冥途の土産に教えてやろうと、Sランク級冒険者パーティーに裏切られた挙句に魔神の群れの中に放置された俺が前世の力に目覚めて無双する物語
白石新
第1話 最強の男
武神と賢者の息子として産まれたセオ=ピアース。
武に生き、賢を極めた彼の晩年は悲壮に満ちたものであったという。
磨き上げた究極の武――世界に比類なきその力は人々に称賛され、そして……やがては畏怖される至った。
――彼は強すぎた。
勇者・剣聖・賢者――その誰もが闘わずして彼にひれ伏して負けを認めた。
王も、皇帝も、聖帝すらも彼を恐れて居所から遠ざけようとした。軍隊では勝てないことが分かっていたからだ。
あまりにも強力な力を持った彼は次第に世間から疎まれ、人里を離れて山奥の山荘でメイド達と共に暮らし始めた。
彼のメイド達によると、彼は毎日雲を眺めながら「寂しい……」と漏らしていたそうだ。
世間から疎まれたことではなく、力比べを――試し合いという遊びに付き合ってくれる者すらいなくなったことを彼はたまらなく寂しがっていたそうだ。
――武とは敵を打倒す為に磨くもの。相手がいるからこそ張り合いがあるのだ。
人一倍の才能と、人より何百倍の常軌を逸した修練の結果、彼は最強になった。
けれど、辿り着いた先には、少年時代にただひたすらに純粋無垢に強さに憧れた彼が望んだ景色は無かった。
――その頂からは彼には虚無しか見えなかった。
そうして、セオ=ピアースは享年92歳に末期ガンで病死することになる。
彼を看取ったメイド曰く、彼が最後に笑ったのは……死ぬ数日前に、弱った彼を狙って当代最強の剣聖が立ち合いを望んだ時だと言う。
なお、試合結果は開始0・00002秒。
後頭部に対しての手刀による脳震盪でセオ=ピアースによる圧倒的な一本勝ちだった。
病魔に侵されてなお比類なき最強と知った彼の絶望に満ちた顔を、そのメイドは一生忘れることができなかったという。
「強い奴に会いてえな……」
その言葉と共に彼が死亡して2000年。
生還率0%という、神々の作り出した難攻不落のダンジョンに転生した彼が降り立つことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます