【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第1話 テイムに運動神経を求めないでくれ!
【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
モノクロ
第1章 大家さん、覚醒する
第1話 テイムに運動神経を求めないでくれ!
2025年1月1日、地球規模の大地震が発生して世界人口の3割が失われた。
それだけならば、人類は自然災害の恐ろしさを体感しただけに留まっただろう。
しかし、それだけでは済むことはなく地球は転換期を迎えた。
そう判断された理由は2つある。
1つ目は、地震の直後に世界各国で生き残った者達が続々と高熱を発症してそのまま意識不明になり、熱が引いて目覚めた者から順番に特殊な能力を開花させたからだ。
その特殊な能力を手にした者は生き残った人口の3割程度で、いずれも能力の使い方が目覚めた瞬間には理解できていた。
そして、その能力は職業の名前で理解できたことから
2つ目は、地震発生後に世界中でモンスターと未知の資源があるダンジョンが発見されたからだ。
ダンジョンについてわかっているのは、モンスターがダンジョンから出て来ることが今のところなく、侵入者がいるとそれを排除しようと襲って来ることである。
ダンジョンによってはモンスターだけでなく罠もあり、侵入者を容赦なく殺しにかかる。
落とし穴に転がる岩玉、槍衾等引っかかったら死に直結する罠も当然ある。
ダンジョン内では侵入者もモンスターも、死ねば等しく時間の経過と共にダンジョンに吸収される。
もっとも、モンスターの場合は死体が貴重素材となるので人類が逃す手はないのだが。
ダンジョンにはエリアないしフロア毎にボスが存在しているのを目撃されている。
これらの情報は、
ダンジョンは現時点では、洞窟や廃墟等の所有者のいない所に現れているため、発見されると大地震後に国が立ち上げたDMU(
超人になると、冒険者という新設された国家資格を取ることを推奨され、冒険者登録された超人は国家公務員としてモンスターを倒して未知の資源を持ち帰る仕事として認知された。
ダンジョンに侵入することは変わりないが、侵入者と呼ぶのは人聞きが悪いから冒険者と呼ぶことにしたのは言うまでもない。
そんな中、超人になって冒険者に登録できたもののアパートの大家として燻っている者がいた。
藍大は大地震によって家族全員を失った。
藍大だけが生き残ったのは、藍大が大地震の起きた時に家族と離れて飛行機に乗っていたからだ。
海外旅行に男友達と行った帰りで、飛行機に乗って日本の領空に入ったタイミングで大地震が起きた。
空にいる時に大地震が起きたことで、建物の倒壊によって下敷きになって亡くなった家族と違って生き残ることができたのである。
家族の死の事実を知り、途方に暮れた藍大を襲ったのは高熱であり、藍大は超人となった。
国家資格の取得に成功して冒険者として登録できたは良いものの、藍大は自分の
それゆえ、自分にどんな力が眠っているのかわからないので、死の危険と隣り合わせのダンジョンには行けず、家族の相続財産であるアパートの大家として細々と暮らすことになってしまった。
相続したアパートの名前はシャングリラ。
理想郷の名前を冠しているのに、2階建てで1階につき4部屋しかない普通のアパートである。
防犯対策と耐震設計に定評があるため、普通とは言っても地元ではそこそこ人気がある。
そこの101号室は物置として長年放置されており、藍大は大家として102号室に住み込んでいる。
幸いなことに、シャングリラの耐震設計が万全だったこともあって、大地震でも崩れることがなかった。
また、1階の1部屋と2階の3部屋には藍大以外にも住民がちゃんといるので、家賃で藍大には収入が入る。
この家賃収入のおかげで、藍大はどうにか生活できている。
大家になって3ヶ月が経過した藍大は、庭の手入れをしようと思いついて必要な物を準備していた。
「あれ、脚立って
庭の木や生垣に必要な道具は102号室で見当たらなかったため、藍大は101号室に行くことにした。
101号室の鍵を開けると、違和感を覚えた。
元々、この部屋の鍵が他の部屋と比べて若干開けにくいことから倉庫として扱っていたにもかかわらず、102号室と遜色ない速さでドアを開けられたからだ。
そして、ドアを開けた藍大を待ち受けていたのは洞窟だった。
「あれっ、倉庫の荷物はどこいった?」
部屋にみっちり入っていたはずの荷物が消えており、ドアと洞窟が繋がっているのだから驚きである。
何が起きたのかわからなかった藍大は、とりあえずドアを開けたまま消えた荷物の手掛かりがないか探すために洞窟の中に入った。
室内に洞窟があるはずないので、101号室がダンジョンになったということはすぐに理解できた。
ただし、今まで私有地がダンジョンになったというニュースを聞いたことがなかったので、そんなことが起きるのかと驚くことになってしまったのだが。
「なんだこの黒いの? 本か?」
見落としていたのかどうかも定かではないが、いつの間にか藍大の足元に黒いハードカバーの本があった。
黒い本がどんなものか気になり、藍大はそれを手に取った。
その瞬間、藍大の頭の中に今まで一切わからなかった自分に眠る力が思い浮かんだ。
「・・・俺の
藍大の頭の中に思い浮かんだのは、従魔士という言葉とその能力だった。
超人で多い
魔術士のように遠距離戦闘系の
その少数派にも満たない新しい職業として、藍大は従魔士としての力を呼び覚ました。
今日この日が来るまでの間、藍大は他に従魔士がいるというニュースを聞いたことがなかった。
「新しい
そんなことを考えつつ、藍大は従魔士に何ができるのかを確認した。
だが、藍大は最初から躓くことになった。
「このモンスター図鑑をモンスターに被せない限りテイムはできない、だと・・・?」
従魔士と言うからには、呪文を唱えてモンスターをテイムすると思っていた藍大の予想は早々に裏切られた。
実は藍大の手に持つ本は、藍大の従魔士としての力が具現化させたモンスター図鑑というものだった。
この本をモンスターに被せて初めて、藍大はモンスターのテイムに成功して亜空間にモンスターをキープできる。
モンスターを亜空間に移動させると、時間の経過に連れて自然回復よりも速くHPとMPが回復し、怪我だって回復する。
死んでしまえばそれまでなのだが、死ななければ回復するというのはありがたい話だろう。
しかし、藍大は高校までの部活は帰宅部でバイトしかしていないし、大学もサークルには入っておらずゼミとバイトがメインだったため、運動神経は並程度で自信があるとは言えない。
そうなると、モンスターに黒い本を被せるということが困難である。
「テイムに運動神経を求めないでくれ!」
藍大の叫びが虚しく洞窟に響いた。
しかし、藍大は超人としての力がようやく開花したのだから、自分の運動神経を理由に超人であることを諦めたくはなかった。
「まだ慌てる時間じゃない。もしかしたら、俺に捕まえられるモンスターがこの先にいるかもしれない。ちょっとだけ先を見に行こうじゃないか」
自分を奮い立たせるようにそう言うと、藍大は洞窟の先に進んでみることにした。
庭の手入れができるように、
勿論、いざという時にすぐ逃げられるように、ドアを開けっぱなしにしたままでだ。
ダンジョンの中は意外と明るい。
壁自体がうっすらと光を放っているから、この壁も地球にとっては未知の資源である。
「壁をひっぺ返して持ち帰れないかな?」
思いついたことを口にするが、どうやればそうすることができるかまでは閃かない。
それゆえ、早々にその考えを諦めざるを得なかった。
しばらく進むと、藍大は道の先に何かが倒れているのを発見した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます