【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第903話 宝箱を見つければ後は私がなんとかする
後日譚9章 大家さん、日本をモデル国にする
第903話 宝箱を見つければ後は私がなんとかする
涼子と智仁が生き返った3日後、2人は藍大にお願いしていた。
「藍大~、母さんもテイマー系冒険者になりたい~」
「藍大、父さんもテイマー系冒険者になれるならなりたい」
「超人に覚醒してるならまだしも、一般人の2人が冒険者になる手段は現状では確立されてない」
「現状ではってことは可能性があるのね?」
「その手段とやらを確立しちゃいなよ」
藍大の発言に素早く反応するあたり、2人は本当にテイマー系冒険者に覚醒したいらしい。
「なんでなりたいの? 今のところ、2人がテイマー系冒険者になる理由はないだろ?」
「私もリル君みたいなカッコ良くて可愛い従魔が欲しいの」
「息子と孫がテイマー系冒険者なんだぞ? 父さん達だけ一般人だなんて仲間外れで悲しいじゃんか」
涼子は甘えるリルと藍大のやり取りを見て、自分もリルみたいな従魔が欲しくなった。
その一方、智仁は藍大と優月、咲夜がテイマー系冒険者ならば自分だって同系統の
藍大が涼子と智仁にせがまれていると、藍大の膝の上を占有していたリルが自分の意見を口にする。
『ご主人、仲間外れは良くないよ。できるかどうかわからないけど、完全版の羽化の丸薬を探してみない?』
「「さすリル!」」
援護射撃してくれたリルに対し、涼子と智仁の目には感謝の念が強く出ていた。
羽化の丸薬は旧C国が副作用のある未完成品を創り出した後、CN国が調教士になれる羽化の丸薬作成の研究を行っているだけだ。
日本では羽化の丸薬の作成自体は禁止されていないけれど、冒険者は自分達の優位性をわざわざ捨てたいと思わないのでその研究にとりかかろうとする者は表立って見受けられない。
どうしたものかと考えている所にサクラがやって来る。
「話は聞かせてもらった」
「サクラさんや、一体どうする気だい?」
「宝箱を見つければ後は私がなんとかする」
「「サクラさんマジかっけー」」
サクラの堂々とした回答に涼子と智仁は思わず惚れそうになった。
そのすぐ近くでは完全武装のままブラドを抱っこした舞が待機していた。
「藍大~、ブラドがシャングリラダンジョンの地下20階を増築したから探索しに行こ~」
「騎士の奥方、感謝の気持ちはわかったから解放してほしいのだ」
(舞が完成を急かしてブラドが頑張って増築したってことか。ブラド、すまんな)
舞とブラドの表情から状況を理解し、藍大はブラドに感謝の気持ちと申し訳なく思う気持ちの両方抱いた。
それでも、藍大もシャングリラダンジョンの地下20階の完成を楽しみにしていたため、その探索のついでに宝箱を見つけに行くことにした。
藍大に同行するのは舞とサクラ、リル、ゲンのいつものメンバーだ。
仲良しトリオは子供達と遊んでおり、パンドラはミオとフィアに捕まっていたのでメンバー変更せずに移動した。
シャングリラダンジョン地下20階は森の中の古代都市と呼ぶべきダンジョンだった。
「幻想的だな」
「綺麗だよね~。前にも言ったけど旅行してる気分になるよ~」
「ブラドのくせに生意気」
『サクラ、素直にブラドを褒めてあげようよ』
地下20階の内装を見てサクラは素直になれないから、リルがやんわりとブラドを労ってあげたらどうかと言った。
どうやらリルは舞に急かされたブラドに同情的らしい。
「ブモォォォォォ!」
その時、藍大達の遥か前方から猪の咆哮が聞こえた。
視界の先にはそこそこ距離があるはずなのに、はっきりと姿が見えるぐらいには大きい。
それはつまり、接近したらかなり大きな猪であることを意味する。
「セーフリームニルLv100。嘘か真かその肉は北欧の神々が大喜びで食べるそうだ。ちなみに
「狩るぜぇ。どんどん狩るぜぇ」
『フェンリルとして食べない訳にはいかないよね!』
食いしん坊ズはすぐさま騎乗戦闘モードに入り、突撃を仕掛けて来るセーフリームニルを迎え撃つ。
「肉ぅぅぅ!」
(オラオラですらない!?)
戦闘モードの舞はオラァとかゴラァとか言いながらミョルニルをフルスイングするか、投擲して敵を攻撃する。
ところが、今回に関して言えばセーフリームニルの味に期待し過ぎて肉と叫んでしまっている。
トールの血を引くなら本能的にセーフリームニルの肉の味を知っており、頭の中が肉でいっぱいなのかもしれない。
セーフリームニルは舞に殴り飛ばされて空を飛び、リルに<
流れるような連携で冷凍保存まで済ませてしまうのは食いしん坊ズの気持ちが合わさったおかげだろう。
戦利品回収を済ませて先に進むと、街並みにそぐわないサイズのセーフリームニルが何度か藍大達を襲撃した。
それらはあっさりと舞とリルによって冷凍保存され、サクラは少し暇そうにしていた。
「舞とリルが張り切り過ぎて私の出番がない」
『良いこと』
サクラにとってそれが不満だとしても、ゲンにとってはむしろ喜ぶべきことなので彼にしてはレスポンスが速かった。
「まあまあ。サクラの出番はきっと来るさ。ブラドが食いしん坊ズだけ活躍させるようなフロアを設計するとは思えないし」
「確かに」
”ダンジョンキング”のブラドがそんな単調にクリアできるフロアを用意するはずないだろうと藍大が言えば、サクラはそれもそうだと思って機嫌を直した。
これまでは少し進めばセーフリームニルが現れたのだが、突然ぱったりとセーフリームニルが現れなくなった。
次の
「なんだ?」
「地面の中から何か出て来るよ」
熔けた地面から巨大なマグマで構成される像が現れ、藍大達に対してポーズを決めてみせる。
(いや、どろどろのマグマの像がポーズをしてもわからんからね?)
藍大は敵モンスターが何かポーズを取ったらしいことを理解したけれど、それがなんのポーズなのかわからず首を傾げた。
その感覚はサクラも同じだった。
「わかるようにポーズを取りなさい」
と言いつつ<
登場時に地面を熔かして溶岩が出るなんて今までに遭遇したどのモンスターとも違うと言えよう。
「トラルテクトリも一瞬かぁ。
「主、トラルテクトリにはどんな使い道があるの?」
「エネルギー資源関連の研究に役立ちそうだが、俺達はその研究をしないからおそらくDMUの職人班行きになるね」
「茂が喜んでくれるね」
「そうだな。変な要素も含まれてないだろうから安心して発表できるぞ」
藍大はサクラの言う通りだと頷き、サクラもきっとそうなると自信を持っていた。
トラルテクトリの回収を済ませた後、藍大達はトラルテクトリが現れた地面の中について見てみた。
「所々に鉱石らしきものは見えるね。これも持ち帰った方が良いよな」
「私に任せて」
サクラが<
「こっちの石は装備の強化や装飾品の更新に使う普通の石。こっちの石はドライザーに渡せば何か作ってくれそうだから録画した」
サクラの透明な腕による回収が終わった後、藍大は熔けた地面を見て気になる物を見つけた。
「リル、穴の中にカモフラージュされてるけどスイッチがあるように見える。俺の気のせいか?」
『あるね。隠し部屋とかのギミックがあるってわかるよ。押してみるね』
リルは<
その直後、トラルテクトリが現れた穴が音を立てながら埋められていった。
代わりに藍大達の目の前にユーザーインターフェースのルーレットが表示された。
『ご主人、おみくじルーレットだって』
「そうらしいな。サクラがいれば大吉間違いなしだ」
おみくじルーレットとは六等分されたマスに大吉、中吉、小吉、末吉、凶、大凶が割り振られており、それぞれ止まったマスに指定された事が起きる。
サクラがこのルーレットを回せば、当然のことながら大吉が出た。
それにより、宝箱とそれを守るようにモンスターが現れた。
(俺達が大吉を出すことはブラドもお見通しだから、モンスター付きで宝箱が出た訳か)
藍大はブラドがせめてもの足掻きとして守護モンスターを用意したのだろうと苦笑した。
その宝箱の守護モンスターだが、ブラドの色違いに見えるぬいぐるみのドラゴンだった。
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