第2話 満員電車

今日も気が重いながら元気に登校だ。

クラスメイトと会いたくない俺は比較的早い電車で通学している。


…いるのだが、今日は電車に乗るとその会いたくないクラスメイトがいた。


篠崎彩香。


容姿端麗、成績優秀でカースト上位に位置する人物だ。

俺とは全く縁の無い人物である。


そんな彼女とふと目が合ってしまう。

俺は一応会釈をしてみるものの彼女はさっと目をそらすとスマホをいじり出した。



…挨拶もないんかい!


と、いう俺ではない。もう誰にも期待しない事にしたのだから。

俺はスマホを見ている彼女の前を通り過ぎ吊り革を掴む。



電車通学は高校になってから始めたのだが、これが俺にとって地味につらい。

というのも俺の乗った次の駅で混み始めるからだ。人混みは苦手だ。



(それにしても今日は混みすぎだ…)

ぎゅうぎゅうになって身動きも取れない。

視線の先も観たくもないクラスメイトに固定されてしまう。

しかし、そこでふと気づく。


…なんか様子がおかしくないか?


篠崎の顔が凄いこわばっている。さっきまで弄っていたスマホももう弄っていない。

落ち着きなく周りを見回している。


そして、また俺と目が合う。


さっき目が合ったときに逸らされた目は今度は逸らされなかった。

その表情は明らかに俺に助けを求めていた。

さっき無視したクラスメイトに対して都合がいいな。とは思う。

けど、今それは些細な事だろう。


俺はわかったと篠崎に向かってうなづくと無理やり人を割って篠崎に近づく。

篠崎の横まで割って入れば、彼女のお尻を触っている中年の男の手が見えた。


やっぱりか。

その手をつかみ取ると俺は電車の中で大声を上げた。


「この人痴漢です!」

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