第百十話:レクチャー・地獄のブートキャンプ編1

「地獄のブートキャンプの時間だオラァ!」


 ――そして、リプカ自身がフランシスの実力に歩み寄ることが望める、絶好の機である勉学の時間がやってきた。


 実際の話、リプカの境遇を思えば、同じ目線に立って物事を教えてくれる、その道の達人に指南を乞う機会に恵まれることは、ほとんど奇跡であった。その自覚もあって、リプカの意気込みは大変に満ちて充実していた。


 のだが。


 クインの云う『地獄のブートキャンプ』は、願いの強さが形作る芯の強固、それを支柱に湧き立つ沸々とした気力の充実をもってしても、危うく膝が砕けてしまいそうになるくらいにけわしい、まさに名に恥じないハードモードスケジュールであった。


 教鞭を取るのはアズとクインの二人。


 クララはアリアメルの社交界へ顔を出し、セラの動向を窺う役目を自ら申し出た。実際、その二人がいれば、教鞭の場は十分であるだろう。教え上手と知略の令嬢、指南役としてこれ以上なく、相性の良い組み合わせである。


 クインはともかく、今回はアズナメルトゥも、教える立場の鬼として厳しく教鞭にあたった。


 シィライトミア邸に赴いてからの半日と、その後の三日間。

 間違いなく、リプカの人生の中で最も濃度の濃い、山壁を一つ一つと掴み登るような、苦難の連続する試練の時間が訪れたのだった。


 

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