第837話 リピートアフターミー
MOF-1グランプリが始まって早々に今大会のルールについて、モフリー武田がカメラ目線で説明し始める。
・勝負する種目は賢さと身体能力、モフモフアピールの3つ
・出場する従魔は事前に藍大(従魔士)とリルにドーピング検査される
・出場する主人と従魔は執拗に他の参加者の従魔への脅しや妨害行為を禁止する
・第一種目と第二種目は今までの大会とは異なる点数加算が行われる
・第三種目のみ審査員1人あたりの持ち点は5点の合計15点満点で評価する
以上5つのルールに則ってMOF-1グランプリは運営される。
今大会の全ての種目に変更があることは、藍大達の会議で行う種目が見直された後すぐに公表された。
それもあって全ての参加するペアは驚いたりしなかった。
観客達もMOF-1グランプリの公式サイトやCMを見て予習済みのため、参加者同様に驚く者はいない。
それだけモフモフに対する熱意が強いと言える。
「ルールの説明は以上だ! さて、今度は出場者達のコメントを貰うぜ! エントリーナンバー順によろしくぅ!」
モフリー武田に言われて理人が口を開く。
「モフモン大好きクラブの会長として、恥ずかしい戦いはできません。私が仕上げたマーレの応援をよろしくお願いいたします」
「プォ~」
「「「・・・「「うぉぉぉぉぉ! 可愛いぞマーレェェェェェ!」」・・・」」」
理人のコメントの後にマーレが鰭を振ると会場内が沸いた。
マーレの愛らしさにやられたようだ。
モフリー武田にとってもマーレは愛くるしく見えたらしく、うっかり頬が緩んだまま固まってしまった。
「オホン、失礼。愛くるしいじゃねえかよ、おい。次のペア、よろしくぅ!」
それでもすぐに自分の役割を果たすのだから仕事人である。
「今日のためにダニエルと共に特訓してきました。皆様、ダニエルに応援で力を送って下さい」
『頑張るよ』
重治とダニエルがハイテンションにコメントすることはないのは百も承知だから、観客達は優しい笑みを浮かべながら拍手してエールを送った。
「特訓の成果に期待だぜ。次のペア、よろしくぅ!」
「リピートアフターミー。可愛いと言ったらマロン。マロンと言ったら可愛い」
「チュ~チュチュチュ~チュ~。チュ~チュチュチュ~チュ~」
結衣の後に繰り返すマロンの姿を見て、観客達はリピートするのはマロンじゃなくて自分達だろうと心の中でツッコんだ。
口にしなかったのは繰り返すマロンが可愛くて悶えていたからである。
「あざと可愛いじゃねえの。次のペア、よろしくぅ!」
「前々回が3位で前回が準優勝。この勢いでカームは今回優勝します。ね、カーム?」
「・・・ピヨ?」
あっ、聞いてなかったと言わんばかりにカームは鳴いた。
このマイペースに見える仕草も当然カームの演技なのだが、会場内はカームのマイペースっぷりにすっかり騙されてカームの術中にすっかり嵌ってしまった。
「もう、カームったら仕方ないわね」
「カームさん流石っす」
「これこそがカーム。わかってるね」
まったくカームは仕方ないなという優しい視線を集め、カームは心の中で計画通りだと不敵に笑う。
「マイペース! だがそれが良い! 次のペア、よろしくぅ!」
「絶対に僕達が優勝するんでよろしくぅ!」
「プゥ♡」
リーアムはやはり今回もモフリー武田の口振りを真似て応じる。
ニンジャはいつも通りにリーアムにぴったりくっついており、よく言ってくれたとリーアムの頬に感謝のキスをした。
「ニンジャが雌の顔になるのは知ってた! 次のペア、よろしくぅ!」
「北都府に優勝トロフィーを持って帰ります!」
「この大会で準優勝以上の結果を出せば、マスターは結婚してくれると言った。でも、私は優勝してマスターにプロポーズすると言い返した。だからみんな、応援お願い」
エンリがとんでもないことを喋った直後、会場内が大騒ぎになった。
「ムッツリーニてめぇぇぇぇぇぇ!」
「エンリちゃんが人化するのは知ってんだぞゴラァ!」
「フラグ立てんじゃねえよむっつり! エンリちゃんと結婚したくねえのかよ!?」
「エンリちゃん頑張れぇぇぇ!」
「天門さんに非難集中! エンリちゃんは応援したいが天門さんは応援したくないという会場の空気がビシビシ伝わって来るぜ! 次のペア、よろしくぅ!」
モフリー武田は会場の総意を簡潔に実況した後、ルーカスとフォクシーにバトンタッチした。
『モフモフに身を包んだモフラーがモフモフと一緒にいればモフモフ2倍。その恐ろしさをお見せしよう』
「コン!」
フワンの着ぐるみパーカーを着たルーカスが自分をモフモフカウントしたことで、会場内のモフラー達が戦慄した。
しょぼいクオリティならばそれは認めないと言い出す者がいたかもしれないが、ルーカスの着ているパーカーはかなりモフ度が高い。
それがわからないモフラー達ではないので、あいつはできる奴だとモフラー達が戦慄した訳である。
(何言ってんだあの人は?)
『ご主人、ヤバい人の考えることなんてわからない方が良いよ』
藍大は審査員長の席でルーカスの発言の意味がわからず苦笑していた。
それを見てリルは危険なモフラーと同じ思考ができるようになってはいけないので、藍大に頬擦りして注意を自分に向けさせた。
膝の上にいるリルが甘えているため、藍大はルーカスのことを思考の外に放り出してリルの頭を撫でた。
「よくわからねえがモフモフは最強ってことだな! 最後のペア、よろしくぅ!」
流石にモフリー武田もルーカスの言っている意味を理解できず、雑にまとめてから最後のペアにコメントを求めた。
『真奈の次は私達が優勝する! これは決定事項だ!』
『モフモフ王国NO.1のモフ力を見せてあげるわ!』
(あれがCN国NO.1モフモフなのか。なるほど)
シンシアとヴィオラの自信満々な発言を聞きながら、藍大はヴィオラがCN国で最も人気のあるモフモフだという情報を事前に知らされていたのを思い出した。
そして、そのCN国NO.1がどの程度の実力なのかモンスター図鑑で確認し始める。
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名前:ヴィオラ 種族:カーバンクリオン
性別:雌 Lv:100
-----------------------------------------
HP:2,500/2,500
MP:3,000/3,000
STR:2,500
VIT:2,500
DEX:2,500
AGI:2,500
INT:2,500
LUK:2,500
-----------------------------------------
称号:シンシアの従魔
希少種
英雄
二つ名:CN国のモフマドンナ
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:私がモフモフ界のNO.1よ!
-----------------------------------------
(リルを前にしてNO.1を語るとは大した自信じゃないか)
藍大はヴィオラのステータスを見て、ヴィオラが殴りヒーラーであることに驚いた。
しかし、その驚きはヴィオラの備考欄を見たことで興味に変わった。
リルがいるこの場で自分がモフモフ界のNO.1だと思えるヴィオラの思考に興味が湧いたのだ。
また、自分がリルと一緒に今回のMOF-1グランプリに出られたならば、ヴィオラにモフモフ界のNO.1がリルであるとわからせてやるのにとも思った。
藍大は自分の育てた従魔に自信があるから、他のどんな従魔にも自分の従魔が勝てるという自負がある。
第一種目と第二種目のテストプレイ結果はモフリー武田から発表される予定なので、そこで発表されるリルの実力とヴィオラの挑んだ結果で勝負だと藍大は心の中で思った。
会場が騒がしくなってもモフリー武田が一向に構わないと言わんばかりにニヤリと笑う。
「面白くなって来たぜ! さて、今回のMOF-1グランプリは優勝者予想企画がある! 会場の観客もテレビの前の視聴者も優勝者を予想してくれよな! 会場の観客と視聴者でそれぞれ5人ずつ予想を的中させた人に番組からプレゼントがあるぜ!」
優勝者予想企画も今回初めての試みであり、プレゼントが手に入ると聞いて観客達はそのままモフリー武田の説明を聞いた。
観客達は配られたカード、視聴者はテレビ画面の端に移るQRコードを読み込んでMOF-1グランプリ優勝者予想企画のページから投票する。
そのサイト上で優勝者が決まった時点で観客と視聴者を5名ずつ抽選で選び、プレゼントを貰える者が決まるのだ。
「さあ、第一種目から始めようか!」
説明と投票の時間が終わり、モフリー武田が向けた手の先でスクリーンには第一種目のモフモフ衰弱の文字が表示された。
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