アサシンズブレード 殺し屋の聖剣

結木 夕日

転生前

第1話 殺し屋としての素質

俺の名は半崎亮はんざき りょう。殺し屋だ。10年間殺し屋をやっている。

クライアントから殺人の依頼が来て、その依頼をこなし、稼いでいる。

日夜、警察に捕まらないよう隠れ家に住みながら依頼もとい任務を果たしている。

金は前払いで、安ければ10万~50万、高ければ1000万もする。

訳ありで金を払うことができないクライアントも容赦なく殺す。

クライアントとターゲット合わせ、何万人もの人を殺している。

「許してくれー!」と命乞いする者や、殺されると思い俺から逃げ続ける者まで様々だ。

人間って、殺される前いい顔するんだよな。

その顔や体を拳銃やナイフで潰す。

殺し屋人生、謳歌してるぜ。

「さて、今日も任務完了だ」

任務を終わらせた俺は、隠れ家に帰りクライアントから依頼された手紙が来ていないか確認する。

いつもは隠れ家の前にあるポストに投函されている依頼の手紙が多いのだが、今日は何故か一通だけだった。

「今日はやけに少ねぇな」

そう思いながらポストから手紙を出し、その手紙を開ける。

手紙にはこう書かれていた。

「貴方に頼みがあります。私の父を殺して欲しいのです。私の父はブラック企業の社長で、悪巧みをして金を稼いでいます。そんな父を私は許しません。実行日は明日23時、私は父を辻堂工場群の波止場に連れていきます。そこで父を殺して下さい。どうかお願い致します」

「よくある殺人の依頼だな」

殺人の依頼には、様々なパターンがある。

例えば、身内や親戚、不倫相手を殺して下さいといった依頼、社員が社長を殺して下さいといった依頼、挙句の果てにふざけ半分で依頼してくるものなどが来る。

そういった依頼に対し、「殺さない」とターゲットを一旦安堵させ、その隙を狙い殺したり、クライアントに好きな殺し方を聞き、その要望通りターゲットを殺したりする。

ふざけ半分で依頼をしてくるものは、金が払えないクライアントと手紙に書いているターゲット諸共殺す。

今日来たのは、依頼の中で一番多い身内を殺して下さいといった依頼だ。

俺は手紙を閉じ、同封してあったクライアントとターゲットとなる父の顔写真を見た。

そして、100万もの大金がポストに入っていた。

「なるほどな。了解。絶対成功してやる」

それらをポストから出し、隠れ家に入ってすぐに熟睡した。

目覚めた俺は、早速情報収集をしようとパソコンでターゲットの顔写真と照らし合わせながら、ブラック企業の社長が働いている会社を特定した。

どうやらこの会社は、正真正銘ブラック企業そのものだった。

社長は、息子含め他の社員全員にパワハラをしていて、社員には過度な減給や肉体労働、社長はギャンブルや麻薬に手を染めていた。

「これは、殺しがいのあるターゲットだな」

気合い入るな。

そう思いながら会社の地図を印刷し、その地図を頼りに会社に行く。

いわゆる偵察ってことだ。

「お、ここか」

会社に着いた俺は、社長が出てくるまで身を潜める。

すると、社長と共にクライアントが出てきた。

どうやらクライアントが社長を外に連れ出したようだ。

何らかの理由がありそうだが、細かいことは気にしない。

「もうすぐあのターゲットの顔が潰れることになるとは、楽しみだ」

クズ人間を殺すとなると、殺し屋としてはゾクゾクするな。

と、高揚感が高まりつつ隠れ家へと帰る。

実行時間になるまで、一丁拳銃やナイフ等の武器を装備し、時を待つ。

そして、念の為100万もの大金をポケットに突っ込む。

「よしっ行くか」

実行時間が近くなった俺は、すぐさま目的の場所へ急ぐ。

「ここが辻堂工場群か」

地図を見ながら目的の場所に辿り着いた俺は、波止場を探す。

波止場に辿り着いた俺は、拳銃を持ち構える。

23時 実行時間。

数分後、クライアントが来た。

「遅くなってすいません。父を連れ出すのに手間取ってしまって」

クライアントが俺の方へと歩き出しながら言う。

「そうか。本当に殺していいんだな?」

俺はクライアントに向かって再度聞く。

「はい、是非。あんな父一発で殺して下さい」

クライアントは、ニヤッと笑みを浮かべながら返答する。

「了解。で、その目的のターゲットは?」

俺が言った瞬間、クライアントが更にニヤッと笑う。

「父は来ませんよ」

ドンッ!

突然、銃声が鳴り響く。

それと共に、俺が持っていた拳銃を遠くに離してしまった。

「な、なに!?」

実は、俺が拳銃を持つ姿勢を崩しかけた瞬間を見計らって、クライアントが持つ拳銃を俺の拳銃目掛けて撃ったのだ。

そのせいで俺の拳銃が遠くに離れてしまったのだ。

「チッ野郎!」

俺が拳銃を取ろうと走り出した時、またもや銃声が鳴り響いた。

「取らせませんよ」

「お前一体何がしたい!」

「私はただ貴方をここに誘い込んだだけですよ」

「どういう事だ?」

「ここには父は来ません。何故って私が殺したからです」

「何訳分からん事言ってんだ!」

「私もです」

クライアントが同業者?

こいつは何を言って─

「同業者の私が殺したのです。殺す前に父を敢えて貴方に見つけられやすくする為、外に連れ出しました。殺し屋だから偵察はするものですので。そして貴方が隠れ家へと帰ったその時、父を社長室へ連れて行き、そこで父の頭目掛けて拳銃を撃ったのです。即死でした」

「じゃあ、何故俺をここに誘導した?」

「そうですね。強いて言うなら貴方を試してみたかったのです。先輩の殺し屋が"半崎亮という最強の殺し屋が居る"という情報を聞きました。私より最強の殺し屋が居るとの事で、私はムカつきました。そして湧いてきたのです。"半崎亮を殺したい"という殺人欲求が。だから私は嘘の依頼をして、貴方をここに誘導したという事です」

「何だよそれ。全部お前の演技だって言うのかよ!」

「貴方を騙す為ならどんな手段も厭いません」

「とんだイカレ野郎だな!」

「良いですよそれで。私は貴方を殺す為にここに来たのですから」

チッ、まさかクライアントが同業者だとは……。

しかも、こんなに狂ってるなんてな。

こうなったら……!

クライアントの隙を狙い、落ちていた拳銃を拾い、クライアント目掛けて拳銃を何発か撃つ。

ドンドンッ!

「予想通りの行動してくれるから助かります」

クライアントの体目掛けて撃ったんだが、まさか無傷だと……!

「防弾チョッキを着た甲斐がありました」

こいつ……!

多くの殺し屋は、防弾チョッキを着用している事がある。

万が一の為だからな。

「流石殺し屋。準備がいいな」

「お褒めに預かり光栄です」

それでもなお、俺は拳銃を撃ち続ける。

「そんなに何の躊躇もなく撃ったらいつか弾切れになりますよ」

「大丈夫だ。俺が使う拳銃は多めに銃弾を込めてるからな」

「そうですか。では、そろそろ」

ドンドンッ!

次にクライアントが俺目掛けて拳銃を何発か撃つ。

「殺し屋たるもの事前の準備は必須だぜ」

「貴方も防弾チョッキを……!フハハハ!面白い!面白いですよ~~~!!!」

クライアントが笑いながら撃ち続ける。

防弾チョッキを着用した殺し屋同士の銃撃戦。

ドンドンドンドンドンッ!!!!

熾烈な戦いが繰り広げられている。

どちらかの体力が無くなるか、それともどちらかの拳銃が弾切れになるかの2択で決められる。

すると、

「クソ……弾切れだ……」

「アッハッハ!もう弾切れですか!?」

「銃弾多く込めていたが、これで尽きたな」

こいつの銃弾も終わりだろう。

と思ったのだが……。

ドンッ!!

「ここまで粘るとは。貴方もしぶといですね」

なんとクライアントは、二丁拳銃を持っていた。

「さて、私の番はまだ終わらないのです!」

止まらないクライアントの銃撃。

くっ……二丁拳銃だなんて聞いてねぇぞ。

多少防弾チョッキ以外の所に当たって血が出ているが、関係ない。

最終手段は、ナイフだ!

と、一直線にクライアントの方へと走り、クライアントの隙を突きナイフを刺す。

すると、グサッ!

「っ!!」

俺の前にクライアントが俺の体にナイフを刺したのだ。

そして俺も負けじとクライアントの体にナイフを刺す。

お互い相打ちだったが、クライアントは余裕な表情をしていた。

俺は、ちょうど防弾チョッキ以外の所だったので、かなりの致命傷を負う事に。

くっ……!

そこから大量の出血が止まらない。

「残念でしたね。私の方が貴方より上ということが証明されました」

「てめぇ!」

「貴方はこの私の完全無敵な防弾チョッキには敵いません」

なんと、クライアントは自分の体を覆う防弾チョッキを何重にも重ね着をしていた。

こいつ……!

「貴方とは格が違うのですよー!!」

と言い、俺の出血してる所目掛けて、拳銃を何発か撃つ。

「ヴッ!!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……。

何だこの痛みは……。

こんなに痛いのか……。

「アハ、アッハッハッハッハッ!!!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!!

どんどん染みていく血。

「もうそろそろ限界ではないですか?」

「……まだ、殺れる……」

「こんなに弱いのなら、いっその事殺し屋辞めた方が良いと思うのですが」

「……俺は、まだ………」

「心はまだ戦えるけど、体はもう戦えないようですね。ハァ可哀想に。私が楽にしてあげますよ」

「やめろ……!」

「最後に、言い残す事はないですか?」

「くっ……次は、生まれ変わって……お前を……殺す……!!」

「フッ、殺せるといいですね」

不敵な笑みを浮かべながらクライアントが俺の体に銃口を向ける。

「半崎 亮。さよならです。精々あの世でも楽しんで下さいね」

ドンッ!

クライアントの最後の銃弾で、俺は力尽き、やがて倒れた。

意識が朦朧としている。

まだクライアントの笑い声が聞こえる。

やがて、その意識も薄れていった。

今までの任務が、走馬灯のように頭を過る。

10年間色々なことがあったな。

俺は思い出に浸る。

俺より上が居たとはな。

これじゃ殺し屋失格だ。

殺し屋人生、案外楽しかったぜ。

俺の人生はもう、ゲームオーバーだ……。

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