第12話 長生きの代償
皆さんは長生きをしたいとは考えたことはありますか?私はもちろんあります。どちらかというと死にたくないですが。まあ一回死んでますけどね!しかしどんな生き物も最終的には皆死んでしまいます。
これはそういったお話です。
いつも通りジープを走らせます。朝なのに真っ暗な森の中を絶賛迷いながら運転しております。ホントにこの世界にもなんちゃらマップ欲しいと強く強く強く思っている次第であります。
取り敢えずいつもの豆知識コーナーいっていきましょー!
今回は葬儀屋連盟からどうやって葬儀屋に依頼が届くかについてです。
1、葬儀屋連盟と各葬儀屋の間にいるペットに依頼書を運ばせます。
2、依頼書を受け取ったら一番近くにいる葬儀屋が依頼主様の元に向かいます。それが無理であれば返事をだします。
3、無事に依頼主様の元に到着出来れば三日以内に返事をだします。
以上が葬儀屋連盟から依頼の受け取り方です。携帯電話がないので情報の共有や伝達が大変です。
そんなことを説明している内に依頼主様の元についてしまいました。今回は国ではなく森の中の小さな小屋からでした。長年使った少しだけ風情を感じる小屋でした。ちなみに今回の依頼主は人間ではありません。
小屋のドアをノックします。ドアが直ぐ開けました。そして出てきたのは20代くらいのエルフの男性でした。
「初めまして葬儀屋様。私の名前はアーダ。見た通りエルフだ。」
「初めましてアーダさん。葬儀屋のラディアです。ご依頼ありがとうございます。」
「来たところで悪いんだが早速だが私の話を聞いてはくだされないか?」
「わかりました。今すぐにでも。」
「今回の依頼は私の葬儀なんだよ。」
そう言いアーダさんは語りだします。
アーダさんは1500年以上生きているエルフらしくエルフというのは20歳から年を取らないことで有名です。人間にとって羨ましいかもしれませんが実際はそうではありません。人間は年を取るから死を感じることができます。しかしエルフはそれがないのです。死の恐怖といつ死ぬかわからない恐怖があるのです。
アーダさんは物心ついたころから自分はいつ死ぬんだろうと死んだらどうなるのだろうと1500年の間ずっと考え続けていました。。死ぬことの恐怖とずっと戦い続けていたのです。
そして10年前病気になってしまい医者から長くはないといわれたそうですが結局10年も生きています。そして1週間前突然に倒れてしまったのでもう一度病院に行ったところ10年も経ち医療技術も進化したので余命宣告をされました。それが10日程だそうです。
アーダさんは余りにも近い死に絶望しました。今までずっと覚悟していたのですがそれがいつなのか明確にわからないが故に生きることを楽しめていませんでした。どんどん重くなっていく体に焦りを感じていました。外部からの接触を避けるために森の中の小屋に住んでいるのでどうやって楽しめばいいのかわかりません。
なので葬儀屋を呼んだそうです。死ぬことについてずっと考えていたのですから。
「なるほど。お話いただきありがとうございます。」
「いやいやいいんだ。」
「葬儀屋として依頼というのはありますか?」
「そうだな。うーん。」
しばらくの間悩んだアーダさんはこう答えました。
「星を見に行きたいな。」
「星ですか?ここからでも綺麗に見えますよ?」
「そうじゃなくて私の故郷の空を見たいんだ。」
どこから見ても同じ気がしますが、、、。おっとこれを直接いうほど抜けてはないですよ。
「わかりました。善は急げですからね。早速行きましょう!」
「私はいいけど葬儀屋様は疲れていないのか?」
「仕事ですから別にいいです。」
「そうか。ありがとうございます。」
こうしてアーダさんの故郷の空を見に行ったのでした。まだ朝ですけどね。
アーダさんの故郷は遠くにありまして今は滅びたエルフの村だそうです。御伽噺やゲームでしか聞いたことがありませんでした。今いる森を抜けて川と山を二つほど越えて都市をいくつか通り抜けたところらへんにありました。夕方の6時に着きました。
「やっと着きましたね。何年前からここを離れたんですか?」
「1200年程前かな。昔過ぎて覚えていないがな。」
「よく行き方迷わなかったですね。」
「ここら辺はあまり変わらないからな。」
「なるほど。」
夕日が落ちていき夜空いっぱいに星が見えました。それを木の上から見ます。こうやって星を見ると世界は美しいと思ってしまいますよね。
「綺麗だな。」
「そうですね。」
「世界はいつだって変わっていってしまうけどこの星々は1500年前から変わらないな。」
「そしてこれからも変わらないのでしょうね。」
「ああ。私はもしかしたら変わりたかったのかもしれない。君たち人間のようになりたかったのかもしれない。」
「人間なんて碌なもんじゃないですよ。」
「エルフだって碌なもんじゃないさ。ただずっと若いだけだよ。羨ましいか?」
「そう言われるとそんなに羨ましくないですね。」
「ふっ、そうか。私は人間が羨ましいよ。欲望の塊みたいで醜いと思ったことは何度もあるけどそれもすべてひっくるめて美しいと思うよ。」
「それはエルフになったからわかったことだと思いますよ。悪いことだらけじゃなかったと思いますよ。」
「そうかもな。葬儀屋様は人間が嫌いなのか?」
「昔は大っ嫌いでした。私は人間の醜さが美しいと思ったことはありませんから。」
「今は?」
「普通ですかね?よくわかりません。でも友達ができました。一緒にいたのは1週間だけでしたが
本当に楽しかったです。葬儀屋としてこんな事を言うのは変かもしれないですが。」
「そうなのか。尚更興味が湧いてきたよ。エルフでね星にお願いするとが叶うという言い伝えがあるんだ。」
そう言いアーダさんは手を合わせてました。
「なんてお願いしたんですか?」
「次生まれ変わるときは人間でありますようにとね。」
「なるほど。」
私も手を合わせます。
「葬儀屋様はなんてお願いしたんだ?」
「アーダさんが次生まれ変われるときは人間でありますようにと。」
「優しいんだな葬儀屋様。ありがとう最後に会えたのがあなたでよかった。」
アーダさんはそういい私に手を差し出します。
「いえいえ。こちらこそありがとうございました。」
私は差し出された手をしっかり握ります。
アーダさんは私の手を今度は両手で握りました。
「ありがとうございました。少しの間でしたが本当に楽しかった。これは報酬代わりと言ってはなんだが受け取ってくれ。」
そういいアーダさんは水晶のようなもので作った緑色の美しい耳飾りを差し出しました。
「これはエルフの宝でね、本来だったら大切な人に幸運を込めて送るものなんだ。今までは送るべき相手がいなかったが葬儀屋様につけてもらいたいと思ってね。」
「ありがとうございます。そんなに大切な物をいいんですか?」
「ああ。これは私と一緒にずっと変わらなかったものだからな。森の奥で眠らせておくのはもったいない。つけてみてくれるか?」
「わかりました。少し待っていてください。」
初めてつけるので少し戸惑いましたが無事つけることができました。
「どうですか?」
「似合ってるよ。」
まじまじと私のことを見てきます。照れくさかったので私は逃げるように
「夕食の準備をしてきますね。」
と言い木を降りてジープに戻りました。
通り過ぎた国で買ったパンと今さっき作ったジャムを持って木を再び登ります。
「アーダさん夕食もってきまし、、、。」
私が戻って来た時アーダさんは木に寄りかかって亡くなっていました。とても満足したような笑顔を浮かべながら。
私は一人パンを食べながら星を見ます。いつもより綺麗に見えるその場所でもう一度手を合わせます。アーダさんが生まれ変われるときは人間でありますようにと。
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