パンデミック 〜学生たちの闘い〜 (歩視点)
あおでぶ
第1話
はぁ…眠い…
なんだこの先生の異様なまでの催眠術は…
同じことを何回も言ってやがる…
圧力の公式なんて、一回教えて練習問題解かせればいいだろうに
あぁ…木々の囁きが聴こえる…
秋風に乗って自然の子守唄が聞こえる…
「おーい……ら、いい加減起きろ…」
誰が寝てんだよ…俺はちゃんと聞いてるっつーの…
「おーい歩ー起きろー」
はぁ?悠希?からかってんのか?
あぁ…家に帰って地球○衛軍したいなぁ…
「地球を守るために…宇宙と交信してるんです」
バシッ
悠希の無慈悲な一発。
’寝てないつもり’の歩の意識を現実に引き戻す。
(ほんと、無意味な暴行はやめていただきたいよねぇ)
悠希はこちらをニヤニヤ見て言った。
「宇宙人との交信は終わったか?」
寝ていた歩は悠希の言葉の意味が分からない。
(は?いるかも分からん地球外生命体と交信!?)
歩はトランシーバーも携帯もない状態でいるかもわからない宇宙人と交信する方法を考える。
そして、行きついた答えが...
「はぁ?なに言ってんの悠希?ついにおかしくなったか?」
しかし、歩は再び思考する。
今まであいつがおかしくなかったか?
初めて会った時の第一声を思い出せ、悠希は知り合いを名指しして
“アイツはやばい気をつけろ”
と言った…確かに名指しされた奴は相当ヤバかった。
でも初対面で自分の名前も名乗らずに
“アイツはやばい”
って言う方もだいぶやばいと思う。
もとから悠希はやばい奴だったのか。
その思考に行きついた歩は悠希に言った言葉を訂正する。
「あぁ元からだったか…」
「こいつw」
そして今までの一連の流れを見つめる視線が一つ。
我らが理科の先生である。
「歩も起きたな。じゃあこの式を使って圧力を求めてみろ」
少し不機嫌気味で黒板を指さす先生。その指の先にあるのは、
’Pa=N/㎠’
面積の違う圧力の公式。
歩は”この式で解け”と言われた指示に従い、’その式通り’に問題を解く。
「えーっとその式で解けば1.2Paです」
「え?なんで、そんなはずはない」
「でも本当は12000Paです。先生、その式の㎠の所間違ってますよ。正解は㎡です。」
「あ!!そうだ!!ごめん!」
歩の鼓膜に先生の声が響く。
再び寝ようとしていた歩には最高の拷問だ。
「えーっととりあえずプリントの答え配るから、丸つけして。」
先生が教卓の上の資料を漁る。
先生はいつも辞書みたいな厚さの資料を持ってきて、毎回プリントや資料探しに手間取っていた。
しかし生徒には「片付けは定期的にしろ」なんて言っている。
まぁ学校では普通の光景なのだが、歩はこれが‘片付けられている状態’と捉え、生徒の9割が片付けができていることを認識した。
(解答プリント出てこないな…)
(どっか変なところに置いてるんじゃない?)
生徒たちの声がだんだんと増してきた。
「多分……高校の職員室に置いてきた。ちょっと取りに行ってくる!」
テヘッとでも言いたげな顔でその言葉を残したのち、先生は腕を全力で振って、ガチで走る。
廊下に響く先生の足音。
クラス全員の視線が先生に集まったところで歩はまた寝始めた。
「なんか…先生…高校の職員室に…らしいよ」
「え、なんで?」
うーん…
うるさい…誰だよその先生…
高校?なにそれ……つーか先生帰ってこなくね?
とりあえず授業終わるまで帰ってこないで…
『バシッ』
「いった!はぁ?」
悠希は叩く以外人の起こし方を知らないらしい。
「おい、なんか先生遅くね?」
「うーん……探すのに手間取ってるだけじゃない?」
「ちょい、見に行ってみない?なんかあたっら手伝えばいいし。」
「は?めんどくさ。矢野、清水カップルに行かせろよ」
「学級委員長?先生呼んできて」
悠希が奥の席で清水と話してる矢野にそういうと、
めんどくさそうに、こちらを見て一言
「カップルは雑談で忙しいので非リアのおふたりが行ってきてくださーい」
と言ってまた清水と土日にどこに行くかを話し始めた。
これでも先生の前ではちゃんと学級委員長なのだ。
しかし普段はうぜぇリア充でしかない矢野、清水ペアに歩はため息をこぼし、
「はぁ↑めんどくせっ!」
「貸し1ね。」
「ん。わかった。貸し1な。」
無意味に悠希に貸しを作った。
「んじゃ、交渉成立だな」
貸しは作ったがそれはそれとして仕事はしたくない歩。
まだ眠たい頭を掻きむしり、勢いよく席を立つ。
ダラダラ歩き始めたその時、
「ちょっと待った!」
後ろからいかにも運動部って声、野球部キャプテンの真柄翔だ。
「俺もついて行ってもいいか?」
物好きだなこいつも…なんで先生呼ぶためだけにわざわざついてくるのか。
陽キャは得意じゃないと悠希に真柄のことを押し付け、歩は背筋を立て少し早歩きをしてその場を去る。
しばらくして、悠希たちが追いついて
「なんで先に行ったんだよ」
「え、早く行って早く帰って寝たいから。で、なんで真柄ついて来たの?」
「おん?あーなんか…話すことないし暇だったから」
「…なんか人少なくね?つーかいなくね?」
真柄が人の少なさに気づく。
歩自身も剣道部の道場に居る鬼教師がいない所から、何かあるのではと疑っていた。
「美術棟にも人のいる気配がしねーし…何より不自然なのは監視カメラに俺たちが映ってるのに誰も俺たちのところに来ない所よな。」
まぁ何かのイベントで出かけてるとかだろ。
別に剣道部の道場に用事はないし、美術だって今日は授業がないからいなくても問題はない。
「まぁ職員室行けばどうにかなるでしょ」
まぁそれはそうだが、悠希よ…他に選択肢なんてないだろ…
しかし、校舎に入った瞬間、会話こそしなかったが、俺たちは明確に今とるべき行動を理解した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます