第104話 材質チェケラ!
土曜日の朝、藍大達はダンジョンの地下2階に来ていた。
ゲンとゴルゴンはそれぞれ<
「藍大、昨日の全国ダンジョンスレ見た?」
「全国各地でモンスターの数が増えてるってやつ?」
「そうだよ。シャングリラは変わってないけど他所は違うみたい」
「確かに。ここはいつも同じぐらいしか出て来ないよな」
1つだけ勘違いを訂正しておこう。
藍大の言ったことは間違っていないが、全国ダンジョンスレの住人と藍大達では大きな違いがある。
それは戦力である。
藍大達の戦力は三原色のクランにも引けを取らない。
というよりも上の可能性だってある。
現に”レッドスター”の1番隊よりも藍大の保有戦力は上だ。
そうでなければ、メタルタートルで彼等が足止めされることはなかったのだから。
そんな藍大達と全国ダンジョンスレの住人の戦力差が今回の勘違いを生じさせた。
一般的なパーティーは毎回の探索で”掃除屋”が出て来るまでモンスターを狩れないし、1フロア制覇することなんてできない。
つまり、普通の冒険者では1日の探索で戦えるモンスターの数なんてたかが知れているから、同じフロアの奥からモンスターが移動して来ただけでモンスターが増えたように感じるのだ。
もっとも、モンスターが移動して冒険者達を奥に進ませないと迫って来ることは注意する必要があるだろうが。
「まあ、私達が気にしててもしょうがないよね。それよりも今日の鉱山探検かな」
「そーいうこと。油断せずに行こう」
土曜日の地下2階は鉱山の洞窟だった。
開けた場所は少なく、一本道を進むことになるから挟み撃ちになると逃げ場がない。
注意しながら進んでいくと、藍大達はこの階の
「デカい腕の形をした岩だな。地面から生えてる?」
「マッシブロックよりもマッシブだね~」
「腕だけなんて変なの」
藍大がモンスター図鑑で調べたところ、巨大な腕の形をした岩のモンスターの名前はバトロックアームだった。
攻撃範囲は腕の届く場所だけであり、STRとVITに能力値の多くが割り振られている。
バトロックアームは手をパーにして横にスイングした。
「危ねえ!」
舞が光のドームを展開した直後、バトロックアームの横薙ぎによって生じた突風が光のドームにぶつかった。
「助かったよ舞」
「こんぐらい余裕だぜ」
戦闘モードの舞は本当に頼りになると藍大は思った。
舞が活躍すれば、当然だがサクラだって何もせずにはいられない。
「主、私があいつの動きを止める」
「頼んだ」
「は~い。おとなしくしなさい」
サクラは<
「リル、<
『うん! バラバラになっちゃえ!』
反撃できないバトロックアームは鋭い風で形成された竜巻に直撃し、リルの言う通りバラバラに砕けた。
「チームワークの勝利だ。みんなグッジョブ!」
バトロックアームを倒すと藍大は舞達を労った。
ゴルゴンを装備して<
それゆえ、藍大は指示と労いに徹するお仕事に従事している。
その後も一本道を進んではバトロックアームと遭遇することを繰り返し、その度に藍大の指示で連携した舞達がバトロックアームを倒していった。
ハニワンも時々出現するが、バトロックアームよりも弱いので舞達は歯牙にもかけない。
「今日は比較的楽だね」
「それは言えてる」
「私がいるもん。あんなの10体や20体いたって余裕だよ」
『僕だっているよ!』
「よしよし。サクラもリルも頼りにしてるからな」
藍大は頼もしい従魔達の頭を撫でてやる気を底上げした。
そんな時、一本道の奥から足音が藍大達の方に向かって近づいて来た。
ハニワンが近付いて来る時の音とは違うから、藍大達はすぐに臨戦態勢を取った。
藍大が今日の”掃除屋”だろうと予想した直後、銀灰色の鱗に覆われた二足歩行の蜥蜴がその姿を現した。
(ただのリザードマンじゃないだろうな)
シャングリラダンジョンに現れたからには普通のリザードマンであるはずがない。
その予想が正しいか確かめるべく、藍大はモンスター図鑑を開いた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:チタンリザードマン
性別:雌 Lv:35
-----------------------------------------
HP:300/300
MP:320/320
STR:510
VIT:850
DEX:230
AGI:300
INT:0
LUK:150
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(VITが高い。硬さを利用する気満々じゃねえか)
能力値でまず真っ先に目がいくのはVITである。
800オーバーのVITなんて外に出たら大半の冒険者が倒せないだろう。
「グルァァァァァ!」
チタンリザードマンが吠えると、体を覆う鱗が光沢を放った。
「気をつけろ。敵は<
「藍大、指示して」
「わかってる。舞は守りに専念。サクラとリルは攪乱しながら攻撃しろ」
「「『了解!』」」
舞は遠距離への攻撃手段を持たないから、<
せめてこのアビリティが解除されれば、接近戦でやりようはあるのだがこればかりは仕方がない。
チタンリザードマンの<
その役割は遊撃のサクラとリルが担うことになった。
サクラは空を飛ぶと、チタンリザードマンの頭上から<
「おとなしくしなさい!」
「グルァ!」
チタンリザードマンは<
『僕もいるよ!』
リルがチタンリザードマンの背後から<
ところが、驚くべきことにチタンリザードマンは<
「てめえは近づけさせねえ!」
舞が光のドームを展開したことで、チタンリザードマンは展開された光のドームに衝突した。
それと同時に今の衝突がチタンリザードマンへの有効な攻撃扱いとなり、<
もしも至近距離から攻撃していれば、チタンリザードマンの鱗によって数えられない程の刺し傷ができていたことだろう。
光のドームで衝突の勢いが殺されたのを確認すると、藍大は舞にGOサインを出した。
「舞、一発決めてやれ!」
「材質チェケラ!」
舞が光の付与されたB2メイスで渾身の一撃をチタンリザードマンの腹に叩き込むと、チタンリザードマンの体は後ろへ大きく仰け反った。
その隙をサクラもリルも逃さない。
「死んでくれる?」
『おしまいだよ!』
サクラが<
手足と胴体だけ残されたチタンリザードマンは、HPが0になってドサリと音を立てて倒れた。
『サクラがLv60になりました』
『サクラのアビリティ:<
『リルがLv59になりました』
『ゲンがLv56になりました』
『ゴルゴンがLv51になりました』
(あれ、サクラの新しいアビリティは?)
てっきりLv60になったら7つ目のアビリティを会得すると思っていたので、藍大にとってこのシステムメッセージは予想外だった。
とはいえ、アビリティが強くなったことは間違いないので問題はないのだが。
「主~、勝ったよ~!」
サクラの勝ったという言葉が刈ったと聞こえなくもないが、嬉しそうに自分に抱き着くサクラを前にすればそんなことは些細なことである。
藍大はサクラを労い、少し遅れて自分に擦り寄って来たリルの頭も撫でた。
当然、舞だって活躍したから藍大に甘えている。
藍大は全員を労った後に戦利品を回収した。
魔石はリルが使う番だったが、サクラ同様Lv60になるのを待つことになった。
そして、サクラはLv60になったから藍大に魔石を食べさせてもらった。
『サクラのアビリティ:<
『サクラがアビリティ:<
「統合?」
サクラのアビリティ2つが1つに統合されたことに藍大は驚いた。
Lv60のレベルアップと併せて新しいアビリティが3つあるので、藍大はモンスター図鑑でそれらの効果を調べた。
すると、どのアビリティも強力なものだとわかった。
<
<
<
「サクラは本当に強くなったなぁ」
「エヘヘ♪ 主だ~い好き♪」
藍大に褒められて嬉しいサクラは、ちゃっかりそのまま抱き着いて藍大に甘えた。
「もう! 私だって我慢しないよ!」
彼氏がずっとサクラに抱き着かれているのは我慢できなかったため、舞も藍大に抱き着いた。
藍大達が探索を再開できるようになるまで10分程かかったのは仕方のないことだろう。
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