夢の中の再会
視界が真っ暗になってどれくらい経っただろう。
何で、あんな急に倒れちゃったんだろう。
まだどこにも辿り着いていないのに、どうしよう。
あの子たちは追手に捕まってないだろうか。
だんだんはっきりする意識の中でそんなことを思いながら、目を開けると。
先程の田園とは全く違う、ひたすら真っ白な景色が広がっていた。
「え?」
そして、シリンは誰かに抱き締められていた。
「やっと会えたわ」
しかもとても強い力でしっかりとホールドされているから、全然振りほどけない。
それに、
「ああ…もう二度と会えないかと思ったわ」
自分とよく似た、少しだけ高い声は震えていて、
なんだか、振り解くのが悪い気がした。
「もう一度顔をよく見せてちょうだい」
少しして、抱きしめるのには満足したのか
声の主は、肩に手を当てて顔を覗き込んできた。
「へ??」
その少女の顔を見て、シリルは思わず声を上げた。
なにしろ、肩を掴んで顔を覗き込む少女は、井戸の水を汲む時によく見た、自分の顔と瓜二つだったから。
「あなたは誰?」
シリンは思わず問いかけたが、少女は答えず、その目にはどんどん涙がたまっていった。
「待っていてよかったわ、本当に、もう会えないかと思ったのに。」
そうして再び抱きしめられて、すぐに、肩が暖かく濡れていくのを感じた。
「うぅ、、、、うわぁぁぁぁあん」
「ええ!大丈夫?」
その後少女はずいぶん、長い間泣き続けた。
自分と似た、でも知らない女の子をどう宥めたら良いのか分からず、シリンはただひたすらに背中を撫でるしかなかった。
「そもそも、ここはどこなんだろう」
あたりは全て白く何もないように見えたが、じっと見ているとそうではなかった。周囲はゆらゆらと何か心地の良いものが漂う水の中にいるような不思議な感覚になった。
空間の心地よさにしばらく身を任せていると、しばらくして、ようやく泣き声が小さくなり、しゃっくりの声が聞こえるようになった。
「大丈夫?」
「ちょっと泣きすぎたわ」
それは知っている。
「あなたに会えたらたくさん話したいことがあったのだけれど」
シリンによく似た少女は首を横に振った。
「まだまだあなたには全部は話せないみたい」
「ええ、、」
「それに、あなたは多分落ち着いたと思うわ」
落ち着いてないのはあなただったじゃないか、シリンはそう思ったが、何か言おうとする前に、何故か急に眠くなってきた気がした。
「今日は時間がないから、あした、あなたがこちらに来る時はもう少しお話ししましょう。」
「…明日も来れるのね」
なんだかこの空間にいると、不思議なことを不思議だと思えない、変な気持ちになってきてしまう。
混乱した頭の中で、確実に眠気が大きくなるのを感じながら、シリンは、目の前の少女を見つめ続ける。
目が合うと、彼女はシリンを見つめて微笑んだ。
ーー私の愛しい子、いきなり無理をしてはだめよ
意識を再度手放す直前、そう聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます