第十話:第五の王子・1

 ――リプカ。


 ビビと互いの国の常識について話し合っていると、扉をノックする音と共に、母の声が響いてきた。


「なんでしょう、お母様」


 母はビビに対し一礼すると、要件を口にした。


 ――パレミアヴァルカ連合からおいで下さった王子がお待ちです。大広間へいらっしゃい。


「わ、分かりました。すぐに用意致しますわ……」


 その答えを聞くと、何が不満だったのか僅かに、しかし露骨に顔を顰めると、母はリプカを待たずその場を後にした。


 その後ろ姿を見送ったのち、ビビが扉のほうに視線をやったまま話を向けてきた。


「言った通り、私の国は様々な技術に秀でた国だ。当然、製薬技術にも長けている。望むなら、心理調教の薬であの母親をどうにかしてやってもいいぞ」

「どうしようかな……」


 クスリと微笑むと、ビビに断りを入れ、リプカは自室を後にした。



 

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