第二話の3 月の闇に導かれ

 左手に火魔法メダル、右手に風魔法メダルを持って魔法合成の練習が始まった。

 左手で炎を噴射しながら右手で風を徐々に送り出す。包んで運ぶ感じで送り出すと炎の勢いが増した。魔力というより酸素供給だからなぁ。なんというかあたりまえというかちょっと物足りない。

 よし、ちょっと変えてみるか。

 炎を包み込むんじゃなくて細く凝縮した空気の棒を火柱の真ん中に高速で射出してみよう。

 「先生、火の回りじゃなくて真ん中に風を送ってみます」

 「魔力で包むのでなく魔力を真ん中に?」

 「いけぇっ!」

 細く固めた空気の棒を火柱の中心に高速で射出すると水平の火柱が太く爆発したような状態になった。まあ酸素を供給しての瞬間燃焼は爆発だから予想されたことではある。五年生の理科だな。

 先生は初めおどろいていたが、メダルなしで爆列火柱を射出してご機嫌だった。

 「君はとんでもないことを思いつくな。同じ魔力消費でとんでもない効果を出してしまうとは」


 よし、こうかはばつぐんだ!


 先生は自分でも風魔法を変化させて効果を確認していた。流石だと思ったのは、細く固めるのと全く逆に、パラボラのように薄く広げて火を弱めて拡散させ、巨大熱風拡散器のようなことをしていた。「これは冬にいいな!」とご満悦であった。


 水魔法と風魔法を組み合わせてよりシャボンスプレーというよりはバブル射出機みたいなことができた。また薄く拡散させると霧状に噴出ができた。霧に色を付ければカブキの孫・ムタの息子を名のれそうだ。


 でもなんだか水魔法、火魔法、風魔法という分類に違和感がある。前世からのイメージだと属性とかで元素が違うような感じだが、ここでの魔法は魔力の使い方というか作用のさせ方みたいな違いで、水、火、風といった分類は何かしっくりこない。

 「先生、違う種類の魔法を組み合わせるといろいろな効果がありましたけど、光とか闇も組み合わせられるんですか?」

 先生は難しい顔になった。

 「実は光と闇は水、火、風とは相性が悪い。お互いにあまり効果がでないのだ」

 「光と闇だとどうなんでしょう」

 「光と闇はその言葉通り逆の性質があって、同時に使うと魔力を使う割に打ち消しあってしまう」

 「明るいのと暗いのとそういうのですか」

 「わかりやすい表れがそれしかないからなぁ。直接のものがあまりない。たとえば太陽は光魔力を注いでいると言ったが、月も闇魔力を放っているのだ」

 「月が!? それは何でわかるのですか?」

 「それは海だ。闇魔力が海に作用して活発になり海面が上がるのだよ」


 潮の満ち引きか!

 それは重力だよ!

 重力も魔力で片づけるのか! ……いやまてよ、ここでは光エネルギーも重力エネルギーも魔力というエネルギーの表れなのかもしれない。魔力のことわりが法則として、力として表れているのかもしれない。磁力も重力も電力も……そうか、電気エネルギーが魔力に差し替わってると考えると近いのかもしれないな。魔法メダルを電池みたいだと思ったが、それは正解かもしれない。

 そんなことを考えていると

 「今日はいろいろと組み合わせを工夫したな。予想外の組み合わせをひねり出したのは驚いた。ごほうびに私の必殺技を特別に見せてやろう」 「必殺技?」

 「偶然編み出した秘技なのだが、それもあって私しか使えない。光魔法を他の属性で強化する秘技だ」


 先生の前に伸ばされた右手の手のひらの前に光玉ができたかと思えばそこに雷が集まって来たように見えると、電撃のような光が打ち出された。

 シュープリームサンダーかよ!

 まさに電気的な光に変換された魔力を集めて溜めて放出したかのようだ。先生はドヤ顔であったがすごく魔力を使ったようでちょっと疲れが見えた。

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