第839話 問題です。次の文章の○○の部分を答えて下さい

 第一種目はモフモフ衰弱だ。


 審査員がクイズを出し、早押しで正解したモフモフ従魔がカードを2枚捲る。


 そのカードに描かれたモフモフモンスターの絵柄が一致した場合、そのモンスターの種族名を答えて正解したらポイントが加算されてカードを連続して捲れる。


 種族名を間違えたらカードは元の場所に戻され、次の審査員のクイズに移る。


 カードの枚数は100枚あるため、この種目の最大得点は50ペア当てて50点という考え方だ。


 だが、50ペア捲り切るまで続ける時間もないので、第一種目には30分の制限時間が儲けられている。


 全てのカードを獲得するか、制限時間が過ぎたらモフモフ衰弱は終了する。


「早速、審査員長のペアから質問を出してもらうぜ! 魔神様&リル様ペア、第1問の出題よろしくぅ!」


『僕からの問題だよ。現在知られてるワイバーン派生種で最も美味しいとされるモンスターの種族名はなんでしょう?』


 最初の問題はリルから出した。


 ワイバーンはお肉。


 これは”楽園の守り人”だけではなくそこそこの実力がある冒険者にとっては常識になっている。


 ところが、そのワイバーンの中にも様々な種類がいて、どのワイバーン肉が美味しいか完全に把握している者は限られている。


 この問題に答えられる者はいるだろうかと藍大とリルが見守っていたところ、真っ先に挙手したのはマロンだった。


『マロン、答えをどうぞ』


 リルに指名されたマロンは用意されていたホワイトボードにワイバハムートと書いた。


『正解! 答えはワイバハムートだね!』


「チュ~♪」


 (食べ物だからマロンの得意ジャンルだったってことか)


 結衣によくやったと褒められるマロンを見て、藍大はマロンが真っ先に答えられた理由に納得した。


 食いしん坊なマロンならば、”楽園の守り人”のホームページの過去の投稿で美味しそうなモンスター食材はしっかり勉強していてもおかしくないのだ。


「正解したマロンにはカードを引いてもらうぜ!」


「チュウ!」


 モフリー武田に言われてマロンは目を細めてカードを見比べる。


 鑑定系のアビリティは禁止されていないが、マロンはその類のアビリティを保有していない。


 それゆえ、目を細めているのも凝視すればカードの絵を透視できるのではと淡い期待をしてのことだ。


 結局透視はできなかったので、マロンは直感で2枚のカードを連続で捲った。


 運が良いことに、それらにはマロンと全く見た目の同じ絵が描かれていた。


「さあ、マロン! 答えてくれ!」


 マロンはホワイトボードにプリースリスと書いて提示する。


「正解! ビギナーズラックか!? 良い勘してるじゃねえか!」


「チュッチュッチュ~♪」


 モフリー武田に褒められてマロンはドヤ顔になった。


 正解したことにより、マロンは更に2枚捲ったけれど次は別々の絵だったため元の場所に戻した。


 次は真奈&ガルフペアが出題する番だ。


「開始早々マロンが1ペア成立! モフ神様&ガルフさんペア、第2問の出題よろしくぅ!」


『選択問題です。モフリパークとモフランドにおいて主人の従魔は何体いるでしょう? ①324体 ②444体 ③525体』


 (①でも数が多過ぎるんだよなぁ)


 ガルフが出題した問題を聞いて藍大は心の中で苦笑した。


 リルに至っては藍大の膝の上で天敵に捕まった同胞が多いことに怯えて震えている。


 この問題に真っ先に挙手したのは共同経営者リーアムの従魔であるニンジャだった。


『ニンジャ、早かったね。答えて良いよ』


 ガルフに促されてニンジャは1と書かれたホワイトボードを掲げた。


『正解。ちなみに、この答えの根拠はモフランドやモフリパークのホームページに載ってるので、興味のあるモフラーは見てね。・・・これで良い?』


「流石ガルフ! よ~しよしよしよし!」


「クゥ~ン・・・」


 ガルフの出題ががっつり宣伝だったのは真奈の仕込みだったようだ。


 満面の笑みの真奈にモフられてガルフの尻尾はペタンと下がっている。


 生放送だろうとなんだろうと問答無用でモフる真奈は相変わらずブレない。


「さて、正解したニンジャにはカードを引いてもらうぜ!」


「プゥ」


 モフリー武田に言われてニンジャがパパッとカードを選んで捲ってみたけれど、両方とも別々の絵が描かれていた。


「残念! 吉田さん、第3問の出題よろしくぅ!」


「問題です。次の文章の○○の部分を答えて下さい。国境の長い○○を抜けると雪国であった」


「アカデミック! アカデミックな問題が出ました! さぁ、真っ先に挙手したのは意外や意外! カームだぁ!」


 マイペースなカームが早押しで勝てるとは誰も思っていなかったのだが、その予想を裏切ってカームが真っ先にを挙げた。


 カームが手持ちのホワイトボードにトンネルと書いて掲げると、志保はニッコリと笑って頷く。


「カームさん、正解です。女優さんだと文学作品にもお詳しいようですね」


 志保に女優扱いされてカームはドヤ顔になった。


 そのままカームはモフリー武田に促されてカードを捲る。


 1枚目がミオと同じ二足歩行の猫又であり、これはニンジャが先程引き当てた絵のカードと同じ種類だった。


 それゆえ、確信を持ってカームはニンジャが捲ったカードを選んでペアを成立させた。


「正解! 運と記憶の勝利! さあ、絵のモンスターの種族名を答えてくれ!」


 カームはホワイトボードにケット・シーと書いて提示する。


「お見事! カームがマロンに並んだぁ! 勝負はまだまだこれからだぜ!」


 ドヤ顔が止まらないカームが次に引いた2枚はいずれも今日初めてのモンスターだったので、出題者が志保から藍大とリルに変わった。


「問題です。モンスター素材を放り込み、その素材の量と質に応じてレアなモンスターを召喚するダンジョンのギミックの名前はなんでしょう?」


 藍大の質問を聞いた直後、ヴィオラとダニエルの挙手対決になった。


「ヤバい。常人の俺の目には同時に見えちまった。リル様、どっちが早かった?」


『ヴィオラの方が僅かに速かったよ』


「ビデオ判定よりも正確なリル様が言うならそうだよな! ということでヴィオラに答えてもらうぜ!」


 モフリー武田の言い分に異を唱える者はいなかった。


 何故なら、リルは世界一速く動ける存在であり、自分よりも遅い動きの物をしっかりと目で追えるからだ。


 ついでに言えば、この大会はMOF-1グランプリなので機械よりも精密ならモフモフ従魔の方が尊重される。


 ヴィオラは<大賢者マーリン>の効果で話せるから、ホワイトボードに頼らず回答する。


『リサイクルベース』


「正解です」


「CN国のダンジョンを踏破して来たヴィオラはギミックについても明るかった! さあ、カードを捲ってくれ!」


 1枚目がリルやガルフと同じ白銀の狼であり、これはマロンが二度目に引き当てた絵のカードの片方と同じ種類だった。


「ヴィオラ、答えをどうぞ!」


『フェンリル』


「正解! リル様やガルフと同じフェンリルだ!」


『ヴィオラ、よくやった! リルやガルフのカードを引き当てるなんてお前は最高だ!』


 シンシアがヴィオラに熱烈なハグをしたのを見て、リルもガルフもなんとも言えない表情になっていた。


 自分達の種族のアピールができるのは嬉しいけれど、そのアピールのきっかけが天敵だと思うとそうなるのも無理もない。


 ヴィオラはシンシアから離れてカードを捲ったが、二度目に引き当てたカードはそれぞれ別だったことでヴィオラのターンは終了した。


 その後、どの従魔もどうにか最低1ペア確保できたが、まだまだカードはなくならずに制限時間が残り僅かとなった。


「次が最後の質問だぁ! 吉田さん、出題よろしくぅ!」


「問題です。DMUに所属するジミ・リンこと等々力沙耶が鱗操士に転職する前の職業技能ジョブスキルはなんでしょう?」


 志保が問題を出してから数秒の間、誰も答えることができずに会場ではBGMの音だけが響いた。


 (これはお題ミスじゃね?)


 藍大は答えを覚えていたけれど、参加しているモフモフ従魔達がそれを覚えているかは怪しい。


 しかし、30秒が経過したところでカームが挙手したことで場面が動いた。


「カームが動いた! に屈せず立ち上がったのはカームだ! 答えておくれ!」


 カームは悩んだ素振りを見せてから、盾士と書かれたホワイトボードを提示した。


「素晴らしい! 正解です!」


「よくやったカーム! 記憶力がすごいぞカーム! そのままカードを捲ってくれ!」


 カームは志保とモフリー武田に褒められて気分を良くしたまま自分そっくりな絵が描かれたカードを2枚捲った。


 そして、人の姿に変身してキリッとした表情で口を開く。


「種族名はモフトリス」


「決まったぁ! カームが単独トップに躍り出た! ここでタイムアップのブザーが鳴る!」


 ブザーが鳴ったため、会場内のスクリーンにそれぞれのモフモフ従魔達の得点が表示される。


 カームが3点、ダニエルとマロン、ニンジャ、ヴィオラが2点、マーレとエンリ、フォクシーが1点であり、モフリー武田の言う通りでカームが第一種目を終えて1位になった。

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