【令嬢リプカと六人の百合王子様。】第二部完結:令嬢リプカと心を見つめる泣き虫の王子様。~箱入り令嬢が踏み出す第一歩、水と不思議の国アリアメル連合での逢瀬物語~
レクチャー・地獄のブートキャンプ編3【クインのレッスン】
レクチャー・地獄のブートキャンプ編3【クインのレッスン】
「分かるまでやれ。分からんなら、二人一緒に地獄に堕ちて、分かるまで『分かる』を探しに行くぞ……ッ!」
クインが担当したのは、戦術指南。
令嬢としての必要はもちろん、アリアメル連合での一連で特に重要となる学問であったが……こちらは、アズナメルトゥの担当する教鞭よりも、だいぶに苦戦することとなった。
なにせ、馴染みのなかった分野の学びである。
今までも基礎部分は学んできた社交の常識と違い、ほとんど一からの学習であったから、大変に苦労するところはあった……。
しかし、地獄のような厳しさは確かであったが、意外にも親身な姿勢で教えを執ってくれたクインの上手もあり、リプカはその心遣いに応えるように、なんとか、それらの重要も学び納めていった。
「指示を飛ばすにあたって、『あれこれそれどれ』は禁止である!
指示は的を絞り、まさに的確に。多くを与え過ぎない!
そしてよくよく考えてから指示を出せ。自分の頭の中でも形がはっきりと纏まらぬうちから口を開くことは絶っっっ対にやめろ。ゆっくりでいい、形が確かに定まってから初めて、指示を出すのだ。そうすれば指示の数も、在るべき
「戦いにおいて重要となる、主だった判断は三つと考える!
すなわち、戦う、戦うべきでないの判断。
戦い方を変えるかどうかの判断。
そして、留まるか、撤退するかの判断!
勝てるかどうか、それまでの戦い方と同じでよいのか、継戦が意味より損失を上回る可能性はないか。
――どれも共通して、敵方と状況を見ての分析判断である。留意せよ!」
「これは、お前は天然でできているが――将は自分の考えを”全て”下に語るのは避けよ。
いらぬ混乱を招く。信頼を失いかねないと思う者もいるだろうが、それは自身の格で黙らせよ。信頼と格が同一と考えているうちは、天辺には立てんぞ。
存在を示すのだ! それを身に付ける授業は、パレミアヴァルカのから聞け……!」
「指揮者が弱腰で威厳もなく、指示もはっきりせず、指揮者と受諾者の間柄に関係も秩序もなく、配置も出鱈目なら、組織体型は乱れる。
弱腰で、威厳もなく。――オラッ、背を伸ばせッッ!」
「先に言ったように、引き際を弁えることも戦いである。
というより――引き際を、戦いながら筋道立てて作り上げること。それこそ戦いにおける
まるでシュリフとやらの如くな。そう、常々それは考えておくべきことなのだ。
後先考えずというのは、それを考えないことである。突っ走るにしても、その意味をきちんと考えた末に実行すべし!!」
「凡百を知り越えんとすれば、それ大成の道なり。
様々という意味と、雑多という意味が含まれる”凡百”。それの本質を真に知り、越えんと努力すれば、行き着く先は大成であるということだ。
……おい、それは周囲を、または下界だと思っている位置を
それを越えんとするのだ!
いいか、一部異能を持ち合せた部分もあるが――今のお前はまさにその”凡百”である。
凡百という定義の本質を理解せよ! そして、それを越えんと努力するのだ!」
脳髄を働かせるというより、ひたすらに、ぎゅっと絞っているような感覚が続いていた。
こんなことで覚えられるのか? と疑問に思えば、クインが優しく腕内に抱き留めてきて――「覚えられるまで、地獄の底まで付き合うからな」と、至近距離から危うい雰囲気で見開いた瞳に見つめられたりして。
だがクインの根気も、本当に大したものだった。
地獄の底まで付き合うという宣言も嘘とは思えない覚悟で、自分本位な怒りや泣きごとの一つも漏らさず、歯を食い縛りながら
きっと、それを真摯と呼ぶのだろう。
やがてリプカも、少しずつ、少しずつ教鞭の本質を理解し始める。
最後はもうアズと二人がかりで、あの手この手の手ほどきを懸命していた。
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