メモ書き
蒼山詩乃
テーマ
一年程前に「Burial」という作品を投稿する前に何人かに作品を読んでもらい、色々な評価をもらった。変な表現などが多かったので、指摘された部分は丁寧に修正させてもらったが、ある人にこの作品のテーマは何ですか、と言われたことがある。そう言われてみて特にテーマを設定して書いたことはないし、そんな質問をされて返答することはできなかった。
この作品はそもそも最初に考えたことは二人の女の子、レズビアン、洋館、一方はすでに死んでいる、といったことで、ぼんやりとしかイメージしていなかった。一枚の写真のようなイメージだけが、この作品の根底だった。その時は妙にそのシーンを書きたくて書いただけなのだ。実際に書いてみると、ほかのシーンが連想的に、連結的に思い浮かび、またギミックを濃縮して書いたので、個人的にはよく書けたし、おおむねの評価はよかった。
なので、別にテーマを重々しくつける必要は別にないのではないかな、と思う。ただ注意したいことはテーマはいらないわけではなく、自分の意識上に無理やり浮上させる必要はない、ということである。当たり前のことだが、会話のシーンを思い浮かべればすぐわかるだろう。一言一言別の話題に行ってしまえばそれは独り言であって、会話ではない。現実世界であろうが、虚構世界であろうが、見えようが見えまいが、一本の筋がちゃんと骨格として存在することが大前提だ。そもそも他人がいてこその世界であるわけなのだから、分かりやすく理解させることが大事だ。そう考えれば作品も他人がいてこそ存在する。作品は一種のコミュニケーションである。
蛇足でしかもうろ覚えで申し訳ないが、乙一の作品「ZOO」の文庫本の一巻目の巻末に、作者と漫画家の対談が載っているのだが、そこでその漫画家の作品の一つでその作品を書くきっかけがラストシーンの光景を思い浮かんだから、とか書いていたはずである。書くきっかけは別にテーマありきではないことだけは確かである。
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