【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第82話 サスペンスドラマでも始める気か?
第82話 サスペンスドラマでも始める気か?
オウルベアを倒してからしばらく探索を続けていると、メロが何かに反応して鳴いた。
「メロン?」
「どうしたんだメロ?」
「メロメ~ロン」
メロは藍大にあっちを見てくれとジェスチャーで伝えた。
「あっちを見ろって?」
「メロン」
藍大が自分に言いたいことが伝わってホッとしたメロは、その通りだと首を縦に振った。
『ご主人、あっちから気になる匂いがする』
「リルも何か気づいたのか?」
『うん。マニュファリリーみたいな感じがするんだ』
「メロン!」
「あっ、ちょっ、メロ!」
メロが辛抱堪らんと言わんばかりにぴょこぴょこ跳ねて目当ての植物の前まで移動した。
「主、私が収穫してくるね」
「頼んだ」
どんな植物なのかわからないので、状態異常が効かないサクラがメロの代わりに採集してくると告げた。
藍大もサクラならば安心だと任せると、サクラはすぐにそれを回収して戻って来た。
サクラが根っこから傷つけずに持ち帰って来たのは光る草だった。
藍大はモンスター図鑑でサクラが持つ草の正体を確かめた。
(ルナリスか。ここでしか手に入らなさそうだ)
名前からして月が出ている時に関わりのありそうな植物である。
ルナリスとは月光を養分として蓄えて育つ草で、植え替えた場所でその養分を解放して土壌を農業に最適なものへと変える農家垂涎のアイテムだ。
このルナリスが地下2階でたっぷりと月光を浴びていたとわかっているようで、メロが持ち帰りたさそうにしている。
「メロ、これを家庭菜園に植えたいのか?」
「メロン!」
「わかった。帰ったら植えような」
「メロン♪」
メロは藍大に自分の願い受け入れてもらえて喜んだ。
収納袋にルナリスをしまうと、藍大達はフロアボスが出て来るまで地道にシルクモスとブラッドバッドを倒して回った。
すると、突然鳴き声が藍大達の耳に届いた。
「キキキキッ、キキキキッ、キ~キ~!」
「サスペンスドラマでも始める気か?」
音はさておきリズムだけで判断すれば、聞こえて来たものはサスペンスドラマのテーマだった。
強いて言えば曜日が1日ずれているのだが、ダンジョンのモンスターにそんなことを求めても仕方がない。
意味深な鳴き声の後に藍大達の前に姿を現したのは、目が赤く光り虹色に光る翅の巨大な蛾だった。
「地下2階なんて大嫌いだよ~」
「主~、虫嫌なの~」
「よしよし、可及的速やかに倒して帰ろうな」
舞とサクラがうんざりしているので、藍大は彼女達を励ましてからモンスター図鑑でその正体を確かめた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:モスマン
性別:雄 Lv:30
-----------------------------------------
HP:300/300
MP:360/360
STR:200
VIT:400
DEX:300
AGI:400
INT:500
LUK:220
-----------------------------------------
称号:地下2Fフロアボス
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:興奮
-----------------------------------------
(アゲハムーノと一緒で状態異常系アビリティが2つか)
藍大はモスマンのステータスを確認してうんざりした。
サクラには効かないとしても、それ以外のメンバーには通用するのだから使わせたくないというのが正直なところだ。
「キキッ!」
モスマンは藍大達を捕えるべく、<
「メロ、<
「メロン!」
メロでも十分防御はできると判断したら、藍大はメロに指示を出して自分達を守らせた。
メロがどこからともなく出した蔓に回転が加わることで、モスマンの吐き出した糸を容易く弾いた。
「サクラはモスマンのLUKを空にしろ。リル、素材とか考えなくて良いから確実に倒せ」
「は~い! いただきま~す!」
『わかった! それっ!』
サクラがモスマンのLUKを奪って運良く回避する可能性をなくすと、リルは<
巻き込まれれば切り傷でズタボロ間違いなしのアビリティを目の当たりにして、モスマンは全力で逃げた。
本能的に触れたら不味いと悟ったのであろう。
「ゴルゴン、<
「「「シュロッ!」」」
モスマンが逃げる先々で急に出火するせいで、うまく逃げられずに段々とモスマンにストレスが溜まる。
「キキッ!」
モスマンは<
しかし、藍大には探し物のプロがいる。
「リル、隠れた先に攻撃!」
『うん!』
リルがモスマンの隠れた木に<
その目はリルを見ており、突然リルの尻尾が股下にしまい込まれた。
『ご主人~、怖いよ~』
「よしよし。怖くない、怖くない」
藍大はリルに<
「リルを虐めないでくれる?」
冷たい声になったサクラが<
翅がなければモスマンは飛べず、ただ落下するのみである。
モスマンが地面へと落下するのを見て、オーラを盾に纏わせた舞が盾を落下するモスマンに向かってフライングディスクのようにぶん投げた。
「喰らえやオラァ!」
翅がなくなって避けられないモスマンは、せめてもの抵抗として<
ところが、オーラを纏わせた盾はモスマンの悪あがきをものともせず、糸を弾いて多少威力が減衰したもののモスマンの胴体に命中した。
モスマンの体は奥にある木にぶつかるまで吹き飛び、そのまま地面にずるずると落ちた。
サクラの攻撃でHPの大半を削られ、舞の攻撃がとどめとなったらしくモスマンが動き出すことはなかった。
『サクラがLv52になりました』
『リルがLv51になりました』
『ゴルゴンがLv41になりました』
『メロがLv35になりました』
システムメッセージが耳に届くと、藍大は勝利を確信した。
「お前達、よくやってくれたな」
立派に戦ったサクラ達を労っていると、舞もそこにちゃっかり加わっていたので藍大は区別せず舞のことも労った。
その後、藍大達は役割分担してモスマンの解体と周囲に散らばった糸や翅の回収を行った。
モンスター図鑑によれば、モスマンの糸は極上のシルクで肌触りが良く着心地の良い服の素材になるものだった。
翅は翅そのものではなくそれに付着している鱗粉が薬の材料になるらしい。
また、モスマンの赤い目も複数の使い道があることが発覚した。
藍大は魔石を回収してゴルゴンの前に移動した。
「ゴルゴン、魔石はお前にやろう」
「「「シュロロ~」」」
藍大から魔石を貰って飲み込むと、ゴルゴンの体に罅が入ってその中からゴルゴンが飛び出した。
「「「『んんんんん?』」」」
「メロン?」
何が起きたのかよくわからなくてゴルゴン以外のメンバーは首を傾げたが、ゴルゴンは先程よりも元気そうにしていた。
脱皮のようだが体の艶が脱皮前とは比べ物にならない程輝いていた。
脱皮して体の調子が良くなったからゴルゴンがご機嫌になったのだ。
『ゴルゴンのアビリティ:<
先程の様子から脱皮する動作で再生するらしい。
「また継戦能力が上がって良かったな、ゴルゴン」
「「「シュロロ~♪」」」
もっと藍大の役に立てるとゴルゴンは嬉しそうに鳴いた。
それから、戦闘後の事後処理を済ませた藍大達はダンジョンから出た。
(月夜の森から青空に戻って来ると変な感じがするなぁ)
そんなことを思いつつ、藍大は茂へと連絡した。
『もしもし、藍大か?』
「俺と舞とサクラのパジャマを作ってくれ」
『は? どーいうことだ?』
藍大がいきなり用件だけを言うものだから、茂はさっぱり意味がわからなかった。
藍大も背景を説明してなかったと思い直し、手に入れた背景を続けて述べた。
「モスマンを倒して極上の糸を手に入れたんだ。だからパジャマを作ってくれ」
『モスマンってのは”掃除屋”か?』
「いや、フロアボスの方だ。赤い目に虹色の翅の蛾だと思ってくれ。”掃除屋”はオウルベアだな。見た目は上半身が梟で下半身が熊な」
『よくわからんがまた素材が大量にある訳だな。とりあえずこっちに送って来てくれ。パジャマについては了解した』
茂は藍大について理解のある男だから、ひとまず藍大の希望を叶えることを了承した。
落ち着いた藍大に今日のダンジョンについて報告してもらうと、茂はシルクモスの絹糸とモスマンの糸に興味を示した。
茂も乗り気になったため、藍大はすぐに奈美のアイテムショップ出張所で素材を買い取ってもらうことになった。
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