。顔以外の肌が全身紫色あざのようなものになっています。そのあざは鼓動を生きているかのように鼓動を打っていました。そうこの方がガバナーさんの奥様であるフリージアさんその人でした。
「それでどのようなご用件ですか?」
「あなた葬儀屋なんですよね?昔葬儀屋にあったことがあるのでわかります。」
「・・・。いつ見たのですか?」
「私昔から目だけはいいんですよ。」
この村に入ったときに外したんですが、、、。すごく目がいいんですね。
「そんな目で見ないでください。本当は葬儀屋を探していたんです。」
「ですよね。本当は正式な手続きを取らないといけないのですが。」
「そうなんですか!そんなこと知らずに。でもどうしましょう私には時間がないんです!」
「どういうことですか?」
見ればわかりましたがあえて聞きます。
「それはですね、、、。」
こうしてフリージアさんは自分の過去を語ってくださいました。
曰くフリージアさんは商業国家デオンにご主人がいるそうです。ガバナーさんのことですね。それはもう仲良く暮らしていました。そう6年前までは。フリージアさんも病気が発見されました。それは不治の病といわれる病気でその年はなる人が多かったらしいです。
最初は特に問題はありませんでした。あざは服で隠していればバレませんでしたし食欲もありました。しかしあざはどんどん広がっていき体は動かなくなっていきました。フリージアさんは怖くなりました。死ぬのがではありません。愛すべき主人であるガバナーさんにそんな姿を見られ嫌われることがです。どうにか理由をつけてここから出ていこうと考えました。
そんな時ガバナーさんは自分の為に大好きな自然を家に取り入れました。自分がいなくても退屈さて悲しい思いをさせないためでしょう。その優しさがよりフリージアさんの心を痛めつけました。そしてこれを理由に出ていくことを決めました。
この森はフリージアさんもそうだったようにガバナーさんを退屈させ悲しい思いをさせない効果があると信じて国を後にしました。
「よく考えたらバカな話ですね。今更になってあの人に会いたいと思ってしますのですから。」
「なんで会いに行かないんですか?今も待ってるかもしれないのに、、、。」
「さっきも言った通りあの人に醜くなっていく姿を見られたくなかったからですよ。それに今帰ったって余計な心配かけるだけじゃないですか。今までだって散々かけてきたに。」
「それでも!それでも私だったら帰ってきて教えて欲しいです。」
「・・・。どんな顔であったらいいんでしょう。」
「愛してくれる人なら必ず最後には許してくださいますよ。だから悲しい顔をしないで堂々としてればいいと思います。」
「ありがとう葬儀屋様。でもあの人に見つからないほど遠くに逃げたからどのみち間に合わないと思います。ここからでは商業国家デオンまでは最低2週間かかります。医者からは明日が山場といわれておりますがゆえ、、、。」
「そんな、、、。」
「そんな顔しないでください。自分で選んだ道です。心残りはありますが少ししか後悔はしていません。」
「後悔、してるじゃないですか、、、。」
「私の依頼は葬儀と遺言書を書くのを手伝って欲しいのです。これを主人の元に届けて欲しいのです。」
「わかりました。」
こうして私達は遺言書の内容を考えフリージアさんはそれを楽しそうに書いておられました。
「こんなこと聞くのは変だと思いますがなんでそんなに楽しそうなんですか?」
「これを主人が読んでくれると思うと嬉しいですから。」
「そんなもんですか?」
「そんなものですよ。」
嬉しいのなら良かったいいんですけど。
「最後に貴方にで会えて良かったです。弱音を吐けましたし。とっても有意義な時間をありがとうございました。」
「いえ。もっと早くお会いできればご主人様の所に連れてくことができるのに。」
「代わりに私と過ごしたこの時間を連れて行ってくださるんでしょ?」
「はい。お任せください。」
私は必死に悲しみを抑えながらフリージアさんの最期を看取りました。
そして現在にいたります。
「遺言書お読みしてもよろしいでしょうか?」
「・・・。ああ。頼む。」
[愛するあなたへ
こんなに長い間音沙汰なかったこと深くお詫び申し上げます。葬儀屋様からある程度理由をお聞きしたとはお思いのことですが改めて私の口から説明させていただきます。私はとある不治の病にかかってしまいました。恋とかじゃないですよ。
冗談はおいといて不治の病にかかってしまった。紫色のあざという病気です。私は幸い進行の遅い方でした。そのせいでより苦しんだのですが。
私はあなたに苦しんでいる姿を見られたくなかった。弱っていく姿を見られたくなかった。醜くなっていく姿を見られたくなかった。ですからあなた優しさを踏みにじってしまいました。本当に申し訳ございません。
この6年間ずっと会いたかったです。勝手に出て行って何言ってんだこいつと思われたかもそれませんがこの気持ちは噓偽りありません。あなたもそう思ってくださっているでしょうか?
最後になりますが健康には気をつけてください。私が言うのもなんですが。メイドさんの言いつけをちゃんと守ってくださいね。お困らせるなんてもってのほかですよ?]
「とても優しい方だったんですね。最後まであなたのことを思っていましたよ。」
「葬儀屋さんが、、、看取って、、、くださった、、、のか?」
途切れ途切れで顔を赤くしながらガバナーさんは尋ねましたよ。
「ええ。」
「こうして、、、思うと誰が悪なのか、、、わかんねえな。世界ってのは、、、やっぱり醜く、、、できてるんだな。人間から大事な、、、ものを奪って、、、いく要らないものは多く与えるのにな。」
「そうですね。私もそう思います。」
そのまま続けます。
「生きているってのは難しいことですね。目標がなければ将来不安になりますし、無気力になってしまうことも多いです。ホントにこの世が地獄のようで精一杯生きても無駄な気がする所もあります。なんで生きる?なんて思うことも少なくはないでしょう。私にはそう言って時期がありました。そう思った時には私は周りを見ます。今まで出会った方々の生きているところを見て私も少しは頑張ろうと思えるのだから。」
「周りか、、、。俺の周りには人がいねえな、、、。」
「私たちがいるじゃないですか。」
「葬儀屋さんを、、、周りと言っていいのか?」
「私はガバナーさんの人生に少なからずとも関わりましたよ?」
「・・・。」
「それにメイドさんもいるじゃないですか。6年間嫌な顔をせずにずっと仕えてくださる人なんて滅多いませんよ。」
「私はご主人様に永遠に仕えるのは奥様の依頼でもありますし私自身もこの環境にとても満足しています。」
メイドさんもそう思っていてくれて何よりです。
「そうか。俺はてっきりウンザリしているのかと思ったんだがな。甘えすぎていたすまんな。」
「いえいえ。でもお酒は控えてくださいね。」
「ああ。気をつける。」
これにて一件落着ですね。
「葬儀屋さん。最後に一ついいか?」
「なんでしょう?」
あ、先生が答えました。まだ落着してない?
私達は葬儀を行った3日後ガバナーさんたちとフリージアさんが亡くなった村まで移動しました。1ヶ月前に来た時より花が咲いています。当たり前か。
「ここでフリージアは逝ったのか。」
「そうですね。」
「きれいなところだな。」
「花がきれいな村ですよ。」
「フリージアは咲いてないのか。」
「時期が時期ですから。でもいいじゃないですか花は多い方が綺麗ですよ。」
「そうか、、、。よし決めたここに引っ越そう!」
「え?いいんですか?商業国家デオンには思い出がいっぱいあるのに。」
「ははは。思い出も多くあった方が綺麗だろ。」
そういいガバナーさんは引っ越しの手続きをしに行ってしまいました。
「これからも大変そうですね。」
私はメイドさんの方を見てそういいます。
「そんなことありませんよ。どこであろうとご主人様に尽くすのがメイドですから。」
「そうですね。頑張ってくださいね。」
「はい。ありがとうございました。これ依頼料です。」
「ありがとうございます。それでは私達はこれで。」
少しばかり素っ気ない気もしますがまあいいでしょう。私と先生は互いにジープを走らせます。
見晴らしの良い高台に行きました。この村の花畑が全て見えます。いつかはあそこにもフリージアは咲くのでしょうか?気になりますね。
「綺麗ですね。ラディア。」
先生が私に問いかけてきます。
「そうですね。私が来た時には何も咲いてなかったのに花って気まぐれですね。」
「フフフ。あなたと同じですね。」
「今回の葬儀はどうでしたでしょうか?」
「安心して見てられましたよ。成長しましたねラディア。」
私はきっとこれ以上になさそうな得意顔をしていたことでしょう。
「ありがとうございます!これからも頑張ります!」
「強くなりましたね。6年前とは大違いです。」
「いつまでも子供じゃいられませんから。」
先生は優しい目で私を見つめます。
「私も次の国に向かわなければなりませんので。1つ質問してもよいですかラディア?」
「ええ。」
「今でも世界は嫌いですか?」
少し難しい質問ですね。
「わかりません。この6年間先生と別れてからは嫌なことも多くありました。胸に深く刺さるほど悲しい葬儀も行ってきました。でも遺族の方々をみて私も強く強く生きていようと思いました。だから昔よりは好きになれたのかもしれません。」
「そうですか。良かったです。成長したのですね。弟子の成長が見れることは師匠としてはこれ以上にない喜びです。」
「先生。6年間本当にご心配おかけしました。」
「ほんとですよ。でもこれからも心配し続けますよ。あなたの旅路を心からお祈りいたしますよ。」
そういい先生は私を抱きしめました。いつぞやと同じように。
「先生、、、。恥ずかしいです。」
「昔は突き放したでしょう?とっても寂しかったんですよ。」
「先生、、、。」
「何ですか?」
「先生はいなくならないでくださいね。」
「わかってますよ。」
そよ風が吹き花が飛び散ります。いい匂いがしました。先生の腕の中は暖かったです。こんな時間が永遠に続けばいいのに。しかしお別れの時間というのは少しずつ過ぎていきます。
「お別れですね。またいつかで逢いましょう。無理しすぎないでくださいね。」
「はい。先生もそれまでどうかお元気で!」
先生は自分のジープを走らせ行ってしまいました。さてと私も行くとしましょう。ここでの思いを詰め込んで私もジープに乗り込みます。鼻歌を歌いながら私はジープを走らせ行くのでした。
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