【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第397話 踊り食いの意味が違うと思います
第397話 踊り食いの意味が違うと思います
次に手を挙げたのはマルオだった。
「皆さんに質問したいんですけど、二次覚醒するとどんな力を手に入れました? ちなみに、俺はアンデッド型モンスター同士の融合です」
「私も似たようなものですね。人形士は無機型モンスター同士の融合です」
「ご存じでしょうけど従魔士も融合です」
「粘操士も同様です」
「調教士は皆さんと違って従魔とのテレパシーです」
「蟲士は昆虫型モンスターに対する3種のフェロモンです。STR・INT強化とVIT強化、デバフ解除が使えます」
「私以外にも従魔に対するバフっぽい力を持つ人がいたんですね。私の三次覚醒も同じですよ」
ゲテキングの蟲士は従魔を戦闘中に強化か回復する力であり、テイマー系冒険者にとって珍しいものだった。
ところが、ゲテキングの言葉に真奈が続いた。
真奈は藍大が用意した覚醒の丸薬Ⅱ型を購入できた数少ない冒険者である。
ダンジョン探索の指揮に協力してもらっているため、三原色クランと白黒クランのトップパーティー分に覚醒の丸薬Ⅱ型を優先的に販売しているのだ。
「真奈さんは三次覚醒でどんな力を手に入れたんですか?」
「私は獣型モンスターにツボ押しマッサージして能力値の強化や回復ができるようになりました」
『大変だよご主人。天敵に持たせちゃいけない力が渡ってる』
「リル、俺がお前を守ってやるから安心しろ」
「クゥ~ン♪」
リルは会議が始める時には小さくなって藍大の膝の上におり、真奈が恐ろしい力を手に入れていたことで藍大を見上げてブルブルと震えた。
そんなリルを安心させるべく、藍大はリルの頭を優しく撫でて気持ちを落ち着かせた。
「リル君なら私がいつでもマッサージしますよ?」
『ご主人にしてもらうからノーサンキューだよ!』
「残念・・・」
チャンスがあればすかさず自分との触れ合いを求める真奈に対し、リルは断固拒否の姿勢を見せた。
そんなやり取りを見て、ガルフは自分もあんな風に抵抗していた時がありましたと遠い目をしていた。
(ガルフの草臥れた感じが取れたのはマッサージのお陰だったのか)
以前会った時はこのままだと禿げるのではないかと心配になったけれど、先程から召喚されているガルフの毛並みはその心配が不要なものだと証明していた。
藍大は真奈がガルフをモフって弱らせてマッサージで回復される永久サイクルだと知り、心の中でガルフに合掌した。
やや話が脱線したところで今度はゲテキングが手を挙げた。
「逢魔さん、私から三次覚醒に関連して質問して良いですか?」
「どうぞ」
「もしも覚醒の丸薬Ⅱ型にストックがあるならば、私達に売っていただけないでしょうか? 神田さんも仰っていましたが逢魔さんの都合がつかない時に私達でも”大災厄”と戦えるようにしたいのです。話によれば、”大災厄”のシトリーは三次覚醒した”グリーンバレー”のトップパーティーでも時間稼ぎがやっとでしたよね?」
ゲテキングの言っていることはもっともだった。
座談会の流れが良い感じならば、志保も探りを入れようとしていた。
勿論、現在は奈美が産休中で量産できる体制ではないだろうことはわかっている。
それでも、準備の良い藍大ならば覚醒の丸薬Ⅱ型のストックがあるかもしれないと思わずにはいられないのだ。
DMUでは茂が三次覚醒するチャンスを他の冒険者よりも先に手に入れたが、できることならば命を懸けている探索班の冒険者にも覚醒の丸薬Ⅱ型を手にするチャンスが欲しいところである。
(やっぱりこういう質問も来たか。奈美さんには頭が上がらないな)
ゲテキングの質問を受けて藍大は奈美に感謝した。
奈美はいずれ覚醒の丸薬Ⅱ型を販売しないと乗り切れない時のことを考え、産休に入ってから体に負担がかからないペースでこの丸薬を作っていた。
覚醒の丸薬Ⅱ型だけ作れる訳ではなく、それ以外の薬も少しずつ作っていたから覚醒の丸薬Ⅱ型は5個だけ藍大が好きに使って良いと言われて持っている。
「覚醒の丸薬Ⅱ型ですが、このような時が来た時のことを想定してゴッドハンドがコツコツと用意してくれた物が少しだけあります。ゲテキングさん、マルオ、神田さん、持木さんが500万円用意できるようであれば、すぐにお渡しするのも可能です」
「「「「買います!」」」」
藍大がそう言った瞬間、二次覚醒組が口を揃えて購入する意思を告げた。
それから4人にネットバンキングを利用して500万円が振り込んでもらい、藍大は入金を確認してから彼等に覚醒の丸薬Ⅱ型を渡した。
彼等はすぐに買った丸薬を服用した。
「俺が・・・、俺こそが死霊術士だ!」
「マルオ、煩い」
「すみませんでした」
マルオ以外の3人はおとなしく三次覚醒したが、マルオだけは健太が三次覚醒した時のようにはしゃいでいた。
藍大はマルオの師匠として静かに注意し、マルオは素直に謝っておとなしくなった。
「皆さんは三次覚醒でどんな力を手に入れました?」
「お願いした私から発表します。蟲士の三次覚醒で得た力は蟲笛と呼ぶべきものです。実際は口笛なんですが、口笛で野良の昆虫型モンスターの思考を誘導できるようです」
「我を忘れた王〇を森に返せるんですね!?」
「森へお帰りができるんですね!?」
「真奈さん、落ち着いて下さい。マルオも落ち着け」
藍大が真奈とマルオを落ち着かせている横でゲテキングはニヤニヤしていた。
「これで昆虫型モンスターの踊り食いができます」
「踊り食いの意味が違うと思います」
ゲテキングにツッコミを入れたのは睦美だった。
彼女は真奈とマルオの対処でツッコみ切れない藍大の代わりにツッコんだらしい。
そんな中1人だけおとなしくしていた泰造は、このままでは自分だけ忘れられてしまうと焦って発表した。
「次、発表します。粘操士は三次覚醒でスライム砲を放てるようになりました」
「「「・・・「「スライム砲?」」・・・」」」
聞き慣れない言葉が出て来たため、会議室にいる全員が首を傾げた。
この場にいる全員から注目を集めたことにより、泰造はホッとした表情で説明を続ける。
「任意のスライムを大砲の砲弾のように射出できる力のようです。衝突の威力は射出するスライムの8つの能力値の合計だそうです」
「ユニークですね」
「スライム専用のピッチングマシンみたいです」
「ガルフと一緒に遊ぶ時に使えそうですね」
「ワォン?」
それは本気で言っているんでしょうかとガルフが目で訴えているが、真奈は本気である。
モフモフと戯れるためならば、ありとあらゆることをするのが真奈なのだ。
また、真奈の発言がその場を掻っ攫ったせいで流されたが、マルオが口にしたスライム専用のピッチングマシンという表現も本来戦闘向きの力であるスライム砲に遊び道具っぽい印象を与えている。
折角注目を集められたにもかかわらず、泰造の三次覚醒で会得した力の発表は微妙な雰囲気で終わった。
「私が次に発表します。人形士は簡単に言えばシンクロですね。主と従魔、もしくは従魔同士の動きをリンクさせられます」
「攻撃や移動、操作と応用が利きそうですね」
「はい。後程試してみます」
藍大のコメントに睦美は色々やれそうだと頷いた。
最後はマルオの番である。
「俺の死霊術士は三次覚醒によってモンスターの死体をアンデッドの従魔に作り変える力を得ました」
その瞬間、今まで静かに聞いているだけだった志保が手を挙げた。
「丸山さん、それは使役できるゾンビをいくらでも自由に作れるということですか!?」
「違います。使用するモンスターの死体の元々の強さに応じて4種類のアンデッドに変換できるみたいです」
そのマルオの回答を聞いて藍大は追加質問をした。
「マルオ、それってアンデッド型モンスターの死体から新しいアンデッドにできるの?」
「・・・どうなんでしょう? 直感的に無理だとは思わないので可能性はあると思います。でも、それが可能ならゾンビ系の利用価値のないモンスターの死体も役立てられますね!」
「暇な時に試しとけ」
「うっす!」
マルオは藍大のアドバイスを聞いてやる気十分に返事した。
試して上手く行った時のことを想像してニヤニヤしているのは気が早いけれど、価値のないゾンビ系モンスターの死体を有効活用できるのならそのニヤケ顔になるのも仕方ない。
その後もいくつかの質疑応答や情報共有が行われ、気づけば座談会も終わりの時間になったので藍大が締めることにした。
「そろそろ時間なので今日はこの辺りでお開きとさせていただきます。また何か共有すべきことやこのメンバーで話しておくべきことがあれば第二回座談会を開きましょう。お集まりいただきありがとうございました」
「「「・・・「「ありがとうございました」」・・・」」」
座談会が終わって準備のできた参加者から会議室を出て行った。
藍大も茂と志保に会場を借りたお礼を言ってからシャングリラへと帰った。
テイマー系冒険者だけの座談会は各々にとって実りのある時間だったのは間違いない。
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