第4話 満員電車(彩香視点)

-彩香視点-


自分で言うのもなんだけど、私は相当モテる。

町を歩けば大抵の男性は振り向くし、今でも毎週男子に告白される。


好意を向けてもらえることは素直に嬉しいと思う。

けれど告白されてもあまりピンとこない。

この人と一緒にいれば幸せ!というイメージが湧かないのだ。

なので、お付き合いにまで発展したことは無い。

いい恋はしたいけど、私にはまだ早いのかもしれない。


「今日のラッキーアイテムは…黒縁眼鏡?」


日課の朝の占いを見終わるといつもよりも少し早く家を出る。

今日は日直だ。


少し早く家を出ると景色が変わり、遭遇する人が変わるのでとても新鮮だ。

いつもは見ないランニングするおばさん。集団登校する小学生。

そして、ボッチなクラスメイト。


…確か、村山?いや、そう村田君。村田君もこっち方面だったんだ。

電車の時間が違うので今まで会わなかったようだ。


私に向かって一瞬会釈したようにも見えたが気のせいだろう。

彼は私の事が見えないようにスーっと私の横を通り過ぎて行った。


挨拶をしたほうがいいかとも思ったが、わざわざ声を掛ける関係でもない。

相手も気が付かなかったようなので、通学時間はニュースを見て過ごすことにした。


電車が動き出す。


…。


…。


……あれ?


………気のせい?


…………気のせいだよね。


……………。


………………気のせいじゃ、ない。


触られている。お尻を。


最初はスカート越しに。

じわじわと撫でまわされている。


声を上げようと思ったが、声が出なかった。

怖い。怖いよ!


誰か、誰か助けて!

声が出ない。

誰も気が付いてくれない。


誰か!

近くの人と目が合うも、逸らされる。気が付いてもらえない。


スカート越しにだった手がスカートの中に伸びていく。


誰か!!

必死に周囲を見回す。必死に周囲を見ると彼と目が合った。


助けて!村田君!


伝わらないかもしれない。また目が逸らされてしまうかもしれない。

そう思ったが杞憂だった。


彼はじっと私の事を見つめるとコクリとうなづき、人波をかき分けて私の近くまで来てくれた。

そしていとも簡単に私の事を救い出してくれた。


「この人痴漢です!」


彼が大声を上げた時に気が付いた。


村田君。黒縁眼鏡だ。

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