第9話 見た目と中身

美化委員の活動がだるい。


朝は植物の水やり、昼休みはゴミ倉庫の管理、放課後は校内の清掃確認と面倒だ。

とはいえこの一週間を乗り切れば次仕事が回ってくるのは2か月後だ。

我慢だ、我慢。



…しかし、こいつは朝から何故こんなに元気なんだろう。

「ボッチ君!遅いよ!」

「別に遅くない。お前が早いだけだ」


神代は花壇の前で仁王立ちで俺を待っていた。既に準備万端といった感じである。


「マジでなんでそんなにやる気なの??」

「うち、お花好きだし」


理由になっているようで理由になっていない。


「ほら!しゃっきっとする!張り切っていくよ~!」

テンションが高すぎる…。


しかもそれだけではない。


「お水はお花に直接かけちゃ駄目!葉の下から流してやるのが常識!」

「…。」


「分別できてないごみを仕分けるのはうちらの仕事だよ!ボッチ君、適当に仕分けしすぎ!」

「……。」


放課後

「あ、まだゴミが落ちてるね。ボッチ君箒持ってきて」

「……………。」


真面目か!

見た目と中身が違すぎるぞ!

金髪ギャルの派手な見た目のわりに中身は小姑のようだ。


小姑に監視されながらの作業はとても気が滅入るがようやく今日の活動が終わった。


しかし何故か神代に睨まれる。

「ボッチ君、適当すぎ。明日からはちゃんとやってよね」


…嘘だろ?俺としてはかなり頑張ったと思うが。

「十分すぎるほどやってただろ。お前厳しすぎ!っていうか、いい加減ボッチ君呼びは止めろよ」

「ボッチ君こそお前って呼ぶの止めてよ?うざいんだけど」


「俺は意趣返しでお前呼びしてるんだよ。お前がボッチ呼びを止めたらやめてやるよ」

「あ、っそう」


どうも改める気は無さそうだ。

俺こいつに何かした??

何もしてないのにボッチ呼びは酷いだろ。

真面目ではあるがやっぱりこいつもクラスの連中と同じような精神構造をしているらしい。


「しかし、お前なんでそんな頑張るんだ?適度にすればいいだろ」


神代は俺の言葉に心底信じられないという顔をする。

「なんで?皆奇麗なほうが喜ぶでしょ?うちが頑張った分だけみんなが喜んでくれるから、うち出来る限り頑張りたい」

そういってにこやかに笑顔を浮かべる。


凄いな。これマジで言っているぞ。もうこれは俺と違う人種だわ。

「そ、立派だな。俺は無理だな、そんな自己犠牲の精神は持ってないし。俺は自分が良ければそれでいいや」


神代の顔が軽蔑の色に染まる。

「…そんなんだからボッチ君なんだよ」


神代は鞄を抱えるとそのままこちらを見ずに話を切り上げた。

「うち、この後副委員長と企画の打ち合わせがあるから行くね。ボッチ君の最低な考えはわかったけど、やることはちゃんとやってよね」


…まだ働くのかよ。


さっきの発言でさらに嫌われたようだし、仕事もだるい。

あーあ。嫌な一週間になりそうだ。

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