第52章 大家さん、格の違いを見せつける

第615話 大きくなったら僕達に料理を作ってね

 年が明けて2030年の1月2日の深夜と翌日3日の明け方、舞とサクラがそれぞれ2番目の子供を出産した。


 いつもお世話になっている産婦人科医と助産師は三が日だったため、その代わりは任せろと自信あり気に言う伊邪那美と伊邪那岐がサポートした結果、何事も起きずに2人の子供が産まれた。


 既に舞もサクラもゴルゴンとフィアの治療のおかげですっかり元気になっており、今は生まれた赤ちゃんと一緒に寝ている。


 舞が産んだ子供は女の子で薫と名付け、サクラが産んだ子供は男の子で咲夜と名付けた。


 朝起きてリルに鑑定してもらった2人のステータスは以下の通りである。



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名前:逢魔薫 種族:人間

性別:女 Lv:1

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HP:10/10

MP:200/200

STR:20

VIT:30

DEX:100

AGI:30

INT:10

LUK:20

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称号:神の舌

職業技能ジョブスキル:調理士

装備:なし

備考:睡眠

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名前:逢魔咲夜 種族:魔人

性別:男 Lv:1

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HP:10/10

MP:100/100

STR:1

VIT:1

DEX:50

AGI:1

INT:50

LUK:150

-----------------------------------------

称号:ショタコンキラー

職業技能ジョブスキル:教導士

装備:なし

備考:睡眠

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 鑑定結果を聞いた時、藍大は薫と咲夜も他の子と同様に将来名を馳せそうだと思った。


 薫が大きくなったら自分の料理のレシピを教えるつもりであり、シャングリラダンジョンのモンスター食材を存分に使える環境にいれば料理の腕はメキメキ伸びるだろう。


 咲夜の教導士は亜人型モンスターのみテイムできる職業技能ジョブスキルであり、”ショタコンキラー”があるからお姉さん系の亜人型モンスターをテイムしそうである。


 リルは薫の顔を覗き込んでにっこりと笑う。


『大きくなったら僕達に料理を作ってね』


「アハハ。それはまだ随分と先の話だぞ。リルは本当に食いしん坊だな」


「クゥ~ン♪」


 薫の成長を楽しみにしているリルだが、薫の母親である舞も同じことを言いそうだと藍大は思った。


 舞達は朝食ができてから起こすことにして、藍大とリルはリビングに移動した。


 リビングには既に仲良しトリオとその子供達が起きており、ゴルゴンとゼルが藍大に駆け寄って来た。


「マスター、大事なお話があるのよっ」


『ε=ε=ε=ε=ε=(;゚ロ゚)ダダダッ!!』


「おはよう。朝からどうしたんだ?」


「薫と咲夜は別々の日に生まれたんだからねっ」


『( ・ω・)ソウダトイッテヨマスター』


「日付的にはそうだな。なんで急にそんなことを言い出したんだ?」


 藍大が首を傾げたところでメロがそこに合流して2人の言いたいことを説明し始める。


「ゴルゴンとゼルは薫と咲夜の誕生日は別々だから、来年からは1月2日と3日はそれぞれお祝いの日にしてほしいって言ってるですよ」


「あぁ、そーいうことか。勿論どっちの日もお祝いするぞ。正月のお祝いとひっくるめて1回で済ませるつもりもないから安心してくれ」


「信じてたのよっ」


『(^з^)-☆アイシテルゼベイベー!!』


「狡いです! 私も抱き着くです!」


 藍大が2人の不安を払拭するべく、追加で確認されそうなことも先取りして宣言した。


 ゴルゴンとゼルはとても嬉しそうな笑顔で藍大に抱き着き、メロも自分だって藍大に抱き着きたいと一足遅れて抱き着いた。


 気づけば他の家族も集まって来たため、藍大が朝食を作り出したのはそれから10分後のことだった。


 朝食の準備ができて藍大が舞達を起こしてからリビングに戻って来ると、ゲンがゆっくりと藍大に近づいてぺこりと頭を下げた。


「感謝」


「ん? いきなりどうした?」


「薫・・・名付け親・・・」


 藍大は聞こえたワードからゲンが何を言いたいのか理解した。


「薫はゲンが推してた名前だもんな。ありがたく使わせてもらったよ」


「主さん・・・覚えてて・・・良かった・・・」


「忘れる訳ないだろ? ゲンにはいつも助けてもらってるんだからな」


 薫という名前は優月が生まれる前からゲンが藍大の子供に付けたがっていた名前だ。


 それを藍大が忘れずに採用してくれたことにゲンは感謝していた。


 藍大に頭を撫でられてゲンは嬉しそうに目を細めている。


 そこに薫を横抱きしながら舞がやって来た。


「おはよ~」


「舞・・・感謝・・・」


 遅れて来た舞にも藍大とは別にゲンがぺこりと頭を下げたが、ゲンの言葉が足りていないので藍大が補足する。


「ゲンは自分が推してた薫って名前を使ってくれてありがとうって言ってるんだ」


「なるほど~。良い名前だったから使わせてもらったよ~。ありがとね~」


「ドヤ」


 舞に感謝されてゲンがドヤ顔になった。


 今日のゲンはいつもよりも感情が豊かである。


「主、みんなもおはよう」


「サクラ達も来たか。じゃあ、朝食にしようか」


 気づけば家族が全員集合していたので、藍大達はそのまま朝食にした。


 朝食後に薫と咲夜を連れて地下神域に行くと、地上では完全な姿になれない三貴子が2人の誕生を祝う。


「おめでとうございます。子供が無事に生まれることはめでたいですね」


「この子達が大きくなる頃には実体化したいものです」


「兄貴、お祝いに酒を飲みましょうや!」


 天照大神と月読尊はぐっすり眠っている薫と咲夜に気を遣って静かに喋っていたが、須佐之男命にそんな気遣いができるはずもなく声が大きい。


 そんな須佐之男命に天照大神は注意する。


「須佐之男命、声が大き過ぎます。起きたらどうするんですか?」


「何言ってんだよ姉ちゃん。兄貴の子供だぞ? 見ろや、ぐっすり寝てらぁ。こりゃ姉ちゃんよりもメンタル強いぜ」


「姉上、落ち着いて下さい。薫と咲夜が寝てるんですから」


「ええ、大丈夫です。私は落ち着いていますとも。須佐之男命、ちょっとあっちに行きましょうか。月読尊、手伝って下さい」


「わかりました」


「えっ、なんでだよぉぉぉ」


 天照大神と月読尊は両側から須佐之男命を引っ張って藍大達から離れていった。


 どうやらO・HA・NA・SHIの時間らしい。


「天姉さん達朝から元気だね~」


「須佐之男命は余計な一言が多い。主を見習うべき」


 舞は呑気に感想を述べたが、サクラは辛口なコメントを口にした。


 サクラ的には須佐之男命はアウトなようだ。


 藍大達が地上に戻ったところで藍大のスマホが鳴った。


「もしもし、茂か?」


『おう。おはよう藍大。三が日なのにすまないが、土曜日の国際会議の件で話がしたくてな』


「5日と6日の会議、俺が出なくちゃ駄目か? 薫と咲夜が生まれたから会議に出ずに2人の世話をしたい」


『おめでとう。いつ生まれたんだ? 一昨日の屋台をやった時はまだだったよな?』


「昨日の深夜と今日の明け方に生まれたんだ。ということで面倒事しか起きない会議は欠席しても良い?」


『そこをなんとか頼む。気持ちはわかるがお前なしには話が進まないんだ』


 藍大は世界で唯一複数の神から恩恵を得ている存在だ。


 今回の国際会議ではスタンピード対策と神の話を中心に話し合うが、そこに藍大の存在は欠かせない。


 それゆえ、茂は藍大の気持ちも十分に理解していてもNOと言わざるを得なかった。


「でもなぁ、現地に行くと色々絡まれそうだしリルの天敵もいる。間を取ってオンライン参加でどう?」


『藍大だけオンラインで参加するってことか?』


「その通り。俺って会議で話を聞くだけじゃん? 模擬戦だって対戦相手の心が折れるから見てるだけだ。オンライン参加だって質問されたら答えられるし、模擬戦も観戦できる。俺が現地に行かないから絡まれることもないし、薫と咲夜の傍から離れずに済む。何も問題はなくね?」


『ありかなしかで考えればあり寄りだが、一旦吉田さんに相談させてほしい。流石に俺の一存では決められん』


「前向きに検討してほしい。俺が現地に行かなければ茂の胃も無駄に痛くならなくなるぞ」


『その誘惑は卑怯だろ。とりあえず、吉田さんと相談してから折り返す』


 茂は胃痛がマシになるならそれでも良いかもと揺れ動いていたのは声のトーンからして明らかだった。

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