第673話 結果発ぴょぉぉぉぉぉ!
モフリー武田が第三種目を発表する時には既に出場者全員がステージの椅子に戻っていた。
「さあ、これが最後の種目! お待ちかねのPV対決だ!」
審査員は見た動画にそれぞれ5点満点で採点するから、状況によっては大逆転も夢ではない。
「さて、PVを流す順番は籤引きで決めるぜ! 逢魔さんに箱から引いてもらった球に書いてあるペアの動画から放映するんでよろしくぅ!」
「わかりました」
藍大が箱の中に手を突っ込み、その中にある球を無作為に取り出す。
「トップバッターは!?」
「有馬白雪&カームペアです」
モフリー武田の質問に藍大はカメラに文字が書いてある方を見せながら発表した。
「カーム、私達が越えられない壁になりましょう!」
「ピヨ」
カームが気合十分に頷いた直後にPVを流すために会場が暗くなり、スクリーンだけが光を放つ。
その場にいる者達が静かになって最初のPVが流れ始めた。
カームを主人公とした物語のようだが、BGMや他の従魔達にも役割があるように見える。
(これは劇なのか?)
藍大がそう思うのも無理もなかった。
主人公のカームは囚われの白雪をルーから奪い返すというストーリーであり、3分という短い時間にもかかわらずしっかりとした中身であった。
カームが喋る部分は字幕と小さい女の子のセリフが聞こえるのだが、審査員も観客もその声に心当たりがなかった。
PVの最後に衝撃の展開が待っていた。
カームが白雪を救い出して彼女にキスをした瞬間、白雪に変化が起きるのではなくカームの姿がモフモフな姿から腕から羽毛が生え、モコモコした白いタンキニを着た白髪の幼女に変身した。
そこでPVが終わり、会場の照明が元通りになると同時に会場は驚きで埋め尽くされる。
「「「・・・「「カームぅぅぅぅぅ!?」」・・・」」」」
「人化できたんかい!?」
「どう見ても幼女です! ありがとうございます!」
「雌の従魔の人化=幼女爆誕の法則は魔神以外にも適用されるんだ!」
モフリー武田が審査員達に感想を求める。
「審査員の皆さん、率直なコメントを聞かせてくれ!」
「PVのクオリティがすごかったですが、最後のカームが人化したインパクトに全部持っていかれましたね」
『紳士淑女同盟がカームのファンになりそうだね』
「有馬さん、カームとキスするなんて羨ましいです」
「いやぁ好きですね~」
「ありがとう! それじゃあ採点よろしくぅ!」
スクリーンにカームのPVの得点が表示される。
「逢魔さん&リルペア5点! 吉田さん5点! 青空さん4点! 合計14点! 最初から高得点だぁ!」
理人だけはこの後もっとすごいPVがあるかもしれないと考えて4点にしたが、藍大とリル、志保はPVのクオリティやインパクトから満点にした。
「カーム、やったね!」
白雪がカームを抱き締めた後、カームは<
「みんなありがとう」
「PVと同じ声だわ!」
「あれカームが喋ってたのかよ!」
カームが観客者達にサービスしてこの後に放映されるペアにプレッシャーを与える。
カームが与えたインパクトを超えられない限り、得点が伸び止むであろうことは容易に想像できた。
今度はリルが籤引きをすると取り出した球には重治とダニエルのペアの名前があった。
ダニエルのPVは自然と調和して戯れるものだったが、カームのPVの後に流したせいでどうにもピンと来なかった。
「審査員の皆さん、コメントよろしくぅ!」
「良いテーマでしたがメリハリがもっと欲しかったです」
『自然推しなのはわかったよ。あのPV見てたら野菜よりもお肉が食べたくなっちゃった』
「環境保護のPVとして使えそうでしたね」
「いやぁ好きですね~」
それぞれコメントした後に採点を行い、それがスクリーンに表示された。
「逢魔さん&リルペア3点! 吉田さん3点! 青空さん3点! 合計9点! インパクトが足りなかったかぁ!」
モフリー武田のコメントが全てを物語っていた。
次に藍大が引いたのはリーアム&ニンジャペアだった。
ニンジャの活躍特集の最後、ニンジャがリーアムに甘えるという内容であり、ダニエルのPVよりも盛り上がりやオチがわかりやすい展開だった。
「審査員の皆さん、どうだった?」
「ニンジャのかっこかわいいところがよくわかりました」
『ニンジャの成長がしっかりと感じ取れたよ』
「私もモフモフに甘えられたいです」
「いやぁ好きですね~」
審査員のコメントの後に点数がスクリーンに表示された。
「逢魔さん&リルペア4点! 吉田さん5点! 青空さん4点! 合計13点! あと1点カームに届かず!」
(理人さん、コメントがモフモン大好きクラブの会長なのに点数厳しいですね?)
藍大は理人の点数が思いの外辛口だったのを意外に感じた。
もっとも、それを口にして点数を上げろとは言えないので心の中でそのように思うだけなのだが。
4つ目のPVはリルが結衣とマロンの球を引き当てたため、マロンのPVに決まった。
(リルは
リルに引き当てられたら真奈のテンションが酷いことになりそうなので、リルは直感で真奈とガルフの球を引かなかった。
それを見て藍大はリルの天敵センサーってすごいと思っていた。
PVを流すために会場が暗くなり、それからスクリーンでPVが流れ始める。
映し出された画面に映っているのはマロンが前脚を組んで祈る姿だった。
『マロン、そんなに祈ってもおやつはそれ以上あげられないよ』
『チュ!?』
マロンはなんですってと祈るのを止めて結衣に甘える。
祈りなんて間接的なアプローチではなく、自分におやつを与える権限を持つ結衣に直接おねだりする方針に切り替えたようだ。
『私は太ったマロンなんて見たくない』
「・・・チュウ」
自分の横腹を摘まんでこれはヤバいと思ったらしく、マロンが激しいダンスを踊り始めた。
音楽と共に踊るマロンのダンスは完成度が高かった。
決めポーズはお祈りのポーズであり、最後はやっぱりおやつが欲しいというアピールに戻った。
その執念に結衣が折れておやつの種を少しだけ追加し、マロンがそれを幸せそうに頬張ったところでPVは終了した。
「審査員の皆さん、マロンの日常を見てどう感じた?」
「甘えん坊なマロンのありのままが見れてほっこりしました」
『ついついおやつをもっと食べたいっておねだりしちゃうよね。わかるよ』
「私ならおやつをいっぱいあげちゃいます」
「いやぁ好きですね~」
「サンキュー! それじゃあ採点よろしくぅ!」
審査員達が点数を決めてスクリーンにマロンのPVの得点が表示される。
「逢魔さん&リルペア5点! 吉田さん5点! 青空さん5点! 合計15点! 今回初めての満点だぁ!」
カームのPVはインパクトやクオリティで攻めたが、マロンのPVはとにかく愛らしさだけで攻めた。
単純な構成だがその分小細工ができないからモフモフとしての実力が試される。
マロンはそこで実力を余すことなく発揮できたようだ。
そして、ラストはガルフのPVである。
PVはガルフの起床シーンから始まった。
『ガルフの朝は早い』
そんな真奈のナレーションが流れる。
『何やってんのさ』
『これはお約束よ。おはよう、ガルフ』
『おはよう』
挨拶したガルフを見て我慢できなくなったらしく、真奈はガルフに抱き着いて朝一のモフりを披露した。
その後、モフリパークで全ての従魔から挨拶をされて指導をするガルフや戦闘で圧倒的実力差を見せつけるガルフの姿が続いた。
ラストは寝る時に真奈に抱き着かれてわちゃわちゃした感じで終わった。
「審査員の皆さん、昨年に続いてガルフの日常を見てどう感じた?」
「ガルフはよく頑張った。それがわかるPVでした」
『天敵の従魔になるって本当に大変だね』
「私もガルフ君みたいな抱き枕が欲しいです」
「ガルフ君お疲れ。振り回されるのって本当に大変だよね」
(理人さんがモフモン大好きクラブの会長を止めてるや)
理人のコメントからは藍大やリルとは違うベクトルで同情されていることがわかった。
それから審査員達が決めた点数がスクリーンに表示される。
「逢魔さん&リルペア5点! 吉田さん5点! 青空さん5点! 合計15点! 2連続で満点だぁ!」
「やったわガルフ! 満点よ!」
『良かった。モフられ損にならずに済んだ』
全ての種目が終わったことで、後は3つの種目の合計点の発表を残すのみだ。
「結果発ぴょぉぉぉぉぉ!」
モフリー武田が全力で叫ぶのと同時に5つのペアのアイコンが縦並びでスクリーンに表示される。
「第一種目クイズの結果はぁぁぁ!?」
ガルフが14マスでニンジャとカームが13マス、マロンとダニエルが13マス右に動いた。
「第二種目スポーツテストの結果はぁぁぁ!?」
ガルフが13マスでニンジャが10マス、カームが9マス、マロンが5マス、ダニエルが4マス右に動いた。
「第三種目PV対決の結果はぁぁぁ!?」
ガルフとマロンが15マスでカームが14マス、ニンジャが13マス、ダニエルが9マス右に動いた。
「合計得点はダニエル26点! マロン33点! ニンジャ36点! カーム36点! ガルフ42点! 優勝は赤星真奈&ガルフペア!」
モフリー武田が真奈とガルフの優勝を発表した途端、紙吹雪が会場内に盛大に舞う。
「ガルフ、優勝よ!」
『ふぅ、リル先輩に追いついけて良かった』
「真奈さん、ガルフ、おめでとうございます」
優勝の結果に喜ぶ真奈とガルフに藍大からトロフィーが渡され、第2回MOF-1グランプリは幕を閉じた。
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