【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第759話 優月君も国際社会デビューする時が来たか
第64章 大家さん、テイマーサミットを開く
第759話 優月君も国際社会デビューする時が来たか
4月14日の月曜日、藍大と茂、志保はWeb会議の予定が入っていた。
藍大は膝の上に小さくなったリルを乗せてノートパソコンの前に座っている。
ミーティングルームに入った時には既に志保と茂が待機していた。
前回と違うのは志保の膝の上にケルヴィンのぬいぐるみがあることだろう。
「おはようございます。今日はケルヴィンのぬいぐるみも一緒なんですね」
『本当はアルルちゃんを出張してもらいたかったんですが、今日は朝からモフランドのイベントで来れないそうなんです。なのでケルヴィンのぬいぐるみを代わりに持って来ました』
『エアーモフモフされるよりはマシだから持っといてもらうことにしたんだ』
画面に映る茂の表情はまだ朝だというのに若干の疲れが感じられた。
アルルの手配が難しいからケルヴィンのぬいぐるみを代わりにしてくれと頼むのにひと悶着あったようだ。
藍大は心の中で茂にお疲れと言っておいた。
「さて、今日は1週間後に行われるテイマーサミットの打ち合わせな訳ですが、サミットの2日間は国際会議で使う大会議室と訓練室を借りられるってことで良いですか?」
『ご認識の通りです。21日と22日はどちらも貸し切りにしておりますのでご安心下さい』
テイマーサミットとは世界のテイマー系冒険者が集まって議論や模擬戦等を行うイベントだ。
国内にいるテイマー冒険者と海外にいる藍大の教え子達がやりたいと言い出し、藍大に開いてほしいと頼んだのが開催のきっかけである。
国内にいるテイマーだけであれば、真奈が声をかけて集めることもできなくはない。
しかし、海外にいるテイマーの多くは藍大の教え子のため、開催するなら藍大の協力が不可欠なのだ。
最初はシャングリラリゾートで開催することも考えたけれど、結界の設定変更や移動手段の調達が面倒だから日本のDMU本部で行うことになった。
また、テイマー系冒険者の中でも調教士の割合は少なくなく、志保がモフモフをふらっと見に行くにはシャングリラリゾートは遠過ぎることから是非とも日本のDMU本部でやってほしいと言ったこともその一因である。
茂としてもテイマーサミットが平和に終わるか怪しいので、できれば目の届く場所で開催してほしいと思っていたから志保の発言を止めなかった。
「まずは出席者の確認からしましょう。画面に映し出します」
藍大は画面共有機能を使って参加者リストを画面に映し出した。
1枚目は日本の参加者である。
〇日本からの参加者
・逢魔藍大(従魔士/”楽園の守り人”)
・逢魔優月(竜騎士/”楽園の守り人”)
・丸山武臣(死霊術士/”迷宮の狩り人”)
・神田睦美(人形士/”近衛兵団”)
・茂木泰造(粘操士/”近衛兵団”)
・赤星真奈(調教士/”レッドスター”)
・赤星リーアム(調教士/”レッドスター”)
・青空理人(釣教士/”ブルースカイ”)
・菊田結衣(調教士/”グリーンバレー”)
・有馬白雪(鳥教士/”ホワイトスノウ”)
・黒川重治(蔦教士/”ブラックリバー”)
・伊藤狩人(蟲士/”雑食道”)
・等々力沙耶(鱗操士/DMU)
『優月君も国際社会デビューする時が来たか』
「まあね。まだ4歳だけど小学校低学年に負けないぐらい喋れるし、俺が国際会議に行くと話を聞かせてくれって目を輝かせるんだ。だから、今回は思い切って一緒に参加することにした」
『ユノちゃんも初めてお披露目だけど、普通に強いし人化できるから驚く人は多いだろうな』
優月が竜騎士であることは公表しており、その従魔としてユノがいることも公表しているが、ユノが人化できると知っているのは一部の者だけだ。
会場では人化したまま参加するだろうから、事情を知らない者達は驚くに違いない。
藍大は続いてリストの2枚目を画面に映し出す。
〇海外からの参加者
・シンシア=ディオン(調教士/CN国)
・ルーカス=ペナー(調教士/CN国)
・グレース=エバンズ(粘操士/E国)
・ルドラ=チャンダ(鳥教士/IN国)
・ムハンマド=アジール(蔦教士/EG国)
・ジュリア=ビアンキ(蔦教士/I国)
・マリッサ=ライカロス(調教士/G国)
・インゲル=ハンセン(調教士/N国)
・
いつのまにか藍大のクラスメイトだった美鈴が鱗操士に転職していたが、それ以外での転職した事例は報告されていない。
なかなかテイマー系職業への転職の丸薬は手に入っていないようだ。
ちなみに、D国とF国をハブるつもりはなかったのだが、両国共テイマー系冒険者が国を空けると国内が不安定になるため欠席という回答がDMU経由で来た。
それゆえ、以上の9人が海外からの参加者である。
『黄美鈴がちゃっかり転職してるんだよなぁ』
「ルドラさん達に俺の同級生マウントを取らないか心配だわ」
『・・・胃が痛い。胃薬追加するわ』
「ということはマウントを取ろうとする訳だ。注意しとく」
茂が胃薬を飲み始めたため、美鈴がルドラ達に自分は藍大の同級生だから教え子よりも関係が深いと意味のないマウントを取るであろう未来を察して藍大は当日注意すべきと判断した。
茂の胃痛による未来予知を利用する藍大も慣れたものである。
『ルーカス=ペナーさんとは面識がないですからどんなモフモフをテイムしてるのか気になりますね』
(吉田本部長もブレないですね)
茂が胃痛を薬で抑えている間に志保の気持ちはまだ見ぬモフモフに向かっていた。
これだから天敵5号なんだとリルは志保にジト目を向けつつ藍大に頭を撫でられた。
「モフモフのことは置いておくとして、D国とF国が参加しないのは先方の都合です。後になって自分達はハブられたと文句を言ってこないように吉田さんには釘を刺していただきますが構いませんね?」
『勿論です。欠席の回答のメールはやり取りも含めて保護してますし、印刷してますから自分達は回答してないと言い逃れできないように準備してあります。まったく、これぐらいなら雑食教が広まった国の方がマシかもしれませんよ』
雑食教が広まった国とはA国とR国に加えてT島国である。
A国とR国は内戦を終結に向かわせたのだから納得するとして、T島国はどうして雑食教が広まったのか。
その答えは今年1月に行われた国際会議が原因だ。
T島国のDMU本部長の発言がフラグを立て、雑食帝が国際会議に飛び入り参加して雑食プレゼンを行った。
それだけでなく、オークションではT島国のDMU本部長が雑食ギフトが競り落としてアピールしたものだから、雑食帝が3月にT島国を訪れて直接雑食を布教したのだ。
T島国は美鈴が国際会議後に転職してから徐々にダンジョンを掌握できるようになったが、まだまだ食料が国民全体に満足に行き渡っているかと言えば怪しかった。
結果として、食べられるモンスターの範囲を増やす雑食帝の教えは瞬く間に国中に広まり、気づけば雑食教がT島国で無視できない影響を齎すに至った訳だ。
『いずれ雑食サミットなんてことも開くことになるんですかねぇ』
「茂、俺はそれには関与しないんでよろしく」
『はいはい』
藍大は雑食を嫌っているという訳ではないが、食べる物に困っていないので雑食という選択肢がそもそも出て来ない。
膝の上に座るリルも藍大の発言を聞いてホッとした様子で頷いていた。
『失礼しました。私が話を脱線させてしまいましたね。ところで逢魔さん、サミットではどんなことを行うのでしょうか?』
「自己紹介の後はお互いにどんなモンスターをこれからテイムしたいか発表してもらいます。もしもテイムしたいモンスターに関する具体的な情報が手に入れば、それぞれが掌握してるダンジョンで同種のモンスターをテイムできますよね? それで戦力を強化してもらおうと考えてます」
『確かにそれは手っ取り早く戦力を強化できますね。やらない理由はありませんか』
『藍大、俺も当日に聴講しても良いよな? 俺の知らないモンスターがどれだけいるのか気になる』
「別に構わないぞ。何かあった時に茂がその場にいた方が良いと思うし」
そう言われた瞬間、茂がうっと呻いた。
やはり何か起きる想定でいた方が良いのかと思うと胃が痛くなったようだ。
それ以外にはダンジョンに関する話し合いや模擬戦のための時間を設け、もしかしたら従魔と一緒に食べる料理教室をする可能性があると藍大が話して置いた。
強いモンスターと戦う機会は当然必要だが、料理によって育まれる関係もあるからである。
その後、当日までの準備や当日の流れについてざっと話し合ってから会議は終わった。
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