ヒロイン登場
翌日、朝の教室で真田は真剣な表情をしながら考え込んでいる。それをみたクラスメイト達が「真田が服をきている、だと⁉」「そんな……隕石でも降ってくるというの……!」と驚愕したりしているが、そんな戯言は真田の耳には届かない。だが、個人的に服を着ているのはどうかと思ったので制服はきちんと脱いだ。
真田の悩みは単純明快。
(昨日のマイクレオパトラはどこにいる! 何年何組だ!)
そう、昨日みかけた真田にストライクズドンな顔も名前も知らない女子生徒である。
一応、学園の人物全員(教師含む)の弱みを握っている海野に尋ねてみたが「いや、それだけの情報で特定は無理だろ」と冷たくあしらわれた。
(彼女がいれば俺の小説のステージはもう一つ上がる!)
ラブコメライトノベルの皮をかぶった官能小説のステージが上がるとどうなるかは不明だが、真田はそう信じていた。
「おはよう、信高くん」
「うん? ああ、おはよう遥香」
全裸で真剣な表情で考え込むというどう考えても通報案件な状態の真田に話しかける女子生徒。名前を村上遥香と言った。
才色兼備でテニス部のエース。男女問わず大人気の学園のヒロイン。学園で唯一語られる彼女の失点は真田の幼馴染という点であった。
バックを机に置きながら遥香は首を傾げる。
「何かあったの?」
「どうしてわかった⁉」
真田の驚愕顔に遥香は少し得意そうな表情になって口を開く。
「私は信高くんの幼馴染だもん。わかるよ」
遥香の言葉にクラスメイトの男子生徒は真田に中指をたて、女子生徒達は砂糖を吐くジェスチャーをしている。
そんなクラスメイト達を無視しつつ、真田は会話を続ける。
「実は俺のヒロインをみつけてな」
「遥香! 倒れるのはまだ速いよ!」
「まだ勝負は決まってない! 倒れる時は前のめりだよ」
「ふふふ……全裸で変態な信高くんに好意を持つのは私だけかと思っていたのに……そっか、逆のパターンもあったんだね」
真田の爆弾発言(遥香視点)に吐血しながら倒れこんだ遥香をクラスメイト(女子)が必死に元気づける。
そしてよろよろと起き上がりながら遥香は口を開く。
「な、何組の娘? ひょっとして同じクラスかな?」
「わからない。だが、彼女に会った瞬間に俺に電流が走ったようだった」
「まだ敗けじゃない! まだ敗けじゃないよ遥香!」
「真田くんはいい奴だけど全裸だから相手からノーサンキューされるよ!」
真田の言葉にレバーにいい拳をもらったようによたつく遥香。そしてタオルを振り回しながら『まだいける!』と叫ぶクラスメイト(女子)。
「夕暮れの放課後に出会った彼女は美しかった……」
「ダメだよ……完全敗北だよ……信高くんの瞳が綴が海野くんのことを語る時の瞳だもん……」
『まだいける! まだ敗けじゃない!』
「……何をやってるんだ?」
そんな茶番をやっているとことに登校してきたのは眼の下にクマを作った海野であった。
真田は海野と軽い挨拶をしてから会話をする。
「徹夜?」
「筆がのってな。んで、なんで村上はそんなにダメージ受けてんの?」
「さぁ」
真田の言葉にクラスメイト達が『こいつマジで言ってんのか』といった視線を真田に向ける。それで海野は気づいたようだ。
「ああ、昨日、真田が見つけたヒロイン候補の娘の話か」
「候補じゃねぇよ! ヒロイン決定だよ!」
「いや、それを否定する前に村上を止めてくれ」
海野の言葉の通りに村上は海野の首を絞めていた。
「海野くんだったら相手が誰だかわかるんじゃない? 教えて」
「いや、知らんがな」
「嘘、絶対に知ってる。教えてくれないと綴に海野くんの名前と実印を押した婚姻届けを渡すよ」
「ナチュラルに最悪だなぁ!」
遥香が海野を脅しているが真田はそれに気づかない。だって眼を瞑って昨日の彼女(名前不明)を思い出している。
(彼女は一体どこの誰なんだ……!)
脳裏に焼き付いた彼女の姿を思い出しつつ真田は眼を開く。
そして驚愕した。
胸の大きさ、グッド。
細いくびれ、パーフェクト。
尻の大きさ、まさしくドンピシャ。
昨日の彼女がそこにいた。
それに気づいた真田の行動は速かった。彼女手を取り、真剣な表情で口を開く。
「俺のヒロインになってくれ」
言われた女子生徒は呆気にとられている。それはそうだろう。
「え⁉ 私⁉」
遥香が少し顔を赤らめながら叫んだ
そう、真田が昨日の夕暮れの校舎で見かけた女子生徒は遥香であったのだ。
真剣な表情を崩そうとしない真田(全裸)、赤い顔で口をパクパクさせる遥香。盛大な惚気に付き合わされたことに気づいた海野、そして茶番をみせつけられたクラスメイト達の視線は冷たい。
顔を真っ赤にしながら遥香は言葉を振り絞る。
「の、信高くんは赤ちゃん本舗派⁉ それとも西松屋派⁉」
『そうじゃねぇだろ!』
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