短編集

蒼山詩乃

夕焼けに手を

 彼女が机の上に腕を立て、あごを手のひらに乗せながら夜の準備を続ける太陽が沈む姿を眺める姿は、綺麗だな、と思わされてしまう。

 僕も空を見て夕暮れの空は夜のときの星の高さとは違い、手を伸ばそうとすると簡単に届くかも知れない、とぼそっと呟くと彼女は表情を緩めた。

 きっと何かをつかみそうでつかめないで居るからかもね、と呟いて空を見上げた彼女。

 そう言われるとそうかもしれない。だって僕の好きな人は隣にいる。

 幼馴染みということで顔を近づけられても慣れてしまって顔には出ないけど鼓動は早い。

 後一歩なのに、と思うのだけれど今の僕には彼女を支える勇気が無い。

 いつか、あの夕暮れの空をつかめるといいな、と僕は心から願った。

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