第12話 テスト発表
一学期のテストがあった。
一年生でやることはこのようなことだ。
学科
・一般教養(国語や数学など)
・軍事学(用兵論、防衛学、軍事史など)
・外国語(シン帝国の共通語、神聖教共同体の共通語)
・法学(憲法、軍法、国際法など)
・政治学(国内政治、国際政治、外交など)
・人間学(哲学、心理学など)
・魔法学(魔法理論、魔法工学など)
今はどれも基礎的な内容だが、はっきり言って簡単なものなど無い。
気を抜いたらあっという間に置いていかれるレベルだ。
幸いなことに僕は学科は得意だ。
実技
・基礎能力(半間走、幅跳びなど、基礎体力測定)
・各個戦闘(様々な状況を想定した戦闘、一年生は白兵戦のみ)
・作戦行動(様々な地形での作戦を想定した行動。山岳行動、兵站など)
・医療衛生(応急処置、負傷者の搬送要領など)
・野戦築城(陣地設置、障害物設置など)
・歩哨・斥候(偵察や監視などの要領)
一年生では基礎的な軍事行動を学び、試験では個人行動のみを行う。
士官級のやる仕事以外も行うが、軍事行動の基本的なことだ。
知っていて当然だと思う。
実技は得意魔法によっては有利不利が出ると思う。
僕が使える魔法は、幻獣召喚だけなので自分の体でやるしかない。
「お疲れ! みんな、今日の一学期のテスト発表どうだった?」
サヨは、いつも通り元気いっぱいだった。
声の明るい調子からテストの結果が良かったみたいだ。
「おう! 俺はAクラスで総合一位だったぜ! このままトップを維持して、来年は特等クラス入りしてやるぜ!」
タツマは相変わらず自信満々だ。
僕の幼馴染で親友は、子供の頃から何でも出来て、誰からも好かれる熱い男だ。
「さっすが、タツマ! 『英雄王』を目指す男は違うね!」
「本当ですね。素晴らしいです」
「あれ? ディアナちゃんはどうだったの?」
「えと、わ、私も一応一番でした」
「えー!? すごい! 魔法科特等クラスで一位なんて、将来の『大魔道士』じゃない!」
素直に驚くサヨにディアナは、恥ずかしそうにはにかんで笑っている。
サヨは誰とでもすぐに仲良くなる才能を持っている。
この二人が、まるで昔からの親友のように見えてしまうから凄い。
「みんな、すごいなぁ。僕なんて恥ずかしくて言えないよ」
「何よ、マンジ。あたし達は、子供の頃から友達なんだから恥ずかしがる必要ないじゃない」
「そうだぜ! 俺たちは幼馴染の親友だぜ? 何があってもそいつは変わらねえよ!」
「そ、そうですよ。わ、私も、マンジさんは大事な、と、友達です」
ディアナが赤い顔で僕を励まそうとしているので、二人の幼馴染はニヤッとした。
それを見て、ディアナは更に赤くなって顔をそらした。
相変わらずシャイだな、と思う。
「じゃあ、言うけどバカにしないでよ? 僕は、Cクラス総合二十位でした」
「うん、いいじゃない! 補欠入学の最下位から退学圏脱出じゃない!」
「そうだぜ! 俺がお前をバカにするわけねえだろ! 来年は一緒に二年生になろうぜ!」
「そ、そうですよ。わ、私も応援します!」
今も毎日クロの修行をやっていたので体は重かったが、気のおける友人たちと話ができて気分は晴れやかだった。
やっぱり、一人で悶々としているよりも遥かにいい。
タケチの取り巻きを倒した日から、またみんなで話をするようになった。
始めはこれまでの心配をされていたが、僕がただ秘密特訓をしていて疲れていたと説明をしたら、みんな何も聞かずいつも通り接してくれた。
それだけで嬉しくなった。
僕は子供の頃から勉強だけは出来たので、学科に関してはそれなりに手応えはあった。
例え、クロの修行で体がきつくても、サボらずに授業をしっかりと聞いていたし、眠いのを耐えて寝る前に予習復習をしていたのが功を奏した。
タケチを含む留年生たちにはまだ勝てなかったが、新入生の中では一番だったのでこれには自信がついた。
タケチの取り巻きを倒した日、興奮していた僕にクロは説明してくれた。
僕の中で起こったことは二つ、それは酷使してきた体を休めた結果である、超回復がまず一つ目に起こったことだ。
超回復とは、クロの厳しい修業によって負荷をかけられた肉体を休ませることで、それまで以上に肉体を成長させることをいうそうだ。
それ以外にも、クロは毎日少しずつ僕に合わせて負荷を足していたらしく、僕の体は気づかないうちに限界を何度も突破していたので、反動の超回復が常識を超えていた。
肉体的な急成長それが一つ目だ。
そして、二つ目がさらに重要なことだ。
僕が多くの人たちと出会い、励まされる中で、自らの力で這い上がっていこうと気持ちを切り替え、前向きになって修行に臨んでいること。
修行を一つずつこなしていき、多くを自らの血肉に変えているからだ。
つまり、挫折を乗り越えたことで内面が大きく成長し、自信がついた。
自信がついた。
そうなのだ。
これが修行の成果で得た最も大きなものだったのだ。
しかし、いきなり何でも出来るようになるほど、この世界が甘いわけがないと僕にだって分かる。
それでも、僕には唯一の強みがある。
幻獣使いとしての相棒、幻獣ケット・シーのクロが家族であり、師匠だということだ。
僕はクロの教えに素直に従い、自分の限界を少しずつ超えていくことが僕の進むべき道だ。
どんなに遠い道のりも、一歩一歩先に進む事が大事だ。
簡単にできることなんてたかが知れたものだし、楽に手に入れたものが自分にとって本当に価値のあることなのだろうか?
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