第9話 憧れた人に近づきたくて[後編]
さーて前回のおさらいをサラッとやっちゃうよー。
競争の国レイザーという国でトップレーサーだった。ライランさんの葬儀を行うために息子さんのシュテルさんのお宅に訪れました。そこでシュテルさんは今の気持ちをある人に伝えて欲しいと私に伝えました。私はホテルに泊まりゆっくりしながら向かうのでした。
私は朝早くある人の家に向かいます。カーズ選手の家です。カーズ選手はライランさんの事故で自分を攻めまくり更には世間から人殺しとか英雄を返せとか様々な暴言をいわれたそうです。
そのせいで心がやんでしまいました。今は家から出て来ないので生きているかも不明でそうです。私はシュテルさんの言葉を伝えにきたのですが、、、。絶対留守でしょう。いたとしても開けてくれなさそうです。
「ごめんくださーい。」
返事はしませんでした。無駄足でしたね。
「ジープさん。どうしましょう?待っているべきでしょうか?」
相変わらず独り言。なんだか悲しくなりました。笑い声が聞こえましたが気のせいでしょう。
しばらく待っていると小さな恐らく10歳くらいの女の子が出てきました。身体じゅうボロボロで黄色の目をしており綺麗だったであろう紫色の髪は薄汚く不衛生な生活を送っているのがすぐにわかる子でした。私はその子に話しかけます。
「あのここってカーズ選手のお宅で間違いないですか?」
すると女の子は何も言わずに家の中に去って行きました。ついて来いとでもいうように。
でも私は入っていいといわれるまで入るわけにはいきません。非常識でしょうから。
女の子は手招きをしていました。なんだついて来いであってた。
中に入るとまあゴミだらけ。この国の人たちは汚いものが好きなのかと疑うれべるです。
それはいいとして取り敢えず案内された部屋に向かいます。そこは小さな一つの部屋でした。そこにはカーズ選手は座っていました。死体で。
「これ、お父さん。」
「・・・。娘さんでしたか。」
「お父さんは私のヒーローだった。でもあのレースで事故を起こして自分を攻め続けた結果何も食べずに餓死した。」
「・・・。私は葬儀屋です。依頼さえ受ければ葬儀を行いますが?どうでしょうか?」
「どうせ誰も来ない。ライランを殺めてしまったから。みんなお父さんのことを叩く。私は人間が嫌い。叩く時だけ関係ない奴がでしゃばってくる。努力していても結果がついてこなければ褒めないどころか叩き始める。そんな人間が大っ嫌い。」
なんだか昔の私を見ているような気がしました。心の奥からこの世界が嫌いという目をしていたからです。その話はまたいつか語るとして、私は女の子の話を聞きます。
「ライランのことも嫌い。お父さんを奪ったから。」
「わかりました。私は葬儀屋です。シュテルさんの言葉を伝えることが今回の依頼です。お名前教えていただけますか?」
「メリア。」
「そうですか。ではメリアさん。お父様とシュテルさんの言葉を聞いてください。」
こうして私も語りだします。昨日の話の続きを。
「結果俺の親父は帰らぬ人となった。レーサーは一つのミスあ命取りになるということは親父だってわかっていた。妨害だぞ。許せないよ。この国の奴らが!」
「え?カーズ選手じゃないんですか?」
「俺たちはプロだ。命をかけてるとまではいかないが危険なことぐらいは重々承知だ。それなのに親父のことを憐れんでる。そんな中途半端な覚悟で仕事やってねえんだよ。ファンだろうと部外者が出しゃばんな!俺の尊敬する親父のことなめるな!レーサーなめるな!」
私に言われても、、、。でもおかしいですね。恨んでないんでしょうか?私なら恨む気がします。
「カーズ選手のこと恨んでないんですか?」
「だから言っただろ仕事だって。それに俺のヒーローは親父とカーズさんなんだ。二人の熱い勝負に心の底から震えあがったんだよ。だから自分を責めないでくれって。今度は俺と勝負してくれって。すぐにそっちに行くって。カーズさんに勝てれば親父を超えた証明にもなるだろ。だから葬儀屋さん。いやこれは個人の願いだからラディアさんと呼ぶべきかな。そうカーズさんに伝えてくれないかな?」
「わかりました。任せてください。」
「お辛い中話していただき誠にありがとうございました。」とね。
「そうシュテルさんはおっしゃっていましたよ。」
するとメリアさんの目に涙が浮かびます。遺族の方から許してもらえたのだからそれはそうでしょうね。そこからは早かったです。目から頬へとまるで流れ星のように流れます。
「私お父さんが憧れだった。ライランもかっこよかった。二人とも好きだった。」
「ええ。だから二人の走りを継ぐシュテルさんも好きになってください。」
メリアさんは涙をふき満面の笑顔でこう答えます。
「うん。」と。
取り敢えず二人で散らかった家を掃除しました。こういうのもいいですね。
こうして私はライランさんとカーズさんのお二人の葬儀を行うことになりました。身内だけで葬儀を行いました。まあこのシュテルさんとメリアの二人しかいませんけどね。
「ラディアさんありがとう。まさかカーズさんも亡くなってるとは思わなかったけど。」
「いいえ。御礼なんていりません。私にとっても仕事ですから。覚悟をもってやってるんですよ。」
「ラディアさん俺、生きる目標が無くなってしまったんだ。どうすればいいかな?」
シュテルさんは悲しそうな顔をしながらこう尋ねてきます。確かに目標にしていた2人がどっちもいなくなってしまったのですから戸惑いますよね。
私は答えます。
「知りません。」
相変わらずの空気の読めないやつだなと思った方挙手。後から私も思いました。
「え?」
「人生なんて一回しかないんですよ。普通は。ならばあらゆる選択肢を見てみるのもいいと思います。私の一番大好きな人が言っていました。
人生において大切なことは多くあります。例えば憲法だとか道徳とかですね。それらの基礎が書いてあるのは教科書です。しかし教科書にすべてのことは書いていません。なので作るんですよ自分だけの人生の教科書を。基礎だけでなく他の多くのことをまとめる。人生はその連続です。それを誰かに伝えても恥ずかしくない人生を送りなさい。そしてあなたなりの教科書を作ってみなさい、、、とね。だからあなたも自分の教科書を作ってみてください。新しい目標だって見つかるかもしれませんよ?」
私の割にはいいこと言ったのでは?まあ大半は私の言葉ではありませんが、、、。
「でも俺を応援してくれる人も多くいるんだ。その人たちを裏切りたくないんだ。」
「人生に見ず知らずの他人を優先する理由なんて何一つありませんよ。最終的には自分で決めるんですから。」
「・・・。そうか。わかった。取り敢えず色々なもの見て考えてそれから色々決めることにする。」
「いいと思いますよ。」
「シュテル。私も色んな物を見てみたい。」
後ろから声がしました。振り返るとメリアさんが立っていました。
「一緒に来てくれるのかい?」
するとメリアさんは恥ずかしそうに
「うん。」
とうなずきました。これはもしかして、、、。邪魔したら悪いですよね。
「私はこれくらいで失礼します。別の国であったときはなにか奢ってくださいね。さようなら。」
「ラディアさんも元気で。さようなら。」
「さようなら。家の掃除は定期的にしてくださいね。」
お二人とも仲が良くて何よりです。私はジープを走らせました。
「俺も葬儀屋になろうかな。」
「シュテルがやるなら、私もやりたい。」
「ああ。一緒に勉強しようか。いつかラディアさんにあった時には語れるくらいの教科書を作ってね。」
「うん。」
こうして二人は自分たちの家に戻っていくのでした。
国門をくぐり抜けた後に依頼料をもらい忘れたことに気が付きましたがまあいいでしょう。奢ってもらう約束しましたしね。ああまた仕事がありそうですね。私の教科書はどんどん大きくなっていってる気がします。いつか誰かに語るのが楽しみですね。誰に語っているのでしょうか。私は未来の楽しみなことを考えながらジープを走らせ次の国に向かうのでした。
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