見上げれば青空
まみぃ
第1話 幸せな形
「早く起きなさい」
「早く食べなさい」
「早く準備しなさい」
毎朝発する朝の三大定番セリフ
「はいはい でましたママのサイ君連発」
そう茶化すのは今年の春、中学生に進学した長女の真実。
「なにぃ 聞きたくなかったら言わせないようにすればいいでしょ」
まったく娘も大きくなると親を馬鹿にするようになる。ホント可愛くない。
でも、この何気ない会話が嬉しい。幸せを実感できる瞬間。
少し前まではもう二度とこんな時間が来ないのではないかと思っていた。
何気ない毎日が普通にやって来ると
きっと誰もが思っている
だから「幸せ」というものがどこにあるのかを探すのだ。「幸せ」になりたい。
「幸せ」って何? とか
「幸せ」な人が羨ましいとか
辛い事や、悲しい事が身に降りかかった時 初めて、本当はすぐ近くにあるのだと
何気ない当たり前のこんな時間こそが 憎まれ口をたたかれるこの瞬間が幸せなんだと気付く。
少し急ぎながらご飯を頬張る真美をながめながらこんな事を思っていると
「お母さん また姉ちゃん見ながら笑ってる。キモッ」
三女の亜子に指摘され我に帰ると 時間は既にリミット級ではないか
「笑ってない 怒ってんの! 早くしないと
皆んな遅刻するよ!」
「もう準備できてますよー 行ってきま〜す」
しっかりものの次女淑子が出かける。
「待って 私も行く」そう言って亜子も後を追う。
1番下の四女優希は保育園の年中さん。末っ子の甘えん坊はどこも一緒でしょう。
「お姉ちゃん 準備できたら行くよ」
「もう出来てるよ」と優希を抱き上げる。
私は保育園セットをもち車に乗り込む。
毎朝ここまでが戦争のようだ。
優希を保育園に預け、中学の校門に車をつける。
「いい 走らないこと 怪我しない事 具合悪くなったら保健の先生に」
「分かってる 毎日毎日耳にタコ ありがとう 行ってきます。大丈夫だから心配しないで」
そう言って玄関に向かい歩いていく。
毎日同じ事言わなくても分かってるのは知ってる
ー けど ー それを言うことで私が安心するんです。
怪我をすると血が止まらなくなるから。
血小板現象性紫斑病 初めてこの病名を聞いた時 どんな病気なのか、どうなるのか
まったく分からなかった。
ただ 忙しさにかまけて早く気付いてあげれなかった自分を責め、どうして娘なのかと運命を恨み、もしかしたら娘がいなくなるのではないかという恐怖の連日だった。
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