落日の空
昨日見た夢を、私はまだ覚えている。
夕暮れ時に公園でたたずむ小学生ほどの男の子が一人、ブランコで揺られていた。
その子は何をするでもなくぼおーと、太陽が境界線に呑み込まれる寸前の光景を眺めていた。
たったそれだけの夢であるけれど、私の頭にはずっとこびりついてた。
そもそも普段はモノクロであるはずの夢の光景が、それにはカラフルであったのだから、余計にだ。
何かしらの意味があるのではないか、と考えてしまう。考えてもわからないはずなのに。
そして今、その夕暮れ空を自室の窓から眺めていた。
あの夢と同じように、彼と同じように。
それから自分でも訳もわからず、涙を流すのだ。
胸を鎖できつく締め付けられて。
茜色の光は小さいころの小さな記憶を照らしていった。
あの頃はまだ、何も知らず何も考えることなく歌を歌って、夜が降りたころになると眠ることを怖がっていた。ただそれよりも昼と夜の境目の時間が私には不安定に感じられ、真っ暗な闇よりも恐れていた。
今ではもう身を震わせることはもうないのだけれど、それでもあの頃は何かあったはずだ。
大事なものがあったはずなんだ。
でももう手に届くこともないことを知っている。それの中身は全く分からないけれど。
夢の中の彼の姿ももう輪郭を捉えることが出来なくなってくる。それが誰なのかも知ることなく。
そして私はその夢を忘れて生きていくのだろう。
だから今は夕日を見よう。今の自分が消えてしまう前に。
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