第368話 俺がテイムすると言ったら絶対だ

 ケルブフレームを倒してしまえば、オファニムフレームなんて大したことない。


 オファニムフレームが集団で現れてもリルが<天墜碧風ダウンバースト>で殲滅した。


 それ以降はオファニムフレームが1体も出て来なくなり、藍大達は3階のボス部屋に辿り着いた。


 開幕ぶっぱを警戒してリルが<仙術ウィザードリィ>で扉を開けると、その中には三対六枚の翼を生やした銀色の天使型ロボットが待ち構えていた。


 そのロボットは女型であり、体には赤い並立回路のような分岐線が浮かび上がっている。


 オファニムフレームやケルブフレームに比べて随分とスタイリッシュな外見である。


 とりあえず、藍大はフロアボスのステータスを調べ始めた。



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名前:なし 種族:セラフフレーム

性別:なし Lv:90

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HP:2,300/2,300

MP:2,300/2,300

STR:2,100

VIT:2,500

DEX:2,500

AGI:2,100

INT:2,500

LUK:2,100

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称号:3階フロアボス

   希少種

アビリティ:<創魔武器マジックウエポン><武器精通ウエポンマスタリー><吹雪ブリザード

      <格闘術マーシャルアーツ><衝撃咆哮インパクトロア><上級鎧化ハイアーマーアウト

      <火炎鎧フレイムアーマー><全半減ディバインオール

装備:なし

備考:関心

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 (”希少種”でこの見た目・・・。うん、テイムしよう)


 藍大がセラフフレームをテイムしようと判断したことには理由があった。


 ドライザーのペアとして相応しく、<上級鎧化ハイアーマーアウト>を会得していたからだ。


 ドライザーは<不撓不屈ネバーギブアップ>を有しているから24時間365日休まず見張りができる。


 日々警備員として頑張るドライザーにペアがいれば、ドライザーが業務中に暇を持て余すこともなくなるだろう。


 そして、セラフフレームは<上級鎧化ハイアーマーアウト>が使えるからセラフフレームがドライザーに憑依することもできる。


 強くて見た目がロボっぽい者同士の合体は藍大にとって気にならないはずがない。


 以上の理由から藍大はセラフフレームをテイムすることに決めたのだ。


「みんな、セラフフレームはテイムするぞ!」


「この反応、ドライザーに対するものと似てる気がする」


『ご主人も男の子だもん。良い感じにロボっぽいから気に入ったんだよ』


 サクラとリルが冷静に話し合っている一方でブラドは興味なさそうだった。


「吾輩、食べられないなら倒そうがテイムしようがどちらでも良いと思うぞ」


「ブラド、新しく仲間になる子にそれは冷たいんじゃないかな?」


「Welcome!」


 舞が腕を動かそうとした瞬間、ブラドは自分の発言が自分のぬいぐるみ扱いされる未来を招くと察して手の平をグルンと返した。


『私をテイムすると言いましたか?』


「喋れるのか。良いね。実に良い」


『褒めてもらえるのは嬉しいことですが、私を簡単にテイムできると思ったら大間違いです』


「俺がテイムすると言ったら絶対だ」


 藍大がそう言った瞬間、ゲンの力を借りて<強制眼フォースアイ>でセラフフレームを地面に押さえつけた。


『な、な、な・・・』


「リルは俺とセラフフレームを押さえつけながら一緒に来てくれ。舞達は何があっても良いように警戒しながら待機」


『任せて!』


「「は~い」」


「わかったのである」


 リルが<仙術ウィザードリィ>でセラフフレームを地面に押さえつけつつ、藍大と一緒にセラフフレームに近づいた。


 セラフフレームはどうにか拘束から抜け出そうと試みたが、藍大とリルが協力して拘束しては脱出できる確率は0%に決まっている。


 藍大はセラフフレームに触れてテイムした。


『セラフフレームのテイムに成功しました』


『セラフフレームに名前をつけて下さい』


 藍大は名付けに時間をかけることなくスパッと名前を口にした。


「エルと名付ける」


『セラフフレームの名前をエルとして登録します』


『エルは名付けられたことで強化されました』


『エルのステータスはモンスター図鑑の従魔ページに記載され、変化がある度に更新されていつでもその情報を閲覧できます』


『詳細はエルのページで確認して下さい』


『おめでとうございます。逢魔藍大が同時に15体の従魔の使役に成功しました』


『初回特典としてミスリルヒーターが逢魔藍大の収納リュックに贈られました』


 (ん? 最後なんて言った?)


 伊邪那美の声が最後に自分の耳に届けた言葉が事実なのか気になり、藍大はエルを召喚するよりも先にミスリルヒーターを収納リュックから取り出した。


『ご主人、いきなりどうしたの?』


「エルをテイムして従魔の15体同時使役記念で手に入ったんだ。リル、鑑定頼む」


『任せて。・・・これってミスリル製のクッキングヒーターだよ!』


「マジか。そこまでやっちゃうのかミスリル」


 今までミスリルやユグドラシルの調理器具をコツコツ手に入れて来たが、いずれも手動の調理器具だった。


 しかし、今回手に入れたのは特殊な調理器具でMPを消費することで加熱できるミスリル製のクッキングヒーターである。


 電気代がかからないだけでなく、火加減は普段からゲンのアビリティを使うのにMPコントロールの熟練度が高い藍大ならば自由自在なので便利なのは間違いない。


「天が主に料理を作れと言ってるみたい」


 (そりゃ伊邪那美の声でミスリルヒーターをプレゼントされたんだからそうでしょうよ)


 サクラのコメントに藍大は違いないと苦笑いした。


「藍大~、ご飯作っちゃいなよ~」


『やっちゃえミスリルだよ』


「今日の昼食が楽しみなのだ」


 食いしん坊ズはみんな仲良く藍大にご飯を作ってくれと笑顔で詰め寄る。


 ドライザーにエルを紹介することも考えると、今日はこれ以上の探索を進めるのは難しい時間帯だ。


 それゆえ、4階が”ダンジョンマスター”の部屋であることを確認してから藍大達はシャングリラへと帰った。


 シャングリラでは今日もドライザーが警備員として不審者が現れないか見張っていた。


『ボス、お帰り』


「ドライザー、ただいま。今日はドライザーの仕事仲間を連れて帰って来たぞ」


『仕事仲間?』


「その通りだ。【召喚サモン:エル】」


 藍大は早速エルを召喚した。


『ふむ、確かに仕事仲間に見える。ドライザーだ。よろしく』


『よろしくお願いします、ドライザー先輩』


『先輩・・・。良い響きだ』


 ドライザーはエルから先輩と呼ばれてすっかりご機嫌になった。


 その後、ドライザーはエルに自分の業務を教え始めたので藍大達は102号室へと帰った。


「待ってたんだからねっ」


「お帰りなさいです」


『オカヽ(´∀` )ノエリー!!』


「お帰りなさい」


 仲良しトリオとリュカが藍大達を出迎えた。


「ただいま。優月とユノは?」


「寝ちゃったのよ」


「私達はテレビを見てたです」


『(/ω・\)チラッ』


「お洒落なホテルのランチバイキング特集をやってたから食べてみたいんだって。ゼルが」


「ゼルの顔文字を使ってリクエストするとはリュカは上級者なのよっ」


「ゴルゴンだって食べたいって言ってたですよ。マスター、お洒落なランチが食べたいです」


『それな( ´-ω-)σ』


「合ってるじゃん」


 仲良しトリオとリュカはワイワイ騒ぐ。


「とりあえず新しい調理器具が2つ手に入ったからそれ使ってお洒落な料理作ってみる」


「流石マスターなのよっ」


「マスター、ありがとなのです!」


『☆(>ω・)アリガ㌧♪』


「楽しみね」


 藍大は留守番していた彼女達のリクエストに応じて労わることを忘れたりしない。


 それから、藍大は以前参加したホテルのパーティーで出て来た料理を作り始めた。


 ユグドラシルの麺棒を使ってデザートのクッキーを作ったり、ローストラードーンにはミスリルフライパンとミスリルヒーターを使った。


 仲良しトリオとリュカのリクエストに応じつつ、食いしん坊ズが満足する量の料理を作った藍大は流石に疲れていた。


「できたぞ〜って準備万端だったか」


 藍大が後は料理をテーブルに運ぶだけという段階で舞達に声をかけようとすると、既に食いしん坊ズが中心となって配膳がいつの間にか終わっていた。


 この日の昼食はダンジョン探索組も留守番組も大満足だったのは言うまでもない。

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