第25章 大家さん、従魔の気持ちを受け止める
第291話 ワフン♪ 僕が名付け親だよ
5月5日の火曜日の夜、今日はこどもの日だが藍大達にとってはそれだけではない。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
「藍大、元気な子、産んだよ」
「舞、お疲れ様! 本当にありがとう! サクラとゴルゴンは舞の治療を頼む!」
「任せて」
「はいなっ」
藍大達がいるのはシャングリラ102号室の寝室だ。
自宅で子供を産みたいという舞の希望により、舞はシャングリラで出産に臨んだ。
産婦人科医と助産師に出張して来てもらい、舞はつい先程元気な男の子を出産した。
藍大は舞の陣痛が起きてから出産までの間、ずっと隣で手を握っていた。
ゲンが<
素の藍大のVITでは舞のSTRによって手の骨がバキバキにされていただろう。
藍大は助産師から生まれたばかりの赤ちゃんを受け取ると、舞にその顔が見えるように抱っこしながら感謝の言葉を述べた。
勿論、産婦人科医と助産師が席を外してからサクラとゴルゴンに疲弊した舞の治療を頼むことも忘れていない。
サクラが<
「私、復活~! サクラ、ゴルゴンちゃん、ありがとね!」
「どういたしまして。次は私の番だからフォローよろしく」
「家族として当然のことをしたまでなんだからねっ」
「俺からも礼を言うよ。サクラもゴルゴンもありがとな」
「えっへん」
「フフンッ」
舞と藍大からお礼を言われてサクラとゴルゴンは胸を張る。
ちなみに、サクラが私の番と口にしたのはサクラが妊娠したことを言っている。
サクラは今、妊娠12週目である。
人間と比べてアスモデウスという種族は子供ができにくいらしく、サクラが妊娠するまで時間がかかったが無事に子供がお腹の中に宿ってサクラは毎日が幸せなのだ。
サクラがパーティーから抜けるのは大幅な戦力ダウンではあるものの、リルをはじめとする他の従魔もいるからシャングリラダンジョンで無理に探索しなければ全く問題ない。
『ご主人、赤ちゃん可愛いね』
『可愛い』
「顔の形はマスターに似てるです」
「目は騎士の奥方に似てるぞ」
『\(^o^)/』
102に住む従魔達は寝室に勢揃いしており、生まれたばかりの赤ちゃんに興味津々である。
「藍大、この子の名前は
「ああ。月が綺麗な夜に生まれたんだ。リルの意見を採用して優月にしよう」
『ワフン♪ 僕が名付け親だよ』
「良いもん。私が産む時に私が付けた名前にするもん」
リルがドヤ顔で言うのに対し、サクラが拗ねたような表情を見せる。
藍大は優月を舞に預けてからサクラとリルの頭を撫でる。
「リルには良い名前を貰ったな。サクラの提案してくれた名前も素敵だったから、サクラが産んだ子供には絶対その名前を付けよう」
「クゥ~ン♪」
「うん!」
『薫・・・』
「赤ちゃんが可愛いのよっ。自分で名前付けたいのよっ」
「マスター、3番目は私の意見を聞いてほしいです」
「吾輩の付けたい名前も忘れては困るな」
『(/ω・\)チラッ』
ゲン達も名付け親になりたいとアピールするものだから、舞が藍大にニッコリと笑いかけた。
「藍大、2人目以降も頑張ろうね」
「舞さんや、いくらなんでも気が早くないかね?」
「藍大、子供だけでサッカーチーム作ろうよ」
「そうなったら俺もビッグダディって言われそうだな」
「私もビッグマムって呼ばれるかな?」
「大家族になってテレビ番組にされるのは嫌かも」
「そうだね。取材と記者会見はお断りしようね」
ただでさえ目立ちまくっているため、これ以上無理に目立ちに行かなくても良いというのが藍大と舞の共通見解である。
優月がスヤスヤと寝息を立て始めた頃に”楽園の守り人”メンバーと茂が102号室を訪れた。
藍大と舞の子供がどんな感じなのか気になっていたのだ。
当たり前のことだが、優月が寝ているから大きな声を出さないように注意している。
「優月って言うのね。良い名前ね」
「わ、私も赤ちゃんほしいです」
「ほれ、言われとるで司」
「頑張るよって何言わせんのさ」
「俺も子供ほしーなー」
4月に司と奈美は結婚している。
奈美は薬師寺奈美から広瀬奈美へと変わり、司の住む201号室と奈美の住む202号室は壁が取り払われた。
司と一緒に住んでいるリュカも部屋が広々として喜んでいるのはまた別の話だ。
健太は遥と6月に結婚式を挙げる予定だ。
遥がジューンブライドに憧れていたらしく、健太も遥の願いを叶えるためにそのスケジュールを快諾した。
話が脱線してしまったが、茂は藍大と舞に訊ねた。
「藍大、舞さん、優月君を鑑定して良いんだな?」
「頼む」
「お願いします」
茂が今日この場にいるのは優月を鑑定するためだ。
冒険者同士が結婚して子供が生まれた場合、その子供が
これは今までに報告された全てのケースで当て嵌まっている。
両親のどちらかと同じ
割合的には前者が7割で後者が3割といったところだろう。
自分の問いに藍大と舞が頷いたのを確認して茂は優月を鑑定した。
「・・・マジか」
「どうした?」
「なんというか流石藍大と舞さんの子供だなって思ってな。鑑定結果を書き起こすからちょっと待っててくれ」
そう言って茂が鑑定結果をメモに書いて藍大と舞に見せた。
-----------------------------------------
名前:逢魔優月 種族:人間
性別:男 Lv:1
-----------------------------------------
HP:100/100
MP:500/500
STR:5
VIT:5
DEX:1
AGI:1
INT:1
LUK:50
-----------------------------------------
称号:ドラゴンの友達
装備:なし
備考:睡眠
-----------------------------------------
(竜騎士とか聞いたことないんだが・・・)
「茂、竜騎士って何?」
「ドラゴン限定でテイムできる騎士だな。今の藍大みたいに視界に図鑑を表示できるから、武器を持って戦えるってさ。間違いなく世界で初めての職業だろうよ」
「なるほど。優月はすごいな」
「流石は私達の子だね~」
「ふむ。優月は吾輩と同胞をテイムする力があるのか。流石主君の子供であるな」
「ブラド的には何か感じるところってあるの?」
「優月は吾輩にとって好ましい雰囲気を纏っておるぞ」
「ブラドがそう言ってくれるなら間違いないな」
「いやいやいやいや、ちょっと待て。ツッコミどころが多過ぎるだろ。竜騎士ってのも前代未聞だぞ? 赤ん坊の能力値じゃないし”ドラゴンの友達”ってなんだよ。」
逢魔一家があっさり受け入れているが、茂からすれば驚くべき情報のオンパレードである。
実際、”楽園の守り人”のメンバー達は驚き過ぎて固まっている。
「芹江さん、優月の能力値は私から受け継がれてるんじゃない?」
「その可能性は否定できない。”ドラゴンの友達”ってのは従魔士の藍大の影響が大きいはず。効果はドラゴン型モンスターに好かれやすくなるってさ」
「それでブラドが好ましく思う訳だ」
ドラゴン型モンスターとは既に分類されていた8種に加えて新たに設けられた9番目の分類である。
藍大がファフニールのブラドを発見したことで新設されたのだ。
「とりあえず、俺の方で新たな
「いつもすまんな」
「それな。日を改めて千春さん連れて来るから一緒に美味いもんでも作ってくれ」
「わかった」
それから茂は報告のためにDMU本部に戻り、”楽園の守り人”のメンバーも自室へと戻っていった。
長い間102号室に大人数でいたら、優月が目を覚ました時にびっくりしてしまうかもしれないからだ。
サクラとリル、<
舞が優月を専用のベッドにそっと置くと、藍大は舞を抱き締めた。
「舞、改めて本当にありがとう。血の繋がった家族が生まれて嬉しいよ」
「私もだよ。藍大と優月を守れるように早く現場復帰して力を取り戻さないとね」
「えっ、もうダンジョンに行くこと考えてるの?」
「優月の世話はサクラ達も協力してくれるし、サクラが妊娠してる今、私が頑張るの。それに優月にお母さんは強いんだって自慢したいし」
「そっか。あんまり無茶しないでくれよ?」
「わかってる」
この後、サクラが様子を見に来るまで藍大と舞が甘い雰囲気のまま抱き締め合っていた。
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