第14話 告白スポット
俺は最近おちおちと教室で弁当が食べられなくなってきていた。
それというのも、篠崎の遊びの誘いをのらりくらりと躱していたら彼女は何を思ったのか放課後だけでなく昼休みもぐいぐいと俺に話しかけてくるようになったからだ。
彼女みたいなカースト上位の人間がド底辺の俺に声を掛けてくると、それはそれはとても目立つ。
話しかけられるたびにクラスの連中から訝し気な視線を向けられ、だんだんその視線が強くなるのを感じた俺はそれが嫌になって、弁当を食べる場所を変えようと食事できる場所を求めて学園内を探し歩いていた。
あとそういえば相田もなにかと話しかけてくるようになったな。
やはり神代の件で目をつけられたようだ。
今の所は特に害になるようなことは何も無いが、何か探りを入れてるような感じなので気を付けないといけない。
「…やっぱり校舎裏がいいか」
場所を探していると食べるのにちょうど良さそうな場所を見つけた。
校舎裏の非常階段近くは座るのにちょうどいい場所があったのでそこに腰掛けて弁当を食べる事にする。
今日はいい天気で日が当たるとポカポカして暖かい。
そう考えるとわざわざ教室から出てきて良かった…と思おう。
「………が…………で、…………………だろ。」
「………で…………なので…………です。」
「ん?」
弁当を食べて暫くすると、人の話し声が聞こえてくることに気が付いた。
どうやら人がいたらしい。
この非常階段付近はどうも死角になっていたようで人がいた事に気が付かなかった。
「なんで………だよ!……………だろ!!」
「やめて……さい!………………ですよ!」
「…はぁ」
気にせず食べていたのだが、途中からどうも荒げている声が聞こえてきて気になる。
なんか最近気になることに首を突っ込んでも良いことが無いので無視しようかと思ってしまったが、万一それで何かあってもそれはそれで嫌だなとも思い念のため声のする方へ行き様子を見ることにする。
「もう貴方と話をすることはありません!離してください!」
「この俺がこれだけ言ってるんだぞ!いいから俺と付き合えよ!」
「…」
見ると男子生徒が女子生徒の腕を掴んで詰め寄っていた。
どっちの生徒の顔も位置的に見えないが制服の襟の色を見る限り2年生のようだ。
…なんでこの学校はこう、アレな人が多いのだろう?
俺、絶対入る学校間違えたな。
まあ言っても仕方が無いのでちょっと離れた所から声を掛ける。
ついでに携帯で録音しておく事も忘れない。
「そこの人。女の子嫌がってますよ!やめてあげて貰えませんか?」
男は俺がいると思っていなかったのか驚いた様子だったが、制服の襟の色で俺が1年生だと気が付いたのか俺の事を睨んできた。
「おまえ、誰だよ?俺は今大事な話をしているんだが?」
この人、めっちゃ顔が怖いですか?
やばい、これ声かけたの失敗したかも…。
「いや、すみません。とりあえずちょっと腕が痛そうなので腕は放しましょう?ね?」
「…ちっ」
ちょっとヤバい人かもと思ったけど意外にも彼はすんなり腕を離す。
「おい、環奈。邪魔が入ったから今日はいい。また今度話そう」
「私はもう話すことはありません」
そう彼女に言うと男は俺の事を睨みつけながら男は去っていった。
…ヤバかったー!
今回は下手したら自殺行為だった。
やはりこう、何でもかんでも首突っ込んじゃだめだな!
次からはもう少し考えて行動しようと思いながら、女の子は大丈夫だろうかと彼女の顔を見るとその顔は見覚えのある顔だった。
「あ」
「あなたは…」
水城環奈。先週会った先輩だった。
水城先輩は少し困った顔をしながらお礼を言った。
「また助けて貰っちゃいましたね。村井君、ありがとうございます」
「いえ。たまたま居合わせただけですので。あんまり一人で人気のないところに行かないほうがいいですよ?」
「私もまさか彼があそこまで強引だとは思っていませんでしたので…」
彼女はクラスメイトに告白の為に呼び出されたらしい。
クラスでは少しナルシストだが紳士的な人だと思っていたのでこんな対応されるとは思ってもみなかったようだ。
水城先輩の話が終わると、先輩は不思議そうに俺に訪ねてきた。
「ところで村井君はどうしてこんなところに?」
「へっ?…たまたまですけど」
ボッチ飯の為にここに来ましたとわざわざ説明したく無かったので答えをぼかすと水城先輩は怒った表情を見せた。
「ここ、告白スポットなんですよ。たまにいるんですよね。のぞき見しようとして来る人が。貴方もその類ですか?」
「違います!」
結局、出歯亀に思われるよりはましだと思った俺はここに来た事情を説明した。
ボッチな事情を話すと先輩はみるみる顔色を変えてまた俺に謝ってきた。
この人、良く謝る人だな…。
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