【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第27話 秋刀魚のくせに贅沢過ぎやしないか!?
第3章 大家さん、同盟を持ち掛けられる
第27話 秋刀魚のくせに贅沢過ぎやしないか!?
DMU本部から帰って来た藍大達は、昼食後にダンジョン探索に向かっていた。
本当は休みにしても良かったのだが、記者会見後にシャングリラに冒険者が殺到して家の中にいても落ち着かなかったからだ。
こんな時のために出向している麗奈と司により、押しかけて来た冒険者達はシャングリラの敷地内に入れず、藍大達は冒険者達の声が聞こえないダンジョンの中に逃げ込んだ。
「ふぅ~、スッキリした~」
そう言ったのは舞だ。
記者会見で溜まったストレスをダンジョンに出現したバブルフロッグにぶつけての一言である。
そのストレスは相当のものだったようで、サクラやリルが戦闘に参加する暇すらなかった。
バブルフロッグは薄い青色で子犬サイズの蛙であり、名前の通り泡を吐いて攻撃するモンスターだ。
体表にはポコポコと泡が浮かんでおり、舞の攻撃に対して少しは衝撃を吸収したのだが、舞の地力が強かったせいで襲い掛かって来たバブルフロッグから順番に返り討ちにされている。
その泡のおかげで、普段は舞が戦えば買い取ってもらえない無残な死体が残るというのに、今日に限ってちゃんと元の形が残ったままの死体が手に入った。
「舞、落ち着いたか?」
「落ち着いた~」
「慣れないことはするもんじゃないよな」
「そうだね~」
「主、終わった」
「オン」
「解体終わったか。ありがとな、サクラ、リル」
藍大が舞と話している間に、サクラとリルは解体を済ませていた。
2体は解体作業にもかなり慣れたようで、その効率も確実に良くなっている。
藍大がサクラとリルを労っていると、舞がキョロキョロと周囲を確認し始めた。
「どうしたんだ?」
「昨日までのことを考えると、あれだけ倒したら”掃除屋”が出現したなって思ったの」
「確かに。これだけ倒せば出て来てもおかしくないよな」
「主、あそこ」
サクラが指差す方向は天井だった。
そこには秋刀魚によく似たモンスターが浮いていた。
勿論サイズは普通の秋刀魚と同じではなく、藍大の目測でも5倍は大きいと判断できた。
秋刀魚ならば時期外れだと思いつつ、藍大はモンスター図鑑を開いて飛んでいるモンスターについて調べ始めた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:フライングソリー
性別:雄 Lv:15
-----------------------------------------
HP:180/180
MP:200/200
STR:200
VIT:210
DEX:70
AGI:180
INT:180
LUK:60
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(秋刀魚のくせに贅沢過ぎやしないか!?)
藍大はフライングソリーのステータスを見て驚いた。
元々空を飛べる生態なのは置いておくとしても、物理攻撃も魔法攻撃もできるのだから驚かないはずがない。
スペックではサクラに劣っているものの、フライングソリーにはサクラよりも攻撃手段に幅がある。
だがちょっと待ってほしい。
サクラには”掃除屋殺し”があることを忘れてはいないだろうか。
「サクラ、三枚おろしにしちゃえ」
「わかった! それっ!」
”掃除屋”と対峙した時、サクラの全能力値が1.5倍になる。
今はまさにその状況であり、スペックの差からサクラの<
『サクラがLv25になりました』
『リルがLv23になりました』
システムメッセージが藍大の耳に届いた。
「主、倒した!」
「見事な三枚おろしだ」
「えっへん!」
「サクラちゃん可愛い~」
ドヤ顔のサクラに舞が抱き着こうとするが、サクラはするりと躱して藍大の背中の後ろに隠れた。
大勢の前で香ばしいポーズを披露することはできても、舞のことは苦手のままらしい。
その後、解体作業に移ったのだが、フライングソリーはほとんど可食部であり素材として使えるのは鰭と尾鰭、目玉だけだった。
”掃除屋”ということで、魔石も当然手に入った。
これは功労者であるサクラに当たることとなった。
「サクラ、あ~ん」
「あ~ん。んん~♪」
何度見ても艶やかな表情で魔石をゴクリと飲み込むと、サクラの中学卒業前ぐらいだった体が女子高生と呼べるサイズへと変わった。
その直後に、システムメッセージがサクラのアビリティ獲得を告げた。
『サクラのアビリティ:<
(また上書きか。新しいアビリティは会得できないってこと?)
システムメッセージによって知らされた内容がアビリティの獲得ではなく上書きだったため、今のサクラではこれ以上のアビリティを手に入れられないのではないかと藍大は推察した。
残念なことに、モンスター図鑑で調べてもサクラが新たにアビリティを獲得できるかはわからなかった。
だとすれば、そういうものだと受け入れるしかないので藍大はおとなしく<
(敵のLUKを吸収して自分のLUKにする!? サクラに宝くじやってもらおうかな!?)
他のモンスターの不幸を自分にとっての蜜にするような効果だと知り、藍大が最初に考えたのは宝くじを買うことだった。
今の藍大の収入は、月々の家賃に加えて冒険者としての換金による売り上げだ。
しかし、今後はクランを運営するにあたって今までよりも出費が多くなるかもしれない。
いや、出費はクランの運営だけに限らない。
ダンジョンの探索が進むにつれて、敵モンスターが強くなるのだとしたら、それに見合った武器や防具を用意する必要がある。
そう考えると、お金はいくらあっても困らないのだ。
「主、どうしたの?」
考え事をしていた藍大を覗き込むようにしてサクラが声をかけると、藍大は首を横に振った。
(いかん。サクラを道具みたいに扱うのは良くないな。良くねえよ)
ただでさえ戦闘は従魔に任せきりだというのに、儲けるためにサクラの力を借りるのは藍大の良心が認めなかった。
「なんでもない。サクラ、強くなれて良かったな」
「うん!」
それから、藍大達はボス部屋までノンストップで進んでその中に入った。
ボス部屋の中に入ると、バブルフロッグよりも一回り大きい緑色の蛙がいた。
「ゲロォォォォォッ!」
蛙が鳴いた瞬間、ボス部屋は室内だというのに蛙の上空を中心に雨雲が発生して雨が降り出した。
「アオォォォン!」
リルは<
藍大に体を洗ってもらうのは良いが、敵に自分の体を濡らされるのは不愉快だからである。
そして、敵が主とその仲間を濡らそうとしていることを許すことができず、リルは蛙に向かって突撃した。
蛙の名前がレインフロッグであると藍大が知った時には、レインフロッグが長い舌をリルに向かって伸ばしていた。
「リル、舌を斬ってしまえ!」
「オン!」
任せろと言わんばかりに吠えると、リルはレインフロッグが伸ばした舌を簡単に躱して<
舌を斬られたことにより、声を出すことができなくなったレインフロッグは痛みを表現することもできず、リルの体当たりを喰らって吹き飛ばされたまま動かなくなった。
レインフロッグのHPが尽きたことで雨が止んだ。
ところが、フロアボスとはいえレインフロッグはLv10でサクラやリルをレベルアップさせる程の経験値はなかったらしく、システムメッセージは藍大の耳に届かなかった。
その代わりに、リルが勝利の雄叫びを上げた。
「アオォォォン!」
雄叫びを上げたリルは、尻尾を振り振りしながら藍大に駆け寄った。
「よしよし。リルは強いな」
「オン♪」
リルは顎の下を撫でられると、もっと撫でてくれという表情で藍大の手を受け入れた。
そんな中、くしゃみする音がボス部屋内に響いた。
「へくしゅっ!」
くしゃみの主は舞だった。
雨に濡らされてしまい、体が冷えたのだろう。
「さっさと解体して脱出しよう。風邪ひく前に体を温めないとな」
「賛成~」
舞も藍大に同意し、解体を済ませてすぐにダンジョンを脱出した。
普段ならば素材の買取依頼と報告を先に済ませるが、今日は藍大も舞もシャワーを優先させてもらったのは仕方のないことだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます