第2話 加奈の策略

俺は部室から飛び出した紗菜を追いかけようとしたが、つまづいて転んでしまった。

俺はいつもいつも鈍臭い。自分で自分が嫌になる。

部室を出て紗菜を探そうとしたが、姿を見付ける事ができなかった。

結局その日は紗菜に謝る事は出来ずに帰宅し、眠れず朝になった。

“学校に行きたくない。”

眠くて、瞼が腫れぼったい目をしている。

教室で紗菜にあったら、どんな顔すればいいんだ?

でも、“ちゃんと謝ろう”と心に決めて学校に向かう。

俺が教室に入るなり、クラスメイトの柿本加奈が突っかかってきた。

「あなたねえ?昨日、紗菜にエッチな事して泣かせたでしょう?」

「加奈なんでそれを・・・」

「部室の外で泣いてる紗菜と合ったのよ!なんでそんな事をしたのよ?」

「あぁ〜、つい・・・」

「つい?ツイでそんな事して許されると思ってるわけ?」

俺はみんなが見てる前で紗菜に土下座して謝った。

みんなの蔑む様な視線が痛かった。

紗菜は「もう、大丈夫だから・・・ もう、終わりにして!」と言ってくれたが・・・

加奈は「一応、先生には報告しとくから!」と冷たく言い放った。


放課後、俺は紗菜と一緒に職員室に呼び出された。

担任から「青木、いったい何やらかしたんだ?」と問い詰められ、昨日の事を説明しようとしたら・・・

先に紗菜がしゃべりはじめた。

「昨日部室で、青木君にキスされたんです。」

「でもそれは・・・私が高い場所に保管されてる用具を取ろうとしたら、ふらついて台から落ちちゃて・・・その時青木君が私をかばってくれて、だからそれは不可抗力なんです。」

「私、初めてだったから動揺しちゃて・・・」


担任は分かったと言う様に話しを遮った。

「まあ〜 不可抗力なら仕方ないでしょう。」

「でも、二人だけで部室に居るから怪しまれるんだ!」

「青木は一週間の部活禁止だ。」

「もう暗くなってきたし、帰ってよし!」

担任は面倒くさそうにその場から去っていった。


下校途中、校門を出てすぐのところで紗菜に追いつく事ができた。

「さっきは庇ってくれてありがとう。」


紗菜はうつむいて少し考えるような仕草で話しだした。

「いいのよ! 謝らなきゃいけないのは私の方だし・・・」


「えっ?俺が一方的に悪いだろ?」


「違うの!私・・・ 私、加奈に“青木君に告白してこい”って命令されたの。」


「えっ?加奈がなんでそんな事を?」


「加奈は悟と付き合ってるの。悟は青木君とバスケでレギュラー争いしてるでしょ・・・加奈は悟にレギュラーになって欲しかったらしくて・・・」


「紗菜・・・ そんなこと俺に話したら紗菜もきっとハブられるぞ。わざわざ俺に話してくれてありがとう。でも、ハブられるのは俺だけにしてくれないか?」


「えっ?なんで?」


「嘘でも、告白されて嬉しかったから・・ それに俺は勉強にうちこんで、上のランクの大学目指そうと今、決めたんだ!」

「紗菜は今まで通りでいいんだよ。」

紗菜は首を横に振るが・・・

「紗菜に嫌われて無いみたいだから、それだけで嬉しいよ。」

「だからさ紗菜、俺の分まで幸せになってね! それじゃ〜」

紗菜と別れ、俺はボッチの高校生活をおくる覚悟を決めた。

今、俺は自分自身に呪縛をかけたのかもしれない。

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