変人じゃ済まされない彼女達は今日も一生懸命です!

空乃ウタ

第1話 プロローグのような独白のような

 スプリットガールズ——我が私立紅葉こうよう高校に通う女子の一部でそう呼ばれている者たちがいる。


 彼女たちはこんな異名がついているからって特殊能力とか超能力とか、そういったものを持っているわけではない。


 ただとにかく変人。


 ただ癖のある女の子たちなのだ。


 そんな彼女たちを誰がそう呼び出したのかは分からないが、ボウリングのスプリットみたいに一筋縄ではいかないことを形容してスプリットガールズと名付けられている。


 ああ。ちなみにだけど俺は普通の男子高校生だ。


 勉強も運動も平均くらい。なんならものによってはそれ以下かもしれない。


 別段苦手なものがないってことはある意味幸せかもしれないけど、これといった特技のない俺にとってはむしろポンコツの方が可愛がられるんじゃないかって思う。


 そんな俺が変人が集まるって言われている紅葉高校に何故通っているかと言うと、これまた普通の理由。


 家に一番近かったからだ。


 高校受験の際、自分の学力で届きそうな学校で一番近いとこを選んだ。ただそれだけ。


 いくら変人が多いからといって高校自体の評判は悪くないし、むしろ偏差値は高い方で地元住民からも愛されている。


 実際、入学してからこれまで普通による普通のための普通の高校生活をそれなりに楽しんでいた。


 しかし、俺は今この高校に入ったことを心から後悔している。


 何でかって?


 そりゃあ、こんな過去を振り返るような独白を脳内で繰り広げている時点で俺が今普通の状況じゃないことは分かるだろう。


 だって普通に生きてて、こんなことわざわざ考えないだろ?


「光太君? なにモタモタしてるの? 早くしなさいよ」


 そう急かすような声をかけるのは、クラスメイトでうちの同好会リーダーの楠木杏くすのきあんだ。


 言わなくても分かるかもしれないが、彼女もスプリットガールズである。


「あ、あの〜……さすがにこれはちょっと無理かな〜……なんて」

「何言ってるの? あなた言ったじゃない。『楠木さんのために何でもします』って」

「それは言葉の綾的なやつで……」

「いいからさっさと——飛び降りなさい!」


 ドゴォっと中々キツめのドロップキックが俺の背中へと直撃し、そして——俺の体は宙に浮きそのままへと一直線に落下した。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ああ。やっぱりこんな高校入るんじゃなかった。


 地面へとあと数メートルといった所で俺の意識は完全にシャットダウンした。




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