2 manufacturer
protagonist: architect - sentinel:
自分のPCの外部モニターを見つめる僕の新しい上司。パンツスーツの黒沢さんは社長室のような厳かで巨大な部屋のなか、僕に言った。
黒沢「君がシンジケートと呼んでいたすべての取引先の容疑者全員を逮捕された。数々の証拠も押さえてくれた。これで彼らは繋がりを断たれ、半生を刑務所で過ごすことになるだろう。仮に出てこれても、本来の姿をした労働者だ」
そして僕へと向き、微笑んだ。
黒沢「同時にこの国で暗躍していたスパイすら狩ってみせた。犯罪者を
僕は答える。
主人公「ありがとうございます、黒沢さん。ですが、僕は未冷先生にはなれません」
黒沢「謙遜する必要はない。君はもうこの星の
黒沢さんは自分のPCの外部モニターを見ながら続ける。
黒沢「君はたったひとりでスパイ活動をひとつにし、電脳のジェームズ・ボンドの製造者となったんだ。エージェントを仕掛けさせ、自動検知により、容疑者をリストアップしていく。政治的な存在すら気づかれることなく盗聴し、金の流れすら把握し、同時に新たなコンピュータを買い与えて誘導することすらできている」
そうして彼女は外部モニターをこちらに向けてくる。それは、僕のデータベースをバックエンドとした、諜報活動におけるダッシュボード画面。いくつものマップ、発生している状況の進行状況を知らせるものだった。
黒沢「君のシステムは、地球で最も強力な監視機能をも会得し、不正の検知能力は随一だ。暗号通貨の
僕はためいきをつく。
主人公「ええ、国家公務員になれば、誰だってできたはずです。各国諜報機関であるイギリスの
黒沢「がっかりしたかな?」
主人公「いいえ、国際的な協力関係があるのはいいことです。未冷先生は許さなかったようですが。このネットワークの協力関係の隙間、危険な独裁国家や犯罪者と化した代理人たちの手で暗号通貨のカルテルが形成されていたという事実を……」
黒沢さんは沈黙し、
黒沢「君らや未冷たちの任務は、私が許可した。だが未冷が奴らシンジケートを殺し尽くすことを行うまで、私たちは想定していなかった。彼らが一体どんなふうな繋がりがあったのか、まだ追いきれていなかったからね」
主人公「つまり、先生はその敵の情報を持っていると」
黒沢さんは頷き、
黒沢「同時に、彼女達の行方はわからない。事件を契機に君たちがかつて所属していた銀行に強制捜査をしたが、証拠はなし。未冷たちの消息は絶たれ、銀行口座を含めた国家に承認されたルートでは追いきれていない暗号通貨による資本流通のみが実行されている」
黒沢さんは座り直し、
黒沢「彼らは我々すらも欺けるほどの力の持ち主、なにより君の
僕は訊ねる。
主人公「なにか手がかりは?」
彼女は椅子に深く寄りかかる。
黒沢「ない。なにもな。君こそ金の動きからわからないのか」
主人公「はい。痕跡はこの国にも、あるいは世界にもないようです。彼女は大量の資本を抱えているはずなので、なにかしらの費用を払ってどこかにいると仮定しましたが」
黒沢「他の国の政府に雇われているにしても、その資本を利用していない別世界、か。いまや国際権力とも呼べる我々でもお手上げの案件だな」
やがて彼女は言った。
黒沢「まずは陽子を、
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